朝みかん
やがて小学校と渚ヶ丘学園の分かれ道につき、花凛は万実音ちゃんから「たうったう」の正しい発音について教えてもらいながら歩いて行った。
万実音ちゃんと花凛が並んで歩いているのを見ると、花凛も高学年になったんだなと感じた。花凛は少しお姉ちゃんっぽくも見えた。
今日僕が学校に早く行かなければならないのは、文化祭に向け、各部活や団体の代表者の集まりがあるからだ。僕はもちろん料理部の部長として行く。
できれば朝ではなく昼休みにやって欲しかったが……文化祭実行委員会の権力と怖さはすごいので仕方ない。
学校に着いて、靴を上履きにかえ、そのまま集合場所である第二講義室に行く。
扉を開けるとまばらだったが何人か人がいた。
代表者は、引退が遅い部活の部長などを除けば大体高二だ。
だからこの人たちも大体高二だと思うけど、交友関係が狭いせいで特に知っている人もいなかったので僕は周りに誰もいないところに席をとった。
「凛太〜! 忘れてなくて偉いですわ!」
しかし一人の時間は三分もなく、みかんが、講義室の長椅子上でお尻をスライドさせ、僕の隣まで来て座ってきた。
みかんはダンス部の部長なのだ。朝練からそのままここにきたのだろう。スポーツウェアを着ていて、首には少し汗が輝いていた。それにしても興味深い。女の子が運動したばっかりで汗かいていても暑苦しさは皆無でむしろいっそういい感じなのだ。説明するのは難しいけど。
そこまで美味しいものでなくても、お子様ランチの盛り付けをすると美味しそうに見えるのと同じく不思議な事象だ。
お子様ランチの例しか挙げられないせいで伝わってない気がするけど仕方ない。
「あ、みかんちゃんおはよー」
「おっはみかん、朝みかん!」
しばらく経つと、みかんのところに二人の女子がやってきて、みかんから見て僕と反対側に座った。
僕とみかんが幼馴染なことを知っている人は意外と多い。
二人とも、変わった幼馴染がいて大変だね〜といった感じが顔に出てたので、ぼくは大人しくしていることにしようと思う。
しばらく大人しくしていると、左隣に一人の男子生徒が座った。僕と時々話す人でかつクラスで一番変人だ。
彼がいるおかげで、僕は自分が変人ではないとポジティブに考えられる、時もある。
名前は羽有優うゆうゆうという優しい天使が目の前にふわふわ現れそうな名前だが、合っている部分はふわふわしかない。
ふわふわしか合っていないとはどういうことか?
この説明は簡単にできる。
僕がお子様ランチマニアなら、羽有はぬいぐるみマニア。ぬいぐるみはふわふわ。ゆえにふわふわのみ一致、ということである。
お子様ランチが好きな男子高校生とぬいぐるみが好きな男子高校生。どちらが珍しいかはわからない。しかしお子様ランチはとりあえず神なのできっとぬいぐるみの方が珍しい、よって羽有の方が変人、だと僕が勝手に思っている。
「お、田植かおはよう」
「おお……羽有おはよう……」
まさか挨拶してくるとは思わなかった。
羽有は、朝は一人でぬいぐるみ作りをしているか可愛い女の子と触れ合ってるかのどっちかなのだ。
極端だなと思う。
しかし、羽有は、ぬいぐるみ部というよくそんなのあるなって感じの部活の部長。そしてぬいぐるみ部にその可愛い女の子二人しか部員がいないということを考慮すれば納得できる。
と、羽有の説明をしていたら羽有はすでにぬいぐるみ作りに没頭していた。
羽有の集中力はすごい。女の子二人の部員のうち海瀬美雨うみせみうという人は明らかに羽有に対して好意を持っているのだが、その海瀬が後ろから抱きついても黙々と針を動かしている。僕だったら指に刺してしまいそうだが。
みかんを見ると二人の女子と話しまくっていた。でもなぜかさりげなく僕にお尻を寄せていて、ちょっとくっついてるんだよな。
羽有の方に寄るとぬいぐるみ作りの邪魔になるから僕はそのまま動かないでいることにしよう。
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