第38話 10年後の世界

 ゲートに入って数秒、あるビルの屋上で裂け目が現れ、そこから俺達が出てくる。


「着いたか……」

「此処が10年後の儂らの世界……」


 運よく高いビルの屋上に出てきたおかげか、辺りを見渡せる。今回はマッピングもあまり苦労せずに済みそうだ。


「さて、先ずは冥。お前さんは俺の任務に加わる前に実家に戻れ、挨拶とか色々済み次第、俺を追え。以上だ」

「では遠慮なくいかせてもらうぞ」


 冥は高い身体能力であちこちの高所に飛び移りながら移動し、姿を消す。残りは俺だけになった。


「さて、部下が実家に帰ってる間、元隊長たる俺は情報集めに動かないとな」


 レクス様の加護が使えない以上、【負の超強化】も使えないも当然だろう。なら俺は情報収集前に自分が隠した物を取りに行くか。


 *


「確か……この辺だったはずだ」


 ある山の中、俺はそこを土足で入り込み、隠した物を探してる。

 10年も月日が経ってもこの山は微塵も変わっていない。なら隠してる物は発見されてない証拠だ。


「……ここだ!」


 足元にある土を掘る。2分掘って出てきたのは錆びだらけの金属箱だった。ホントは青色なんだが、メッキが剥がれちゃったんだな。


チャチャっと鍵を開けて中身を見る。中には手のひらサイズのボトルのような機械が入っていた。


「マジカルシェイカー……俺が作った、無魔法者救済の道具。此奴を作るのにかなりの時間を割いた。戦時中も戦後も、お前に助けられたな。今回も……力を貸してくれ」


シェイカーを手に取り、2回振る。ボトルの中に緑の光が灯り、辺りを照らす。どうやら壊れてもいない事と、故障もしてない。


後は軽く整備すれば現役も当然か。


「……行くか」


空の箱を捨て、俺はその場を去る。この山は俺が子供の頃の時代、よく親と来ていた場所だ。唯一、失われなかった最後の居場所でもある。


「都合のいい任務だ。この世の汚物を排除するのは俺にはうってつけだな」


山を下り、街に行き、路地裏に足を踏み入れる。運よく誰もいない。

悪巧みをするにはもってこいの場所だ。


副任務サイドオプスもいいがメインの任務もやらないとな。まず、日本は後回しだ。最初は中国にいる男、「醋」議員。此奴はかなり用心深い存在らしいな」


リストを確認し、日にちとリストに書かれてるスケジュールを見る。どうやら今年で議長になるらしく。そのお祝いとして大きな別荘で呑気にパーティーを開くそうだ。


経歴を見たが、叩けば叩くほど埃が出る。まるで砂の城だ。

多くの無魔法者を人生のどん底に落として、その金で私腹を肥やしてると来た。典型的な外道だな。


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異界の抹殺屋 ヒラン @daikaru

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