第12話 思考(火種サイド)

私は火種。元は武の家系で育った女侍だ。

ある合戦時に討ち死にしかけ、間一髪追放世界に来て難を逃れた。


だがこの世界に来てしまった以上、私はもう元の世界には帰れない。だがそれは私自身にとって好都合だ。この世界に来る以前、親の嫁ぎ道具にされてロクな事もなかった私には、何の未練もない。


レクスという少年の紹介で、白皇陸也という男の部下として任に着くことになった。


そして、国外にて失態を犯してしまい。上司に助けられる始末。己の無力さ、不甲斐なさを知った私は少し、落ち込んだ。だが上司である陸也は怒った顔一つもせずに、むしろ笑った。


良く分からないが、この世界ではよくある事なのかもしれん。

あの訓練から翌日、陸也がいつもの通りに昼食の用意をする音が廊下に響く。

しかし、今日は何かが違っていた。


ビーッ!ビーッ!ビーッ!


突然、不穏な音が鳴り響く。

急いで廊下に出てみれば、陸也が武器を持って支度をしていた。

同時に一緒に追放世界に来た同胞である結衣も部屋から出てくる。


「隊長殿!襲撃か!?」

「ああ、しかも大物だ」

「大物?」

「そうだ。急いでいくぞ」


陸也の命令通り、武具を装備して陸也の言う仕事場に行く。

大物とはいったい?




しばらくして現場に到着し、陸也が櫓に上る。

少しして結衣が陸也を呼んで、作戦を説明し始める。


「この作戦は2フェイズある。1フェイズ目は遠くから狙撃して、飛竜共の注意をこちらに向かせる。2フェイズ目は襲ってきた飛竜を各個撃破だ。簡単だろう?十匹の群れだ、頭はどちらかになる。逆に誰かが頭の飛竜を墜とせば、指揮は乱れて逃げるか降伏するかだ」


フム、今ここにいるのは私を含め三人。一人三体ずつ倒せばいけるという算段か?

勝算はあるのかは分からんが、味方が来ていない以上、我々が食い止めなければならないか。


「あ、それと二人とも。レクス様から特殊武器は幾つか貰ってるな?」

「ああ、この世界の影響下を受けてる奴を唯一殺す事ができる武器だろ?」

「通称『不死殺し』と名乗る武器だったな」


そういえば、陸也の家に住まわせてもらう前に授かったな。

奇妙な色合いをした銃だが、使えるなら良い。この世界の住人は死という概念がない。だがこの武器こそがその概念を与えるものなら、相手を倒せなくはない。


「さぁ、飛竜狩りワイバーンハンティングを始めるぞ」

「了解!一匹残らず撃ち落としてやるぜ!」

「御意、第二の祖国を荒らすものは撃ち抜き、切り捨てる!!」


その飛竜とやらの力、見せてもらおうではないか。

私は不死殺しの銃を構え、狙撃の体勢に入った。


飛竜という名だけに空を飛んでるらしいからな。きちんと狙いを定めねば。

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