元故郷世界攻略

第36話 次の任務先は故郷だった

「さて、緊急の依頼はなんだ?」


 レクス城まで転移し、城門を開け城内に入る。

 毎回任務を受ける際はいつも彼のオフィスなのだが、なぜか今回は指令室で待っているという事。


 何か拙いものでも感知したんだろうか?危険度を知らされてないが、緊急というだけあって紫か赤なのだろうな。


 長い廊下を歩いて数分、指令室前の扉を叩き、中に入る。


「失礼します」


 上司に敬礼した後、レクス様は「よく来たね」と言って笑う。


「来て早々悪いが、本題に入っていいかね?」


「はい」


「実は君のいた世界なのだが……少々厄介な事が起きたんだ」


 厄介な事?俺のいた世界に何か異物でも流れ込んだのか?


「何というべきか、歴史を壊そうとする異常者が現れたんだよ。しかも五人」


 異常者が五人!?不味いな……歴史を壊す異物が五人もいれば世界のパワーバランスを破壊しかねない。ただでさえ三人でも厄介だというのに。


「そこで、だ。その世界に詳しい君と鮫鬼ちゃんに任務を与える」


 ふむ……ってちょっと待て!何であいつこの職場にいるんだ!?


「待ってください。なぜ彼女を?」


 レクス様は「あー言ってなかったね」と少し申し訳なさそうに言い返す。


「鮫鬼ちゃんとソラちゃんは一週間前に入隊してきたよ。試験はかーなり厳しくしたはずなんだけど、普通に通過してきたんだ。正直驚いたね。特に鮫鬼ちゃんは……君の世界の住人って化け物の集まりか何かかね?」


 待て!ソラもだと!?


「……いったいどういう事かご説明願います」


 レクス様は話始める。ソラはもう自分のいる世界に戻る気は微塵も無く、再び命の危険に面するくらいならこの世界にいた方がマシだという結論に到ったのだった。


 実に馬鹿げてる話だが、ソラからすればこういう判断をせざる得ないんだろう。身内に命を狙われ、しまいには勇者たちの討伐対象にされる。確かにそれなら帰りたくもなくなるわな。


「……馬鹿げている。ソラの事は理解しましたが、なぜ冥が入隊したのですか?村の一時的な保護がなくなった場合、彼女の力無しではどうにもできないのですが」


「辛辣だねぇ陸也君。少しは彼女を信用したまえ、少なくとも君の足を引っ張る事は無いはずだ。それに鬼人族は戦闘能力の高い種族。心配はないよ」


「……」


 心配はない、か。言われてみればそうでもあるのだが、万が一って事もある。その時の対応をどうするかになる。


「気持ちは分からなくもないよ。不安は大いにあるのは理解している。が、今は人手があまりにも足りないのは君も分かってはいるだろう?この時期、藁にも縋りたいほどなんだ」


 は、反論できない……。人手が少ないのはこの国の唯一の悩みだからな。


「そこまで言うのなら……」

「まぁ部下が一人増えたぐらいで君に負担は無いはずだ」


 思いっきり負担でしかないのだが……。


「つまり、今回の任務は二人か」

「ふむ、無知の連中を連れて行った時点で効率が悪い。残念ながらそうなる。分かったなら任務に向かいたまえ、君の世界だ。油断はできないよ?より一層努力し、任務を完了してくれ」


 やれやれ、厄介な仕事を頼まれたもんだ。

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