第31話 法国の異変
大体走ってどれくらい経っただろうか?
まだ数十キロくらいしか走ってないが、そろそろ法国が見えてくるはずだ。
一旦足を止め、能力を解除する。
辺りを見渡そうとした時、緊急テレパスが俺に送られてきた。
「こちら陸也。何かあったのか?」
『陸也君!大変だ!法国で内乱が発生したんだ!』
内乱?あそこは人口が多いものの、不安を抱くやつがいないと聞いたが、革命を起こそうとしてるやつらがいるとはなぁ。矛盾してるじゃん。
「状況は?」
『僕が魔法を飛ばしてみてるけど、ぱっと見領土の2割が持っていかれてる。しかもものすごい速度で進撃してるんだ』
ほう……それはすごいな。
そう言えば、法国は交易国家であるレクス公国とは友好的な関係を築いてるわけなのだが、まぁこの後の指令は分かってるぞ。
『陸也君、緊急指令だ。法国のクーデターを鎮圧してくれ。殺傷しても構わない。援軍はこちらも後で送る。頼んだよ』
普通こう言うのは干渉しない方が得策なのだが……あっちの問題だし。
新たな取引相手を探すのにも手間がかかるし、クーデター鎮圧した方がいいかもしれないな。
「……了解」
そう言ってテレパスを切る。
「はぁ……折角の休暇が台無しだ。何てことしてくれたんだ反抗勢力共」
ため息を吐きながらカバンを下ろす。
中から一本の刀を取り出す。鞘は赤黒く染まっており、持ち手の下には隠し刃が収納されている。
この刀は「
刃は20㎝しかないが、自分の血を少しだけ吸わせることでその血が刃となって長く、切れ味がいい太刀と化する武器だ。不死殺しの武器は大抵は此奴の性能がベースとなっている。
銃や弾丸にするのは苦労したよ。銃の部品や弾丸の鉄に自分の血を混ぜるって正気の沙汰じゃないからな。
*
暫くして俺は法国の国境に着いた。
あちこちからは煙が立っており、火事が目立っている。この距離だから聞こえづらいが断末魔が微妙ながら聞こえる。
「先ずは堂々と侵入してみますかね」
早速国境を越える。どうやら国境を警備してるやつらはクーデター阻止でいないらしい。他国から見ればこれはどうぞ占領してくださいと言っているようなものだ。
進めば進むほど、占領の仕方が荒いのが見えてる。
建物は壊されてるし、捕虜は雑に錆びかけている牢にぶち込んでるしで、やる気あるのかないのか……。
「酷いには酷いが、インフラをぶっ壊すのは良くないな。再利用が出来なくなるってのに」
愚痴を吐きながらまず最初に見つけた小さい町に入る。
「うわっ……やりすぎだろ」
町は破壊尽くされていた。建物は完全崩壊し、食べ物であったものは最早食えないレベルまで焼き焦げたり、ぐっちゃぐちゃになっていた。
「こいつは酷いな。市民の食生活に手を出すのは革命としてどうかと思うんだが……」
っていうか建物を完全にぶっ壊すとか、残す気ないだろこの革命。
まぁ駐屯してる革命軍がいるならボコボコにするのもありか。
こりゃあ、復興作業も時間の問題だな。
キョロキョロと見渡す、少し高い丘の上に一軒だけ残っている民家を見つけた。町長の家だろうか?
「民家は発見したが、その周りは……」
家の周りを見る。軍事用の魔動車両、対歩兵車、戦車まではないが、装甲車なら発見した。恐らくこの町を占領したのは装甲車部隊の1部隊だろう。死の概念がないこの世界では住人に銃を向けて発砲しても死なない。頭を撃とうが胸を撃とうがだ。
逆に刃物で首を切り落としても死なないのだ。爆弾で身体を完全に吹き飛ばしても無理だし、むしろ身体が完全再生する。
これじゃあ住人がゾンビみたいなもんだよ。人の肉とか食わんけど。
それで出来る手段は俺達の国を除けば一つだけ、男は捕らえて重労働、女性は犯され、子供は玩具にされる。
まるで異世界転生系の小説でありがちな行為だ。まぁ俺の国ではそんなことはさせんがな。
「さて、ここを占領した部隊の隊長さんの面を拝ませてもらうぞ」
民家の玄関扉に近づき、蹴破る。
その時、奥からは慌ただしく「何だ!?」「誰か入って来たか!?」と声が聞こえた。御取込み中じゃなければいいが……。
その時だった。
1つの銃声が響き、1つの衝撃が俺の腹を貫いた。
「……」
もう一回言うが、この世界だ。死の概念はないが、この概念なら有る。
「いってぇな」
痛みの概念だ。死なないが、撃たれたらすごい痛い。
「この威力、単発のライフルか?」
銃声がしたところから2~3人の軍服を着た人物が銃を構えて何か言ってる。
「おい、誰だあの男?」「知らん、だがドアを蹴破ってきたんだ。相当な覚悟があるんだな」
何やら俺について言ってるようだが、此奴らは俺の情報を知らないのだろうか?あれほど異世界で仕事して来てんのに……。
「知らないなら、知らないでいい。意味はないんだからな」
瀉血刀を鞘から抜く。
瞬時に俺の血を刀に飲ませ、血の刃が構成され、血の長刀へと変わった。
「あえて名乗ってやる。俺は白皇陸也。別の国の連中は俺を「レクスの邪神」と呼ばれてるがな」
その言葉に3人は銃を構えるのを躊躇した。
「な!?レクス公国の抹殺屋だと!?」
「なんでこの国に!?」
「う、狼狽えるな!偽物という可能性もあるだろ!」
……偽物なんていたんだ。見つけ次第捕らえないとな。
「そうか、死にたくなければ隊長もろとも降伏しな。死の概念を与えることができる方法を持ってるのはこっちなんだからな」
交渉しようとした矢先、殺気が俺の横を通りすぎる。
「ほう、速いな」
俺の首元にはナイフの刃が突きつけられた。
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