第2話 異世界へ渡れ
レクス城内部のオフィス。
此処では任務を与えたり、業務をしたりなどと俗にいう指令室だ。
俺は仕事に行く時は必ずもここに来る。
そして目の前にいる少年みたいな人は俺の上司「レクス・マキナ=プロトコル」。
一応古代神様で、この国を治めている主でもあるらしい。
古代の神様が現世に君臨してていいのかよ、と思う奴らは多いだろうな。
安心しろ、俺も最初はそう思った。
「それで、俺を呼ぶとなると重大な事でしょうか?」
「ああ、実は世界№1300番の異世界で異常事態が発生したんだ。しかも危険度色は「紫」だよ」
紫の異常事態か……偉人が歴史を壊そうとする場合、必ず発生する異常事態だ。
歴史そのものに干渉してしまい、最悪の場合は異世界転移の勇者を呼ばざる得ない状況を作り出す絶ちの悪い事態だ。
勿論、此処にも影響は出る。世界のターミナルの安定性が悪化し、最悪一つの世界がお釈迦になる。
無論、与えられる任務は……。
「急遽、君に任務を与える。異世界№1300番「レジニスタ」に向かい、歴史を壊そうとする人物を抹殺してきたまえ。野放しにすれば何をしてくるか分からない。頼んだよ」
ですよね……。まぁ仕方ないよな。
「了解。装備を整えて行ってきます」
「異世界ゲートはこちらで用意した。早く始末できる事を祈ってるよ」
しかし、久し振りの紫の異常発生だ。相手が手練れという可能性があるな。
入隊歓迎会を台無しにされたんだ。憂さ晴らしの生贄になってもらおう。
オフィスを出て、一度自宅に転移する。
装備を整え、家を出る。ここまでは5分。
再びレクス城まで転移し、用意されたゲートのある部屋に行く。
ここまでは8分。合計13分までに準備を済ませ、任務へと向かうのであった。
*
しばらくして異世界。
「ここがレジニスタか……随分と幻想的だな」
レジニスタに着いた俺は、先ずは辺りを見渡す。
ゲートを通って、出てきた場所は森と平原が見える高台のようだ。
森の方では小さい光の粒があちこちを飛び回り、平原の方では人らしき影が弱い魔物と交戦している。僅か数分で撃破されて剥ぎ取りを行ってる。
どうやらこの世界はまだ平和だな。
さて、来たのは良いが……問題は
『こちら陸也、レジニスタに到着した。指示を頼む』
『レクスだ。分かったよ』
レクス様はこほんと言った後、目標の人物の説明をする。
抹殺対象はこの世界に暗黒の時代を迎えさせようと企む異教徒の「グレゴス」という男を抹殺する事。
最後に確認されたのは、此処から東に離れた「ブレラ」という村らしい。
先ずはそこから情報を収集するか。
『以上が僕が知っている情報だ』
『まずはその村に行ってみよう。それから行動開始だな』
『ごめんね、入隊者の歓迎会は代わりに僕が出るから、君は任務に集中してくれ』
あ、この
『どうしてくれるんですか?また俺だけハブられてるんですが?』
『ははは……ごめんなさい。他に手が空いてるのは君だけなんだ。許してくれ』
『全く……ちゃんと入隊者の面倒を頼みましたよ』
『そこは問題ないよ。行ってきたまえ。モグモグ』
早速料理を食ってやがるよ……むしろ不安しかねぇ…。
『はぁ……切りますね』
念話でため息を吐くのはどうかと思うが、レクス様は昔からあの性格だ。
無邪気な子供もいいところだよ畜生。早く任務を終わらせよう。
「よっしゃ!」
高台から飛び降りる。持ち前の身体能力で移動を始め、平原を駆ける。
そんな時だった。
「きゃあああ!」
近くで叫び声が聞こえ、立ち止まる。此処から西の方、丁度森の入り口だ。
叫び声が聞こえた方に走り寄る。
そこには13歳くらいの女の子が暴漢に襲われてる。いやファンタジーだから盗賊か?
「へへへ……安心しなよお嬢さん。悪いようにはしねぇ」
「どうしやす?兄貴?」
「決まってるだろ?あれをやるんだよ」
「あれですね、へへへっ…」
相手は4人。女の子に寄って集るとは良い度胸だ。丁度いい。まずは人助けからやるか、どこかの王道作品の主人公っぽくな。
駆け寄り、一番前にいる盗賊の顔面に右ストレートの拳をぶつける。
「ぐほあ!」
殴られた盗賊の男は横一直線に吹っ飛んでいき、一本の木にぶち当たる。当たった衝撃で木も折れ、殴られた盗賊は一瞬自分に何が起きたかもわからずに気絶する。
「何だ!?」
「てめぇなにもんだ!」
「オレ達を誰だと思ってるんだ!」
「知らん。か弱い女の子に手を上げる輩共に名乗るタチじゃないんでな。面倒だから纏めてかかってこい」
指をポキポキと鳴らし、拳を構える。
盗賊達は短剣と鉄の長剣を鞘から抜き、構えた。
「舐めんなよコラァ!」
最初に襲い掛かった盗賊は長剣を持った奴。剣を振り上げようとした時、俺は小声で能力を行使する。
「【
俺の拳に黒いオーラが纏われ、瞬時に手刀で横に振る。
「あー?何だその攻…」
手刀による攻撃が一人目の盗賊の身体を両断する。
「は…あ?」
【
「呆気ないな」
地面に落ちた盗賊の上半身を見つめ、頭を足で潰す。
「何だ
「次は誰だ?」
手に付いた血をふき取り、構え直す。
それと同じくして二人同時に俺に襲い掛かった。
剣は振り下ろされ、短剣の刺突が来る。
「遅いな」
俺は剣を右手で受け止め、刃を折る。その後に腹に拳を一発入れる。
次に向かってきた短剣を持つ盗賊の刺突を躱し、頭を左手で掴んで能力で握りつぶす。
たちまち辺りは血の海になり、残ったのは怯えている女の子だけになった。
脅威が去った後、能力を解除し女の子に手を差し伸べる。
「怪我はないか?」
「あ…ありがとう。お兄ちゃん」
外傷は足ぐらいで特に服が破れてたりしてないな。
「待ってろ、今回復させる。【
見えない何かが足の傷を癒す。傷跡が消え、綺麗で華奢な足に戻った。
「か…回復まで出来るんだ……」
女の子はにっこりと笑い、抱き着いてくる。
なかなか可愛いものだな。おっと、目的を忘れるところだった。
「道を聞いて済まない。ブレラという村を目指してるんだが、どこにあるか知らないか?」
「あ、あたしの家がある村だよ!」
「そうか。案内を頼めるかい?」
「うん。任せて!」
よし、案内人ゲット。幸先が良いな。
「ところでお嬢さん、名は?」
「ラミルです。よろしくねお兄ちゃん」
「ははは……俺は陸也だ。よろしくなラミル」
「変わった名前だね」
そ……そうか?
この後、俺とラミルは雑談しながらブレラ村を目指すのであった。
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