第21話 作戦会議

「異世界亡命?」


俺が考えた案に3人は頭上に?を浮かばせる。

無理はない、この方法は邪道に等しいくらい悪い方法だ。

分からんのも当然だ。


「要するに、だ。一時的に事が収まるまで、ソラとその母親を別の世界に避難させる。無論、そこまでの護衛もできるし、お母さんと一緒に異世界でこの世界の事を忘れ、平穏に暮らすのも悪い話ではない」


淡々と話を続ける。そこに結衣が横槍を入れた。


「だがよぉ、母親はどうやってこちら側に連れてくるんだ?」


俺は「よく聞いてくれたな」と言って指を鳴らす。


「そこで、だ。まずはソラを俺達の回収地点リカバリーポイントで回収し、安全を確保する。その次に俺達は魔王城に侵入し、母親を奪取する。後はテレポートで逃げて回収すれば任務完了だ」


「それだけか……?」


無論、これが上手くいくとは限らない。魔王城には多くの障害となるものがわんさかいるだろう。


「だが、今回の任務は無茶振りは了解されてる。多少魔王城で暴れてもこの世界の歴史に支障は出ない。安心して破壊行動に走っても良いという事だ」


「じゃが……成功するのか?」


「あー……残念ながら回収役は俺じゃなくて火種、お前になる」


「私!?」


火種は飲んでいた紅茶を口から吹き出し、青ざめた。


「私なんかで大丈夫なのですか!?」


「暴れるのは俺だ。そうした方がやりやすい。それにソラに対する信頼が厚い従者が少なからずともいるはずだ。その誘導役を結衣、お前に一任する」


「だ、大丈夫なのか?アタシで?」


口だけで言っては信頼は得られない。ならば暴れまわるという回収するよりも危険な行為は上司が進んでやるべきだ。どの会社も組織も同じことだ。


「俺は……この作戦の要はお前さんら二人だと思ってこの作戦を立案する。無論、反論があるなら言ってくれ、聞こう」


「あ、あまりにも無謀すぎねぇか?勝算はあるのか?」


「万が一、隊長が命を落とせば、我々の部隊が壊滅するのでは……!?」


何が心配と思えばそれかよ。


「ハァ……」


俺はため息を吐き、答えを返す。


「あのなぁ、確かに常人なら無理な策だろう。だが、何のための不老不死だ?相手は俺達が不老不死だという事に何一つ気づいていない。それにお前さんらは何のために訓練をしてきたんだ?その力は化け物を狩るための力だけと勘違いしてるのではあるまいな?」


「————っ!」


「いいか?これはな、最初から危険な任務だ。常人ならだれもやらんし、やりたくもないだろう。気高き騎士ですら断るレベルだ。だがこれを誰がこなす?俺達しかいないんだ。それに俺が何も考えずにこんな作戦は立案しない」


いかにも、この作戦は味方とのコンビネーションと素早い行動がこの作戦の成功のカギを握る。失敗は許されない。失敗すれば、俺達は無事なもののソラの母親が確実に死ぬことになるからだ。


どのルートから行っても必ずしも安全という保障はない。しかし対策を怠らなければそれには少し近づく。


「だが、作戦が失敗したら……」


「安心しろ、失敗はしない。むしろさせない」


ハッキリという。普通は無謀かつ仲間からの不安と信頼の低下を買いかねない。だが、みすみす仲間を死地に追いやるほど、俺はバカではない。


ちゃんとした作戦があるんだ。失敗や味方の負傷者何て出させないさ。


「お前さんらは俺を信じなすぎる。信じるからこそ、できぬ依頼をこなせる道が作られるんだ。お前さんらが今やってるのは、「報酬がもらえればそれでいい」と言っている傭兵のようなちんけな友情に過ぎない」


たまに調子に乗ってるしな。傭兵は金次第で裏切る。そう、俺が唯一傭兵業をやらない理由だ。確かに金がなきゃ雇われないし、生き残るために依頼主を捨てるだろう。間違ってはいないさ。


「—————」


「俺は……お前さんらを信じるからこの作戦を立てた。責任は俺にある。この作戦に乗れないならそれでいい。ソラを連れて、この世界から撤退する」


「!?」


「俺は今まで、金や名声や富の欲望に忠実な連中を見てきた。確かにそういう奴がいてくれたからこそ、人間ってものだ。しかしだ……俺達はもう人間じゃない。人の姿をした怪物だ。寿命や病気、戦いでは死なない」


確かに彼女らが反論を言うのは間違ってはいない。確かにこれはあまりにも無謀だろう。だがこれは唯一の最善の策だ。


納得してくれとは言わない。


「……作戦の開始は明後日だ。それまで決めてくれ。強制はしない」


強制を入れたら確実に部下が逃げるからな、まぁ逃げ場がないが。

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