第14話 報酬

あれから四日が過ぎた。

初の大物を狩り倒した部下二人はレクス様に呼ばれて、今は自宅にいない。


国内での任務とはいえ飛竜をぶっ倒したんだ。二人の人生初の経験になったはずだ。油断の欠片が一つもないものだが、いずれ二人にはまずい状況になってもいいように特定のパターンを経験させる事にしよう。


さて、俺の方なんだが。

いつもの通りのため俺はインフラ整備に回っている。黒飛竜共が民家や畑に火を放ったからな。やれやれ、建築技術があまり進歩してないとはいえ、木造住宅を攻撃するとは不届きにもほどがある。


「すみません。大尉に手を煩わせる事をしてしまって……」


一人の看護服の女性が頭を下げる。彼女はレクス公国軍の衛生兵メディックだ。負傷した人間を治すのを役目に、同じくインフラ整備班に所属する公国軍兵士でもある。階級は軍曹だ。


「問題ない。国民の悩みを聞き入れるのもこの国に所属する士官の役目だ。気にしなくていいぞ。それよりも他の被害確認を急いでくれ。負傷者が出たら救出と治療に専念しろ」

「は……はい!」


指示を出して他の仕事をさせる。これでは俺が楽してるように見えるが、上司としての仕事だ。悪い事はしていない。


それから数時間。インフラの整備が終わって、道も民家も畑も元通りだ。

しかし、黒い飛竜がレクス公国ここに来るとなると、国外では何が起きてるんだ?


別に大災害が起きる日でもないし、敵国の宣戦布告は受けてない。第一、戦争大国じゃないしなぁ……。


そう考えながら自宅に戻る。


「ただいま」


玄関に入っても返事がない。靴もないし、まだレクス城にいるんだろう。それかどこかで打ち上げ会みたいなものでもしてるんだろう。おめでたい事だ。


「さて、夕食を作らなくちゃな」


そう言ってる時だった。


ジリリリリン!



突然、廊下にある黒電話が鳴る。生憎、この回線はレクス城か俺の同僚の家にしか繋いでいない。電話をしてきたのは誰だ?

受話器を手に取り答える。


「俺です」

『あー陸也君。部下二人の報酬の受け渡しが終わったよ。それでなんだけど、新たな依頼だ』


レクス様からの連絡だった……しかも新たな依頼って……空気を読まない神様だなぁ。


「で?次の任務は?」

『次は時空番号6899の世界に行って、あることをしてもらいたいんだ』


ほう?何やら訳アリがありそうな任務だな。聞いてみるか。


「内容は?」

『魔王救出兼護衛任務だ』


「……は?」


一瞬だけ俺の頭の中が真っ白になる。


「魔王の救出及び護衛……ですか?」



二人の部下 完

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