第33話 味方増援到着……速いな!?

「おい!敵がい――」


「レクスの白き邪し―」


次々と反乱軍が占領した街や村をことごとく奪い返す。

まぁ殺してるわけなのだが……。


死の概念のない世界に死の概念を与えるのって割と重罪なんだからな?戦争だから許されるけど、普段はボコボコにして終わりだ。


ここまで占領して、ようやくデカい都市が目前に見えた。


「尋問した反乱兵の話によると、この都市に反乱軍の根城があるんだったな」


運がいい事に、占領しに行った拠点の防衛隊長達は加護無しの連中だったという事、あんなのが10人もいたら流石の俺も撤退せざる得ない。そこまで相手にできないからなぁ……。


「さぁ……反乱を止めるもうひと仕事と行きますかね」


肩をポキポキと鳴らして進もうとした時だった。

謎のテレパシーが俺を呼び止めた。


『陸也君!聞こえるかい?』


『はい。どうしましたか?』


テレパシーを撃ってきたのはレクス様だった。


『急遽、増援を君の方に送ったよ』


増援?何で今更?特に苦戦はしていないんだが……?


『君、今奴らの根城の都市前にいるでしょ?奴らは僕達と徹底交戦する体制に入ってる。こうなった以上、市街戦は避けられない。君一人では危険すぎる。僕の力でその都市を見たところ、加護持ちの兵士、抹殺屋が5人もいるんだ』


5人も!?まさか無能力者を制圧に回して他は本陣で待ち構える手段に入ったか。っていうか抹殺屋が敵側にいるのか!?


『いや、聖蛇君はいないね。どうやら別人のようだ』


それでもヤバいな!?コレはガチで戦争になるぞ!?

今までの戦いが茶番のように感じるな……。


『増援到着までどれくらい時間が?』


『安心したまえ、君が散々暴れてくれたおかげで転移位置が分かったからね』


おいおい……他国の領地に味方を転移させるとか正気の沙汰じゃない。

普通なら国境前なんじゃないのか?


『後、8分くらいで、着くだろう』


早っ!どんだけ近い地点に転移させる気なんだ?この神様ひとは?


『ああ、それとだ』


『何ですか?』


『我々の戦いに参加したいという者がある村から来てね。彼女らが戦列に加わったよ』


おい、まさか……鮫鬼冥あいつまで戦列に加わったとか言うんじゃないだろうな?あいつはまだそんなに回復してないってのに……っ!


『確か……鮫鬼冥とかという鬼人族の女の子がいたね』


ですよね!?あいつのことだ!絶対加わると思ったよ!!


『……外すことできません?』


『言う事を聞かないんだ。君がなんとかしてくれたまえ。僕もああいう女の子好きじゃないんだ……』


最終的に丸投げかよ!?そりゃないぞ!好き嫌いもあるかってんだ!!

絶対結衣たちと喧嘩してるよな?してなきゃいいけど!


『さて、陸也君。味方が到着する。指揮は君に任せるよ』


『……了解』


畜生。あの神様。覚えてろよ……。

テレパシーを切った後、背後から戦車の駆動音や俺の名を呼ぶ声が遠くからず聞こえた。増援部隊だ。


振り向き、面子を見る。見たところ、アルヴァニスに居た連中ばかりだ。

無論、結衣と火種がいる。見たところ喧嘩はしていないようだ。

ただ……鮫鬼もいる。で、なぜかソラがいる。


俺はその面子を見て頭上に?が浮いた。

何でソラがいるんだ……?居住エリアでゆっくりしてろという約束がまるで違う。

自ら戦いたいと志願したのか?分からん……理由を聞かねば。


「ソラお嬢。何故戦場内にいるのですか?」


「駄目か?私も戦いたいのだ。いつまでも世話になりっぱなしはファウスト家に泥を塗るようなものだからな。この際だ。お前たちの戦いに参加させてくれ」


成程、お家柄の事情ですかい。……ふざけんな。


「お嬢。戦争は遊びじゃありません。確かに貴族共にとっては遊びの類でしかありませんが、これは命のやり取りです。半人前の戦い方では死者が出ます」


この世界じゃ死なないけど、この世界以外の戦争ではそんな志で戦場に立つとすぐ戦死してしまう。


「このご時世、義理堅さで戦列に加えてもらえる時代ではありません。参加しても構いませんが、この世界では死の概念がありません。その腰にぶら下げてある名刀如きでは敵の一般兵すら切り伏せる事はほぼ不可能です」


「そのためにお前の瀉血刀とやらがあるのだろう?何の情報なしで戦列に参加するほど私は阿呆ではない。舐めないでもらえるか?」


「……」


情報はすでに持っていたのか……だが、味方がいるのはありがたいが、ソラはまだこの世界の力の影響を受けていない。下手すると死ぬ可能性が出る。


「……わかった。鮫鬼とソラにスペアの瀉血刀を渡せ。彼女らも戦闘に加える。意義はないな?」


「ないな」

「ねぇな」


部下二人は答えたが……。


「いいんじゃない?」


「お互いにカバーしあうのが仲間ってもんだろ?」


他の味方が承知したみたいだし、問題ないか。


「ではまずは地形を確認しよう。それと、偵察に行ってくれ。並べく見つかるなよ」


やれやれ……本気で戦争になりそうだな。





暫くして偵察から人が帰って来る。

聞いた話だと、どうやらこの街には東西南北と門があるらしく、街中の地形は建物が乱立してるらしい。北の門は恐らく法国の城へ続いてんだろう。


「うーん。となるとこうなるか」


俺は地面に戦力図を書く。


「先ずは各々で相手の逃げ道を潰す必要がある。つまり何も真正面から挑めという訳ではない」


「じゃあ、この分隊で東と西、南を攻めるって作戦か?」


「そうだ。いかにも単純な作戦だが、簡単ではない。少なくとも加護持ちの反乱兵と抹殺屋が防衛にあたってるという事だ」


「ふむ、となると3つに分かれて行動する感じじゃな」


「だが、奴らも馬鹿ではあるまい?いくつか兵器を置いてる可能性がある」


「確かに、偵察の者たちの話によると魔導戦車という多脚兵器があるという事だ」


結衣、鮫鬼、火種、ソラ、それぞれ情報を開示し、作戦を互いに話し合う。

先ずは3つの門を攻め落とす。門を制圧したら、先に内部に侵入して反乱軍の根城に少しだけでもダメージを与える。


全員が合流したら攻城戦開始って事だ。まずは門の制圧が先だな。


「で、問題は人員の配置だ」


そう。ここで間違えれば、どんな作戦であれ、失敗する可能性が滲み出る。


配置はこういう風になった。


南門:陸也

東門:ソラ、結衣

西門:火種、鮫鬼


ざっとこんな感じだ。


「この作戦の成功は俺達双方にかかってる。行くぞ」


「「「「了解(じゃ)」」」」


ホント上手くいくのか?この作戦……。一応他に兵士がついてるけど、不安だ。

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