第24話 予想外と異世界脱出戦

彼女らの成功を信じて乱闘を行って3時間。突如通信が入る。


「こちら陸也だ。どうした?」


『隊長、アタシだ。ソラお嬢の母親を確保した。今火種と合流して親子ともども脱出を行おうとしてるんだが、魔王直属の連中に見つかっちまったんだ。どかせねぇか?隊長』


結衣からの通信だった。成功してるようだが、脱出時に包囲されて突破に時間がかかっているようだな。暴れ過ぎたか……。


「わかった。今向かう。耐えててくれ」


『了解だ』


通信が切れる。上手くいっているにはいっているが、まぁこれは仕方ない。

俺は自身の身体強化をかけっぱなしの状態で、城内へ突入して、壁を破壊しながら結衣達と合流する。


「隊長!?どこから侵入してるんだ!?」

「どこも何も正面からだ。暴れ役が正面から来なくてどうすんだ」


軽く突っ込みを入れた後、俺は立ち塞がる敵を見る。

壁をぶっ壊して侵入してきたのを驚いているのか、少し後ずさっているな。


「ふむ、長剣ロングソードにライトシールド。しかも武具全部に魔法の付与。まさに直属って感じだな」


「隊長、やれそうか?」


「やれなくもない。ただそんなに束になるとつまらなくなるんだがな」


直属部隊兵たちは「なんだとぉ!?」と言って怒る。うん、阿保だあいつら。

軽く流してやるかね。


「……力を30パーセント解放。歯を食いしばれよ?ゴミども」


思いっきり力を溜め、正拳突きのように拳を突き出す。


普通は何も起こらない。だがそれはあくまで普通の正拳突きならだ。


周囲の大気に異常が発生する。風圧が巻き起こり、前方の壁、物質を破壊していき、最大5km先にある物体までおもが吹き飛んだ。


「……30%を解放しただけでここまで吹き飛ぶとはな、この世界の創造神のキチガイさを疑うな」


30%でもすげぇ破壊力だな。城の4割は破壊されてるし、その先は跡形も残ってない。ピンポイントで城に爆撃機の爆弾でも落ちたかと考えるとぞっとするな。まぁ俺の力で壊したわけなんだが……。


自分でも引きながら後ろを見やる。


「は、はは……マジかよ。隊長強すぎだろ……」


「こ、これが白き邪神の二つ名を持つ男の力……しかもまだこれで3割分とは…」


「お、恐ろしい奴じゃ……!この世界の最強魔法【超隕石メテオストライク】でもビクともしない強度を持つ魔王城を意図も軽く壊すとは……」


護衛目標であるソラと、その横にいる天使のような綺麗な白い羽を持つ女性は……彼女の母親なのだろうか?それら二人が顔を真っ青になりながら抱き合っている。


そうだよな!こんな強力な攻撃を間近に見せられたら引くのは無理はない!普通に怖がるわ!


「……何かすまん。取りあえず撤退するぞ」


皆は「お、おう」「そ、そうだな」と言って命令を聞く。

怖がらせる気は微塵もなかったんだが……。


恐怖政治で人はついてこないってのに、参ったなコレは……。




城から脱出して数時間、俺達は回収地点リカバリーポイントまで近づいていた。目標の回収は成功。これで後は迎えのゲートに入って帰還すれば任務完了。


「……」


のはずだったんだが。


「なぁ、ソラ」


「何じゃ?」


「俺は確かにお前さんとお前さんの母親をこの世界の外に逃がすとは言ったが」


俺が後ろを振り向くと、数十人くらいだろうか?メイド服を着た魔族たちがぞろぞろとついてきてた。


「……お前さんらの使用人や召使いたちは含めた覚えはないぞ?」


ソラから聞いた話では、結衣達が探している時にそそのかされてついてきたらしい。

彼女は人望でもあるんだろうか?


「はぁ……任務とは関係ない奴らまで巻き込んでしまったぞ……」


ため息を吐きながら、指定された場所に向かう。

数分後には辿り着き、休憩させてる間に俺は上司に連絡を入れた。


「こちら陸也。レクス様、回収地点に到達した。ゲートを開けて欲しい」


『わかったよ。ちょっと待ってね』


突然目の前に大きな歪みの穴が顔を出し、穴の中からレクス様の声が聞こえた。

そう、これがゲートである。


「早く帰還してくれ」


「了解、その前にターゲットを先に送る」


そう言ってソラたちをゲートに入れる。奥からレクス様が「うわ!何だ何だぁ!?」という悲鳴が聞こえたが、耳を塞いでおこう。



こうして部下がいる任務は終わった。


「アタシ……隊長に悪口言うのやめるぜ……」


「隊長のような男が私のいた世界にいてくれたらどれだけ苦労せずに戦を終えれたか……」


「……いいからお前らもゲートに入れよ」

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