卓球と火花


「ねえ、さすがにくっつき過ぎて、カップ麺伸びちゃったよー」


 そう言いながら伸びているのは花凛自身だ。


「花凛の頭の中には……カップ麺があるんだな……」


 それで、みかんの様子は……。


「……なおったですわ」


 復活して、書道の教科書の冒頭に乗っている正しい姿勢の見本のように座っていた。


「どうした……? 今度はぴんと座って……」


「凛太。今日私は、放課後に、み、未来と会いましたわ」


 おお……その話か。


「それなら僕も会った……」


「ですわよね?」


 みかんの向かいに座った僕の方へとみかんが乗り出してきた。一瞬だけしか見本の姿勢維持してなかったな。


「第一回、彼氏を問い詰める彼女編スタート!」


 今花凛は何をスタートさせたんだ? あとカメラ持ってきてかしゃりん始めたんだけど……。なんの記念のつもりなのか。


「……どうでしたか?」  


「どうとは……あんまり変わってなかったけど」


「そうですわね。あんまり変わってなくて相変わらず、べたべたくっついてましたわね」


「みかんにそんなにくっついていたのか……? 久々に会えて嬉しかったんだろうな……」


「私に? ちが、違わなくてそうですわ。私にですわ。そうですので、あくまで予想ですけど、凛太にももしかしたらくっついてきたのかなと思いましたわ」


「あ、そういうこと……確かにそんな感じだったか……」


「ですわよね!!」


 みかんの上半身は、しっぽ以外全部お皿に乗っているお子様ランチのエビフライのように全部机に乗っていた。


「あ……そういえば、卓球の試合の応援……来て欲しいって言ってたな……」


「行ってくればいいですわ。そして帰りに二人でどこか寄ってお楽しみでもしてくればいいですわ」


「みかんは行かないのか……?」 


「え? 私……? ……もちろん行きますわ!」


 今行かない流れな感じの発言だったけど行くんだな。


「花凛も行くか……?」


「うん。行くよお兄ちゃん! 私二人のばちばち火花弱める役やるね」


 火花……? 確かに卓球はコートは狭いけど白熱した試合を繰り広げるから火花でも散りそうな勢いかもしれないが……。それを弱めるということは……? 


「確かに……未来はリラックスした方が……実力を発揮できるタイプかもしれないな……」


「⁈ それはつまり未来を凛太がリラックスさせてそのまま一気に……! それはダメですわ!」


「??? リラックスして……そのまま一気に勝てるんなら……いいと思うが……」


「ダメですわ! 勝つのは私ですわ!」


「え? みかんも卓球の試合……出るのか?」


「出ませんわ!」


 出ないよな……。そのはずなのに話がうまく噛み合っていない気がして、僕はお子様ランチをうまく盛りつけられない時のようなもどかしさを覚えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る