第17話 この幼女、魔王也

女の子?まさかこの子が護衛目標か?


「悪かった。武器をしまってくれ。少なくとも敵じゃない」


武器は元々しまってるが、なぜか少女は刀を鞘に納めない。

何を警戒してるんだ?


「では外にいる女二人もか?」


結衣と火種の事だろうか?勘づくのが早いな。


「ああ。俺達はある任務でお前さんを遠くへ逃がすよう依頼されたものだ」


「ほう?魔族ですら簡単に近寄れん、この森よりも危険な場所に私を置くと言うのか?」


そういう意味ではないのだが……しかも置いていくだと?


「……いくつか質問したい。いいか?」


「ふん、なら外の二人も呼んで席にでも座れ」


随分と口の悪いお嬢さんだな。さすが魔王の娘という事か。





「で、質問は?」


「まずは……お前さんが魔王の娘か?」


一つ目の質問に彼女は呆れた顔をして答えた。


「私を知らんのか?それでよく工作員エージェントが務まるな……まぁいい。私は『ソラ=ファウスト』、大魔王エルギル=ファウストの一人娘じゃ。ソラと呼べい」


マジか、此奴が護衛対象かよ……。


「ソラ=ファウスト……良い名だな。二つ目の質問だ。先ほどお前さんは置いていくのかと言った。前くらいかにお前さんをこの森に置いていった輩がいたのか?」


「……」


答えづらいんだろうか?少し黙ったな。


「愚問だったなら取り消すが……」


「2年前に冒険者共がこの森に案内し、ここに私を置いた。外にも出れず、ずっとこの森にしか居れん。だがそのおかげか、追手はほとんど来なくなった。安全には安全じゃが、この時期になってこの森にお前たち以外にも侵入し、命を狙う輩が来てるんじゃ」


それもう安全じゃないな。


「そこで俺達が来た。同じ案件で疑ってるならそれでいい。だがこれだけは言っておくぞ」


「?」


「俺達はそんな半端ものとは違う。俺達なら確実に追手も来ないところにやることができる。胡散臭いと思うが、それなりに覚悟がある」


口による出任せではない。そうでなかったら俺はここにいないのだからな。


「ハッ!そんないかにも嘘をついてそうな口はいくらでも聞いてきたわ!騙されると思ったか?」


まぁ証拠がないからなぁ。信じてもらえないのは承知の上だ。


「信じないならそれでいい。俺はお前さんを騙す気はない。任務中、作戦以外の方法で謀はご法度だからな。さらに聞くが、何なら信用できる?」


「そうじゃな……私を連れ出そうとしている理由、そして私をどこに放り投げる気だ?」


放り投げるとは考えがヤバいな。仕方ない。悪手だが、任務内容を言うしかないな。



「成程、それがお前たちの任務であり、ここに訪れた理由か。そのレクスとやらがこの世界の時空を歪めんがためにお前たちを送り込んだのか」


「そういう事だ」


自分のいた世界なら呆れるだろうが、異世界が絡めば他人ごとではいられんくなるだろう。


「……少し考える時間をくれ」


これはちょっと気まずいか?

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