第23話 三つ目の能力

さて、行くとしても。魔王城の場所はすでに把握してある。

任務に行く前に地形や場所の把握は重要だからな。何も知らないまま挑めば、それでこそ無謀に等しいだろう。


「それで、どうすんだ?」


「まぁ見てろ」


魔王城までテレポートで転移し、門前の近くにある草むらに潜ませるように指示する。此処からは俺の仕事だ。


こつこつと門前に近づき、門番に気づきやすいようにする。


「おい、止まれ」


「止まる気はない。増援を呼ぶなら呼ぶがいい。この場は血の海になるだけだがな」


門番たちは「何言ってんだ此奴?」と言って槍で行く手を阻む。門番は二人、特に高台に見張りらしき影は無し。警備がザルだな……。

元より此奴らを倒して入るつもりだからいいが、問題は敵全員を釘付けにできるかだ。


「そんな産廃寸前の槍で俺の行く手を阻めると思ってるのか?随分と馬鹿にされたものだな」


そう言って腰にぶら下げてある短剣ショートソードを鞘から抜く。


僅かな速さで一閃が走り、門番一人の首を跳ねる。


「な!?」


いきなり仲間が死んだのに驚いたのか、もう一人の門番が槍を構える。


「魔王様に知らせろ。この俺「リクヤ」が勇者の代わりにお前をぶっ殺しに来たとな」


「貴様!」


門番が紅い石のようなものに力を籠める。すると周りから殺意を多く感じた。

成程、あの石っころは警報装置か。面白いことに使ってるな。


どんな奴が現れるか楽しみだ。


わくわくしながら増援を待つと、皮鎧を着た魔族の警備兵が来た。


素早く武器を構え直し、敵の装備を見る。


「……随分と安物の装備してんだな」


見たところ、ロングソードはあるが、豪華だったとしてもツヴァイヘンダーとは……さては雇われ傭兵だな?


「ちっ……弱兵を守りに回す戦術か。よく考えてるじゃないか」


弱くても傭兵。束になれば厄介も極まりない。

だからと言って即死技をこれ以上使う訳にもいかないし、を使うか。


黒い瘴気が俺にまとわりつく、死体から黒い何かが出てきて、俺の体に吸収される。

量は大したことないが、これぐらいの戦力なら軽く屠れる。


「……【負の超強化ネガティブ・パワード】、起動」


黒い瘴気が実体を持ち始める。鎧は作らないものの、力がみなぎってくる。

先ずは四肢を強化し、警備兵たちに迫る。


「な、なんだあいつ!?いきなり最上位魔族並みの力を持ち始めたぞ!?」


「お、おい!こっちに来るぞ!」


怯える。無理はないが、俺自身は魔力がない。というより俺は無魔法で魔法の才能がないんだ。それが故、この能力が覚醒したんだ。


「久方ぶりに暴れるんだ。せいぜいあがいてくれよ?」


負の超強化ネガティブ・パワード】、俺の三つ目の能力だ。

死んだ者の負の力や、誰かが否定的な感情になるとそこから溢れ出る負の力を吸収し自分の力にできる。使い方は簡単だが、制御するのは難しい。力量によっては世界一つがお釈迦になるからな。


つまり、相手がゾンビや幽霊とかだった場合は大変ながら役に立つ。また、たまった負の力は蓄積させることができる。


今の俺は10分の2程度の力しか発揮できていない。負の力が足りないからな。


「くそ、かかれ!!」


奴らが襲い掛かる。しかし俺から見れば、動きはスローモーションに見える。


軽く手を横に振る。それと同時に凄まじい風圧が警備兵たちを襲い、空高く吹き飛ばす。


「うわぁーーー!」「ぎゃあああ!」「うわわぁぁぁぁ!」


おおーだいぶ吹き飛んだな。殺しはせんが、なかなかの威力だ。

感心しながら結衣達が隠れている草むらを軽く振り向いて見る。気配がない。潜入に成功したようだな。


上手くいってればいいが……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る