第9話 言い訳不可能

「色々言いたい気ではあるのは分からなくもない。これは現実だよ、陸也君」


否定権はねぇってのかよ……第一俺は追放される前は部下を何人か持ってたけど、裁判に出された日以降、退職させて自由の身にさせてる。まぁそれは置いておいてだ。


「では君達、彼に自己紹介を頼むよ」


二人の女性は席を立ち、俺の前で敬礼する。

最初に喋ったのは態度の悪い赤髪の女性だ。


「アタイは「陽彩ひいろ 結衣ゆい」。追放世界に来る前は特殊作戦部隊の副官をしてたんだ。よろしくな隊長」


敬礼の仕方は拳手の敬礼。

だが、見た目のガラの悪さは変わらんか。


「ん?隊長?!」

「ああ、隊長だぜ?」


うーん……まぁ良い。次だ次。

金髪の女性が刀を手前に置き、持ち手の下に両手を重ねる。


「私は「赤神あかがみ 火種ひだね」と申す。これから白皇陸也隊長の指揮のもと、動くことになった。よろしく頼むぞ」


急に偉そうな口調になったぞ、この女。

まさか此奴、俺が弱いと考えてるのか?


横槍を入れるかのように結衣が自身の能力を説明する。


「アタイの能力は【怪力邪神の法力パワー・イゴーロナク】。力を上昇させる事と、相手の膂力を奪う事もできるぜ」


成程、攻撃と絡め手に優秀そうだ。力を奪う能力は大変ながら役に立つ。拷問や尋問にも使え、使い方次第で多くの軍団と相手にできる。これは強い戦力だ。


「私の能力は【獄炎邪神の啓示クトゥグア・レベレーション】だ。文字通り炎を操れる。熱も例外ではない」


火炎と熱を操る能力か……これもまた便利だな。炎を吸収する奴に対して熱を使って電気を生み出せば電撃属性に早変わりだ。


取りあえず自分の自己紹介をしておくか。


「俺は「白皇陸也はくおうりくや」だ。今回からお前さんらの上司を務めることになった。俺の指揮下に入ったら最後、化け物になる覚悟はしておけよ」


「了解したぜ!」

「御意」


ざっとこんな感じか?

不意にレクス様の方に振り向く。


「頼もしそうでしょ?こう見えて厳選したんだよ?」


厳選されるものなのか?俺の部下になる条件きつかったりするのか?


「陽彩ちゃんは魔法は使えないけど、陸也君同等、超能力が使えるんだ。役立たずとは言わせないはずだよ」


しれっと他人を傷つける事言ったよ、レクス様。


「逆に火種ちゃんは魔法が使えるし、魔力に気を付ければ問題ないよ」


「はっはっは」と笑った後、レクス様は俺にいくつかの資料を渡した。


「これは彼女らのプロフィールだ。よく確認しておくように」

「……」


無言で資料に目を通す。彼女らの年齢は20代前、って若いな!?

結衣は言った通り、特殊作戦部隊の副官だ。罪状は国家反逆罪。何をやらかしたっていうんだ?


火種は異世界の武の家系出身。戦中に討ち死に扱い……死ぬ前にここに来たのだな。若くして戦地に駆り出されるとは可哀そうな奴だ。


得意武器を確認しておこう。

手の癖や行動の仕方だけで作戦を練り上げる必要があるからな。


俺:接近:拳、刀剣、ハンマー 遠距離:銃全般及び超能力によるもの。

結衣:接近:拳、短剣 遠距離:銃全般及び超能力によるもの。

火種:接近:刀、拳、短剣 遠距離:ライフル、弓。


うん、皆バラバラだ。武装の調達も苦労しそうだな。


「先ずはこれで君の部下ができたことがメインだ。後は彼女らの移住先だけど、陸也君……君の家だ」

「は?」


え?ちょっと待って!?何で男一人の住宅に異性二人を住ませなきゃいけないんだ!?勝手にもほどがあるんじゃ……。


「いやーごめんね?彼女らの家は今のところ建てれないんだ。君で言うインフラ整備員が不足してるんだよ」


まぁそりゃあでかい国だからインフラ整備を時間かかるだろうってそうじゃない!


「大丈夫!君なら絶対に慣れるだろう!僕が保証する」


ニッコリ笑って言えるセリフかそれ?こっちはいきなり迷惑事叩きつけられて参ってるんだけど?


「それじゃあ、解散!陸也君は引き続き、次の任務まで休暇だ!」


勝手に決めてるんじゃねえぇぇぇぇぇぇぇ!!!

この阿保神様が!!!






「ったく。どうすんだよ……女性ものの下着とか用意してないぞ?相変わらず無茶苦茶な事を言ってくれる奴だな」


あれから数分後、俺は転移して自宅に戻って、あちこちを掃除していた。

一応、俺の家はいつでもでかくできる改造住宅だったからいいが、空き部屋は5つだ。余裕っちゃ余裕だが、異性と共に住むのは無いと思うんだが……。


「よし、机とベッドは用意した(っというより作った)し、後は部下たちが荷物を持ってくるだけだ」


いずれ俺の家、マンションみたくなるんじゃないよな?それだけは御免だぞ。

裏には畑があるし、地下にはちょっとした射撃場がある。変な風に弄られなければいいが……。


心配してる最中、扉がノックされる音が響く。

部下が到着したようだ。


玄関の扉を開け、ノックした本人の姿を見る。

やはり、数分前の部下二人だ。


「よう隊長。お邪魔すんぜ」

「失礼する」

「……はあ」


何でこうなったやら……。


その後、俺が用意した部屋を見て喜び、ドカリと用意されたベッドにダイブする結衣。それとは別に火種は俺の案内に最後までついてくる。


裏に畑があると言ったら、「良ければ手伝わせてくれ」と願ってきた。

住ませてくれる礼のつもりだろう。ありがたい事だ。


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