第3話 標的を捜せ

しばらくして、俺はラミルの案内でブレラ村に到着する。

村の周りは柵などで囲われ、魔物が入り辛くする対策はされているようだった。



出入り口を抜け、周りを見る。奥の方に教会が見え、果樹園らしき建物も確認できた。成程、聖職者がいる所に異教徒ありか。


手っ取り早く教会の人間に話を聞いた方が早いな。


「リクヤさん。どうしたの?」

「あ、いやなんでもない。どうしたんだ?」

「助けたお礼をしようかと」


お礼ね……別に見返りが欲しくて助けたわけじゃないんだが……。


※憂さ晴らしで暴れただけ。


「……」


ラミルに腕を引っ張られ、一民家に移動させられる。

きちんとした木造建築の家、この民家の住人のものであろう左の畑をチラ見すると、植物の元気のなさが見えた。肥料がないのか?


ラミルが木製の扉を叩き、言う。


「お母さん。帰ったよー!」


突然扉がバーン!と開かれ、中からピンク髪の女性がラミルに飛びつき、抱き着く。


「おかえり!ラミィ!」

「お母さん、大げさだよぉ」


親バカか。悪くない光景だ。ウザくもないしな。

それほど心配してくれてる親を持ってるラミルは幸せ者だ。


「……」


畑の方に目をやる。どうもあの栄養のなさは気にかかる。

何かが影響してるんだろうか?


畑の土に近づき、触れる。


「この土、もう栄養がほとんどないぞ。大丈夫か?」


と言っても今あっちは御取込み中だしな。まぁ勝手に良くするか。うん。


「【自然復活の混沌魔王神ナチュルリバイブ・アザトース】」


触れた土に能力をかける。この能力は自然界に影響する能力だ。

人にやれば栄養失調を治すことができるが、外来コレは栄養のなくなった土や木にやるものだ。まぁ人間も自然の一部だから効くには効くんだがね。


たちまち土に栄養が流れ込み、枯れかけていた作物が元気を取り戻す。

萎れていた葉は緑を取り戻し、次々と実が生り始める。


この能力のおかげでより一層、作物の育ちが滅茶苦茶早くなったと言った方が無難か?


「すごい……畑が」

「もしかして、あなたはドルイド?」


いや、ドルイドじゃないんだが……。


「でも魔力がないって言ってたし……」


あくまで目覚めた力を応用させて有効活用してるだけだ。

まぁ派生すればこんな芸当もできる事だな。


「村に案内してくれた礼だ。それじゃあ俺はちょっと教会に用があるから」


そう言って軽く手を振った後、村の奥にある教会に行く。

正面の扉を堂々と開け、教会に入り、シスターか神父を捜す。


しかし、辺りを捜してもいない。

やはり堂々と入るのは間違いだっただろうか?


中央から天井にあるステンドグラスを見る。美女が壺から水を出す姿が描かれているな。随分とおしゃれ好きな教会だ事。


その時だった。


「おや、参拝者の方ですか?」

「!」


奥から神父が出てきて接客をしてくれた。これでようやく標的探しに進展が出る。


「すいません。人を探しているのですが……」


ここは大人っぽく敬語で話そう。そうした方が無難だ。


「ほう……人探しですか」

「ええ……グレゴスという男を探してるんです。お見かけになられてないでしょうか?」


神父は少し考える。数分考えた後、言う。


「グレゴスさんは三日前、この村を出ました。北へ向かうと言ってらしてので恐らく、「ヒルネイス」に向かったと思われます」

「ヒルネイス?」

「この村から北に向かったところにある街です。あそこを拠点にしてると聞きました」


標的ターゲットは移動したのか……。

まぁ相手も人間だ。同じ場所にいるとは限らない。少々面倒くさい輩でもあるが、どこまで戦略が練られてるか試す価値はありそうだな。


「そうですか。ありがとうございます」

「いえいえ。全ては我が主の導きのままです」


それは随分とご都合主義な神様だな。

さて、標的は街に逃げたか。

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