第7話 抹殺完了
「ラミル、何を遊んでるんだ?」
気付いたラミルが思いっきり突っ込む。
「これのどこが遊びなの!?それよりも助けて!」
ラミルを助けるのは任務に入ってないんだが……。
俺はやれやれと言いながら、長刀を鞘から抜き、牢屋を斬った。
斬られた鉄格子はズルりと斜め下に、ガランガランと大きな音を立てて床に落ちる。周りの魔法使いの顔は驚愕な表情へと変わり、後ずさりする。
「何なんだこの男は!?」「誰かあの男を追い出せ!」
んー?追い出し?残念だ。俺を懐に入れた時点でやられたも当然だからな。
「ふむ、やめだな」
「え?何を?」
「あいつらを生かす理由だ。本来なら社会的抹殺が目的だったが、子供達を生贄にするような儀式だ、そんな大人は風上にも置けないな」
懐から拳銃を取り出し、魔法使い達の方に銃口を向けた。
「何だ?新たなマジックアイテムか?」
「小さい筒」
そうだった。この世界に銃は無いんだった。まぁいい。どのみち俺に消されるんだから問題ないか。
「さて、儀式の際中に無礼な事をした。謝罪はしない……その代わり「死」をくれてやる」
そう言って銃口を奥にいる魔法使いの額に向け、発砲する。
銃弾はまっすぐ飛んでいき、着弾地点の皮膚を貫通し、後頭部から血飛沫が舞う。
要するに……ヘッドショットキルだ。
「!?」
「一体何が!?」
すかさずハンマーに持ち替え、能力を発動する。
「【
接近する。まずは落ち着かず慌てた魔法使いを殴る。
「ぐあっ!」
殴った後、別の標的に切り替えて一人、また一人と次々と殴り殺す。
殴られた魔法使い達はどんどん肉塊に変えられ、血だまりができていく。その様はまるで、召喚された悪魔が術者を食い殺すように。
「ひっ…ひぃ!」
「後はお前さんだけだ。子供を生贄にどんな悪魔を召喚しようと企んでるかは分からんが、異界の抹殺屋が来た以上。お前さんは裁かれるという事だ」
グレゴスは俺が通ってきた道へ逃げようと背を向けて走る。
しかし、その扉の向こうからギラルが来て行く手を阻む。
「終わりだ、グレゴス。悪魔召喚の儀式は失敗に終わったな」
「あ……ああ……」
絶望したかのようにへたり込む。グレゴスの背後に俺が立ち、後頭部に弾丸をぶち込む。部屋内に銃声が響き、悪魔教団の団長の命は二人の抹殺屋の手によって、呆気なく奪われたのであった。
*
それからして夜が明ける。
攫われていた子供達が親の元に返され、少しずつながら元の生活に戻っていくだろう。
「助かったよ、陸也さん。アンタがいなかったら今頃子供たちは犠牲になってただろう」
「何、困ったときはお互い様だ。これからお前さんはどうする?」
「オレはもう少しこの世界に滞在させてもらう。やり残しがあるからな」
「奇遇だな。実は俺もだ。と言って些細な事だ」
互いに別れ、最後の任務へと向かう。
俺はブレラ村に行かなくちゃな。
*
「そうなの…」
「リクヤ……元の世界に帰るんだ…」
「まぁな。役目が終わったし、用はないと言った感じだ」
「……」
ラミルが俺に強く抱き着く。
恐らく知らないうちに絆が芽生えてしまったか……。
「もう少し、この世界に居ていいだよ……?」
ラミルの目から涙がこぼれる。自分の命を二度も救ってくれた恩人に何も恩を返せないのは嫌なのだろう。だが、任務が終わった俺はこの世界じゃ用済みだ。もうこの世界に来れるかすらも分からない。
「じゃあ…」
自分のポケットを漁る。出てきたのは、一丁のリボルバー銃だった。
これは、
「これをあげるよ」
ラミルに銃を渡す。弾は装填されていない。だから誤射する事はないが、弾は自分で作れってことだ。使い方も少しだけ教え、引き金を引かせる。
弾がないのでカチンと音が出るだけだった。
本来なら銃声が鳴るんだがな。今じゃ玩具に等しい。
「それじゃあ。俺はここで失礼する」
転移を使い、外に出る。
村の出入り口を抜け、ゲートまで走った。
短い任務だったが、この世界の成長はもう目に見えている。
後はこの世界に召喚、転生した異世界人に任せるか。
ゲートの前に着いた俺は後ろを振り向く。
「時が来れば、また会える。それまで生きていればだがな」
そう言い残し、ゲートに飛び込む。
そして念話でレクス様に報告する。
『こちら陸也、任務完了だ』
チュートリアル 完
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