第12話 思考(火種サイド)
私は火種。元は武の家系で育った女侍だ。
ある合戦時に討ち死にしかけ、間一髪追放世界に来て難を逃れた。
だがこの世界に来てしまった以上、私はもう元の世界には帰れない。だがそれは私自身にとって好都合だ。この世界に来る以前、親の嫁ぎ道具にされてロクな事もなかった私には、何の未練もない。
レクスという少年の紹介で、白皇陸也という男の部下として任に着くことになった。
そして、国外にて失態を犯してしまい。上司に助けられる始末。己の無力さ、不甲斐なさを知った私は少し、落ち込んだ。だが上司である陸也は怒った顔一つもせずに、むしろ笑った。
良く分からないが、この世界ではよくある事なのかもしれん。
あの訓練から翌日、陸也がいつもの通りに昼食の用意をする音が廊下に響く。
しかし、今日は何かが違っていた。
ビーッ!ビーッ!ビーッ!
突然、不穏な音が鳴り響く。
急いで廊下に出てみれば、陸也が武器を持って支度をしていた。
同時に一緒に追放世界に来た同胞である結衣も部屋から出てくる。
「隊長殿!襲撃か!?」
「ああ、しかも大物だ」
「大物?」
「そうだ。急いでいくぞ」
陸也の命令通り、武具を装備して陸也の言う仕事場に行く。
大物とはいったい?
*
しばらくして現場に到着し、陸也が櫓に上る。
少しして結衣が陸也を呼んで、作戦を説明し始める。
「この作戦は2フェイズある。1フェイズ目は遠くから狙撃して、飛竜共の注意をこちらに向かせる。2フェイズ目は襲ってきた飛竜を各個撃破だ。簡単だろう?十匹の群れだ、頭はどちらかになる。逆に誰かが頭の飛竜を墜とせば、指揮は乱れて逃げるか降伏するかだ」
フム、今ここにいるのは私を含め三人。一人三体ずつ倒せばいけるという算段か?
勝算はあるのかは分からんが、味方が来ていない以上、我々が食い止めなければならないか。
「あ、それと二人とも。レクス様から特殊武器は幾つか貰ってるな?」
「ああ、この世界の影響下を受けてる奴を唯一殺す事ができる武器だろ?」
「通称『不死殺し』と名乗る武器だったな」
そういえば、陸也の家に住まわせてもらう前に授かったな。
奇妙な色合いをした銃だが、使えるなら良い。この世界の住人は死という概念がない。だがこの武器こそがその概念を与えるものなら、相手を倒せなくはない。
「さぁ、
「了解!一匹残らず撃ち落としてやるぜ!」
「御意、第二の祖国を荒らすものは撃ち抜き、切り捨てる!!」
その飛竜とやらの力、見せてもらおうではないか。
私は不死殺しの銃を構え、狙撃の体勢に入った。
飛竜という名だけに空を飛んでるらしいからな。きちんと狙いを定めねば。
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