第16話 罠と幼女
森の中を進んで十数分。
俺と結衣が弱い魔物を蹴散らしつつ、火種を斥候のように偵察させてる。
彼女の持つ【
魔力と熱反応を利用して相手を探るちょっと変わった能力だが、偵察や暗い場所における視界の邪魔をしない能力で、とても重宝する。だから彼女を一時的に戦闘をさせず、見つけ次第俺達に知らせて対処する。何かがあれば後方支援に回れる。これも見事な連携だ。間違ってはいない。
「それにしてもこの世界の魔物の魔法、全然痛くねぇな。これが噂のレベルアップって奴か?」
結衣がゲームの用語を使ってる……さすが現代人。って俺も同じか。
いや、そもそもこの世界にRPGみたくステータスみたいな画面がないだろう……ただ単に俺達が強いだけだろう。それか、この森の唯一弱い魔物に当たってるだけかのどちらかだろうな。
何がともあれ油断する気はない。
暫く進んだ先に俺達は一件の小屋を見つける。窓は割られておらず、建てたばかりのような新設さを見せている。
明らかに罠っぽいが、まぁどんな罠か確かめよう。
「俺が扉を開ける。罠かもしれないから、周りを警戒してくれ」
結衣達は頷き、周りに目を配る。俺はまず最初に扉を叩く。
「……変化無し。留守か、ましてや居留守かのどちらかだな」
そっと扉を開ける。
中は木製の家具が並べられており、木製のテーブルには料理が置かれている。
木製の食器、主に皿には冷めたスープか。
「……」
黙って中に入る。特に殺気は感じない。今のところは。
ベッドのある方とは違う方向には西洋風の棺に似せた石棺が立てかけられてた。
縁起でもないが、その魔王って吸血鬼の血筋なのか?それなら上位魔族だと理解できる。
油断させて侵入者を仕留める手段か?随分と見え見えな行動だが、俺をおちょくってるんだろうか?
「……子供だましって訳でもなさそうだな」
棺に触れる前に何かを感じた俺は武器をしまい、いつでも素手で叩き伏せれるようにする。感じたのは殺意。しかもかなり鋭い気だ。剣豪かかなりの強者と感じ取れる。もしかしてこの森の守護者か?だが、こんなところに小屋を建てると言うのは、自ら逃げ道を消すのと同じ。
何かを誘ってるのか?
警戒しつつも棺を開ける。その瞬間。
―――――剣の閃光が走った。
「魔王刀術、隠剣七ノ型―――【
迂闊だった。まさかいきなり技を撃たれるとは思わなかった。
しかしその斬撃は運よく俺には届かなかった。開けた瞬間に爆発する罠を予想していたのか、開けたとたんに後ろへ飛んだのだった。
「……躱すか。貴様何者じゃ?」
俺の目の前に映ったのは、刀を持った白髪ロングの蒼眼の少女だった。
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