第5話 標的と同業者

翌日、目覚めた俺は準備を済ませて街の中を探索する。

目標はグレゴスの発見及び逃げ道を潰す事。


先ずは彼の発見と情報だ。


「だと言っていちいち人に聞いて回るか?だが知ってる奴は大抵口封じをされるはずだ」


俺は高く跳躍し、民家の屋根に飛び移る。

バレないように能力を使って姿を消すか。


「【ライトキネシス】」


俺の持つ超能力の一つで、周りを光で照らすだけではなく、光学迷彩のように姿を消すことができる。


魔力のない俺にはありがたい超能力だ。


「さて、探すか」


屋根から屋根へ飛び移りながら、探索を続ける。

その時、ある念話テレパスを聞く。


『グレゴスを発見、追跡する』

「ん?」


声的に少年。しかも標的グレゴスを追跡している?この街に奴を倒そうと行動する輩がいるのか?念話の発信源を追ってみるか。


俺は念話を途絶えさせないように追跡する。

此処から8m。割と近いな。


再び屋根から屋根へ飛び移る。

発信源を探して数分、強い力を感知した。あちらも追われてるのに気づいたのか、こちらに近づいてくる。


だがここは屋根の上。そして姿が見えない状態だ。

しかし気づくのが早いな……。


『念話を聞いてる奴。何処の誰かは知らないが、邪魔をするなら容赦はしないぞ』


成程、傍受したとたんに襲い掛かるタイプの奴か。暗殺任務には向かないな。

丁度いい、その人物がどんな奴なのか顔を拝めてやるか。

念話に応答し、話を進める。


『まぁ落ち着け。ここでは何だ、路地裏で合流しようじゃないか』

『……良いだろう』


交渉成立だ。後は集まるだけだ。

路地裏に降り、透明化を解除する。


「さて、お前さんは何者かな?」

「……」


後ろに振り向くと金髪ロングで翡翠眼の一八歳位の少年が視界に映る。

ローブで服装を隠してあるが、なんとなくわかった。此奴、同業者だな?


「俺の名は白皇陸也、追放世界のレクス公国から来た抹殺屋だ」

「…追放世界、カラヴァ法国の抹殺屋。ギラルだ」


ギラル。俺のいる国とは違う国の抹殺屋の一人、「カラヴァの聖蛇」とも呼ばれた若手の仕事人だ。


「カラヴァの聖蛇に会えるとは光栄だ」

「オレもだ。白き邪神」


互いに睨み合う、生憎俺は剣を抜かない。無駄な戦闘は極力避けたいからな。

ギラルも剣を抜かず、こちらを見る。


蛇と邪神の睨み合い、随分とレベルの低い戦いだ。

途中でレクス様に連絡を入れ、対応を求めた。


『どうします?』

『同業者で異国出身者か……ふむ』

『俺なら共同作業を希望しますが……』

『その方が無難だね』


念話を切り、再び会話に戻る。

相手も同じ答えだったら尚更良いが……。


「さっき主に念話をしたが、共同で作業をしてくれという事だ」

「それはこちらも同じだ。今は獲物を取り合ってる暇はないというご判断がなされた」


「「……」」


ビンゴ。相手も同じ考えをしていたなら都合がいい。


「改めてよろしく頼むぞ」

「こちらこそ」


互いに握手し、共に標的を倒す事を決め、情報を交換する。




「っという訳だ」

「村の近くに盗賊か……恐らくグレゴスの手駒だろう」

「済まんな。尋問する前に殺してしまったから……」


ギラルは「問題ない」と言って許す。


「良くブレラ村が対象にされてる事に気づけたな」

「それなりに情報網が良くてな。ここに来るまでは苦労はしなかった」


と言ってもグレゴスの足取りを追ってここに来ただけだがな。


「さて、さっきまで奴を追ってたんだろ?どこに逃げたんだ?」

「奴の屋敷だ。聖職者の割には豪華な場所にいる」


そこまで情報を持ってるのか。他にはないか?


「奴は一週間、この街に居て、次にまたブレラ村に行っては生贄を探すんだ」

「悪魔教団の団長自ら生贄探しの行動とは律儀だな」


しかし、標的が悪魔教団の団長か……まぁそれなら狙われても無理はないか。

となると一つ疑問が残るな。


ギラルが説明してくれた内容によると、グレゴスは悪魔教団の設立者で団長。崇めている神は「ザルメル」という悪魔の王様らしい。表は聖職者の姿らしく、その裏は悪魔を崇める魔神使いデーモンルーラーだとか。


あちこちの村から子供を攫い、生贄にすることで復活を短縮でき、即座に降臨できる術を手に入れてるらしい。どこでその情報を手に入れたのやら……。


「ふむ、後は奴の屋敷に忍び込むしかないな」


その言葉を聞いたギラルは「へ?」と言って肩を下ろす。


「お前……正気か!?」

「何も正気だ。それに攫われた子供達はまだ生贄にされていない可能性がある」

「だ、だが!どうやって忍び込む!?あの屋敷は数十人の衛兵が配備されてるんだぞ!?」


そう焦るなよギラル。何も無謀な作戦はしないさ。


「そのことは俺に任せろ。それなりに良い作戦があるし、上手くいけば標的を抹殺できる」

「本当か?」

「ああ、嘘はつかない。仮に失敗したとしても奴らは俺達に対して追求できない」


それに……の儀式は止めなくちゃな。

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