第27話 仕方ねぇな
「なんでこんな小さい村に戦車が?」
この村に軍人でもいたんだろうか?戦車は見たことある塗装が施されていた。
赤と白が交互に彩られたもので、砲塔に漆黒の拳銃のマークが描かれている。
「もしかしてだが……」
俺は自分が追放世界の住人になる前の記憶を思い出す。
戦時中、自分の部下であった一人、「
彼女は亜人で「鬼人」族だった。見た目はとても幼い少女のような奴でも階級は少尉。戦車部隊の小隊長ぐらいは務めれる人物だった。
だが……ある上陸作戦の最中、輸送艦が轟沈し、彼女は海の藻屑となった。愛車の戦車「鬼雷号」と共に……。
「彼女は死んだんじゃない。俺より先に追放世界に来て生き延びていたのか」
確信した。彼女の戦車があるとなると彼女は生きてる。
意外な収穫だ。まさか死んだはずの戦友がこの世界で生きてたんだ。嬉しいに決まってる。
「気になる面と言えば、何で重戦車に改造したんだ?あいつは中戦車の乗り手だったが……重戦車を用意しなければならない状況でもあったのか?」
怪しいので戦車の装甲に触れる。
「ん?これプラスチックで出来た張りぼて装甲だぞ?となると重戦車に改造したふりだったのか……?」
べりべりと偽物の装甲板を引っぺがす。剥がし終えるとそこには漆黒の装甲に身を包んだ中戦車の姿があった。
「……やはり偽装か。ふむ、キャタピラに破損場所は無し。砲弾の残弾数は6発。結構残ってるな」
奴隷商を倒すにはちょうどいい戦力だ。
「……ぶらり旅初日は人助けとは、俺が生きた億年の月日は面白い事をさせてくれるな」
俺はニヤリと笑う。
戦車を整備し、エンジンを起動させる。懐かしいエンジン音が戦車内に響いた。
「さて、助けに行くか」
戦車を動かすとともに『千里眼』を使い、奴隷商を探しに入った。
*
一方、村から7km離れた場所。
多くの鬼人族が奴隷商の馬車に運ばれ、揺られている。
ある者は怯え、ある者は絶望し、ある者は希望を捨てず助けを待つ。
その中で彼女、「鮫鬼冥」だけ、助けを待ったのだ。
「……耐えるしかないのか」
ジャラジャラと拘束具の鎖が音を立てる。
馬車馬を操る者は隣に座る人物と会話をしており、彼女はその会話の内容が聞けた。
「そんで?こんだけの鬼人族をどこに売るんだ?」
「そりゃあ、この国境を越えた先の国「カラヴァ」法国にだ。あそこは闇がなにとぞ深い。何とも奴隷を使って大聖堂を建てるらしいからな」
そんな会話が聞こえる。
果たしてそんなところに希望はあるんだろうか?そう彼女は考える。
(私は……どうすればいい?)
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