第19話 逃走
あれから数分も掛からないうちに敵が一人倒され、残りを捕まえて尋問を始めた。
と言ってもほぼ単純なものだがな。
「では質問に答えてもらうぞ。黙秘すればそれなりの痛みが伴う」
「ふん、やってみろ!」
あ、そう。ならまずは……。
俺は右手に電撃を纏わせ、相手の肌に触れる。
これは「エレキネシス」という静電気の電力を念の力で増幅させ、発動させるものだ。ただこれによる発電は期待しない方が良い。発電機がお釈迦になるからな。
「ガァァァァァァ!!!!!!」
ビリビリと電流が身体中に流れ、捕虜が叫びをあげる。
1分くらい感電させ、能力を止める。
「では問1。誰の差し金だ?雇い主と目的を言え」
「何……を……?」
「言わないならさらに電力を高めるぞ。最初は20万ボルトの電圧だったが、次は30万に変更だ」
ビリビリと電圧を引き上げる。触れようとした途端に捕虜は白状した。
予想通り、斥候部隊のお出ましで、ソラの暗殺が目的だったらしい。
白状したため、後始末は結衣に任せ、ソラの方に戻る。
*
「バカな……もう私のいる場所まで来てたのか!?」
「残念ながらだ。時間がない。旅支度をしてくれ、恐らく報復が来るから、少しの間だけ時間を稼ぐ」
ソラはぬぅ……と言って腕を組みながら左右をうろつく。
しかし、本人の口からは「お前たちが来たから、私の暗殺を予定より早めたのではないか?」という言葉は見えている。無論、これは俺達のせいではない。
「時間を稼ぐと言っても、どうやって森を脱するつもりだ?」
「ここから3キロ離れた場所に洞窟がある。まぁ後は任せろ」
それだけを言って、外に出ようとすると、全身血だらけの結衣が来る。
多分、殺ったな。これ。
「すまねぇな。ちぃと手間取った」
「手間取りにもほどがあるぞ、結衣殿」
俺はこほん、と言って、作戦を説明する。
「先ずはこの周辺にこの世界の魔道具「魔力地雷」を可能な限りばら撒く。迂闊に追撃を許さないようにするためだ。その後、ソラと合流する。洞窟まで猛ダッシュだ。恐らく相手は空からも来るだろう。対空迎撃準備も怠るな」
俺は超能力の一種である「
「以上だ。罠は突破されないとは限らない。ましてや遠距離、地形を利用した魔法も飛んできてもおかしくはない。気を付けろよ」
一応、これには落とし穴がある。この魔力地雷は安物のため、発見されやすく尚且つ壊れやすい、爆発の範囲と威力が微妙という二拍子が出揃ってるという。
ゲームで言うクソアイテムだな。まぁ足止めに使えれば、たとえ使えないアイテムでも役に立つ。弱いアイテムや弱小武器などこの世に存在しないのだ。
「では、行動開始だ!」
「「了解!」」
*
暫くして、地雷を撒き終わった俺達はソラと合流すべく、洞窟へ向かっていた。
走りながら俺達は会話を進めていた。
「ここからどうするんだ?確か、あの洞窟の先は行き止まりだったはずだぜ?」
「洞窟の最深部に着いたら、俺のテレポートでこの森のある大陸とは違う別大陸に転移する。次の作戦はそこで行う」
その時、背後から爆発音が聞こえた。どうやら報復が始まったらしい。ただ、相手は地雷の存在に気づいてないらしく、爆発してるらしい。まぁあちこちにライトキネシスを使って透明化させたからな。
だが、別の場所ではテンポの速い爆発があった。恐らく地雷に気づいて遠距離から起爆させてるんだろう。まぁそうだよな。
「もうすぐ洞窟だ。覚悟を決めろ!」
洞窟に入り、最深部には松明を持ったソラが待っていた。
「もう奴らが来たのか?」
「予定通りだ。行くぞ」
俺はソラの小さい手を握る。
そして結衣、火種へと繋がり。
「転移する。酔うんじゃないぞ!」
俺達の身体は一瞬で消え、辺りに静寂が訪れる。
それから数分後、駆け付けた魔王の軍勢が見たのは、ぽとりと地面に落ちている松明だけだった。
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