国外ぶらり旅

第26話 解放はされたが

「ふぅー……解放された気分だ!手枷が外れて自由になった気分だ!!」


国外へ出て2時間、俺の気分はかなり上機嫌だ。普段は国内で能力研究や書類の処理で切羽詰まったことが沢山あったから、国外を出た後の解放感がたまらない。


「発明品をぶっ壊すお坊ちゃま神様上司がいないし、忌々しい始末書処理がないこの旅こそが唯一の救いだ」


さーて、どこの国へ行こうかなぁ?ご当地名物でもあるんだろうなぁ。と童心に戻った気ではしゃぎながら道なき道を進む。


ここら辺は道路が無いのか?


そう考えながら行くと木製の看板があった。

追放世界の言葉で書いてあるから分かるが、少しドイツ語に似ているな。


「何々?此処から先、カラド村、ね」


どうやら近くに村があるようだ。丁度いい、祖国以外の観光地を探しに行こう。


看板には矢印看板もあり、分かりやすい。観光客目当ての手段だろうか?






暫く歩いていると、村の所有物らしきものが目に移った。

畑だ。村は割と近くにあるんだなぁ。これならうちの領地に併合してもいいかもしれんが……。


「にしては育ちが悪いな」


畑に出ている植物がやけに元気がない。土に栄養がないのか、水をまき忘れているのか分からないな。


「これは一旦、村に行ってみるか」


元はそこに行くのが目的だが、この様子は何かあるな?


少し歩く速度を速める。出入り口らしき門が見えた……がなんか焦げ臭いぞ?

キャンプファイヤーにしては炎が大きすぎる……って火事じゃねぇか!!


急いで村に入る。


木と藁で出来た建物が燃えていた。この村に放火魔でもいたのか?

それはそうと消火しないといけないな。


右手に力を籠める。【負の超強化】を起動させ、水の力を纏わせる。


「まさか雨が降らんとはな……【負の超強化】、タイプ3…!『負の水流ネガティブウォーター』」


手のひらに水が出てくる。やがては巨大な水玉となり、俺はそれを建物の真上に投げた。水玉はパーンと割れて、火を消す雨となった。


俺の能力、【負の超強化ネガティブパワード】も派生できる能力がある。

自分が負の感情をすでに浸ってるのであれば、それが発動の条件であり、属性の変更など容易い。この能力は負の感情と、何に対して負を持っているのかが属性変更の鍵となる。


先ほど俺は「雨が降らないとは……」と言ったからな。雨、つまり雨水などを含める。他にも熱いなどを負に変えてしまえば簡単に炎属性に変更される。まぁ熱なんだけどな。


「よし、消火完了。人の気配は……ないな」


辺りを見渡す、そこには人の影一つもなく、ただ静寂のみだった。

異様な不気味さを感じた俺は他の民家を訪ねる。


「だれかいないかー?」


扉を叩き、返事を待つ。数分経っても返事が来ない。明らかに異常だ。

俺は扉を蹴破り、民家の中に入る。


「……誰もいないのか?」


中はもぬけの殻だった。幾つか家具が残っているが、壊されているのが多い。

恐らく、戦闘があったと推測できる。


床を見て証拠を調べる。銃があれば薬莢が落ちてるはず。


「……落ちてないな」


薬莢は見つからない。証拠を消すために持ってかれたのか、それとも元々この村に銃自体がないのか……。その代わり、あちこちに鈍器のようなもので破壊された家具のほかに壁が刃物のようなもので傷つけられている。


間違いない、この村は襲われてたんだ。この場合は山賊やどこかの軍ではない。


「このやり方は……奴隷商だろうな」


追放世界の奴隷商は人を殺さず、人を捕らえ、奴隷として利益を得る。

捕らえられた者は老若男女問わず、亜人ですら同様だ。


他の民家を徹底的に調べる。中には誰もいない。

中は完全に荒らされていた。争った跡はあるが、どれも鈍器や刃物を使った形跡が残されている。


運が悪いとしか言いようがない。第一村人は一人も見当たらず、この村は無人の廃村となっているのだ。


「最後は……この場所だな」


ふと、民家の外で立ち止まる。

唯一木製の住宅に似合わないコンクリートと車庫についているシャッターが眼中に映った。


「多分トラクターが入ってると思うが、まぁ中は見てみるか…」


生存者がいるかもしれない。という有りもしない希望を信じてシャッターを上げる。

するとそこには村に似合わないものが入っていた。


「戦車?しかも大きさ的に重戦車だ」


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