第19話 逃走

あれから数分も掛からないうちに敵が一人倒され、残りを捕まえて尋問を始めた。

と言ってもほぼ単純なものだがな。


「では質問に答えてもらうぞ。黙秘すればそれなりの痛みが伴う」


「ふん、やってみろ!」


あ、そう。ならまずは……。


俺は右手に電撃を纏わせ、相手の肌に触れる。

これは「エレキネシス」という静電気の電力を念の力で増幅させ、発動させるものだ。ただこれによる発電は期待しない方が良い。発電機がお釈迦になるからな。


「ガァァァァァァ!!!!!!」


ビリビリと電流が身体中に流れ、捕虜が叫びをあげる。

1分くらい感電させ、能力を止める。


「では問1。誰の差し金だ?雇い主と目的を言え」

「何……を……?」


「言わないならさらに電力を高めるぞ。最初は20万ボルトの電圧だったが、次は30万に変更だ」


ビリビリと電圧を引き上げる。触れようとした途端に捕虜は白状した。


予想通り、斥候部隊のお出ましで、ソラの暗殺が目的だったらしい。


白状したため、後始末は結衣に任せ、ソラの方に戻る。





「バカな……もう私のいる場所まで来てたのか!?」


「残念ながらだ。時間がない。旅支度をしてくれ、恐らく報復が来るから、少しの間だけ時間を稼ぐ」


ソラはぬぅ……と言って腕を組みながら左右をうろつく。


しかし、本人の口からは「お前たちが来たから、私の暗殺を予定より早めたのではないか?」という言葉は見えている。無論、これは俺達のせいではない。


「時間を稼ぐと言っても、どうやって森を脱するつもりだ?」


「ここから3キロ離れた場所に洞窟がある。まぁ後は任せろ」


それだけを言って、外に出ようとすると、全身血だらけの結衣が来る。

多分、殺ったな。これ。


「すまねぇな。ちぃと手間取った」


「手間取りにもほどがあるぞ、結衣殿」


俺はこほん、と言って、作戦を説明する。


「先ずはこの周辺にこの世界の魔道具「魔力地雷」を可能な限りばら撒く。迂闊に追撃を許さないようにするためだ。その後、ソラと合流する。洞窟まで猛ダッシュだ。恐らく相手は空からも来るだろう。対空迎撃準備も怠るな」


俺は超能力の一種である「物質転移アポート」を使用し、3つの袋を取り出す。


「以上だ。罠は突破されないとは限らない。ましてや遠距離、地形を利用した魔法も飛んできてもおかしくはない。気を付けろよ」


一応、これには落とし穴がある。この魔力地雷は安物のため、発見されやすく尚且つ壊れやすい、爆発の範囲と威力が微妙という二拍子が出揃ってるという。


ゲームで言うクソアイテムだな。まぁ足止めに使えれば、たとえ使えないアイテムでも役に立つ。弱いアイテムや弱小武器などこの世に存在しないのだ。


「では、行動開始だ!」


「「了解!」」




暫くして、地雷を撒き終わった俺達はソラと合流すべく、洞窟へ向かっていた。

走りながら俺達は会話を進めていた。


「ここからどうするんだ?確か、あの洞窟の先は行き止まりだったはずだぜ?」


「洞窟の最深部に着いたら、俺のテレポートでこの森のある大陸とは違う別大陸に転移する。次の作戦はそこで行う」


その時、背後から爆発音が聞こえた。どうやら報復が始まったらしい。ただ、相手は地雷の存在に気づいてないらしく、爆発してるらしい。まぁあちこちにライトキネシスを使って透明化させたからな。暗視あんしゴーグルなどがない限り肉眼には映らない。


だが、別の場所ではテンポの速い爆発があった。恐らく地雷に気づいて遠距離から起爆させてるんだろう。まぁそうだよな。


「もうすぐ洞窟だ。覚悟を決めろ!」


洞窟に入り、最深部には松明を持ったソラが待っていた。


「もう奴らが来たのか?」


「予定通りだ。行くぞ」


俺はソラの小さい手を握る。

そして結衣、火種へと繋がり。


「転移する。酔うんじゃないぞ!」


俺達の身体は一瞬で消え、辺りに静寂が訪れる。


それから数分後、駆け付けた魔王の軍勢が見たのは、ぽとりと地面に落ちている松明だけだった。

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