異界の抹殺屋
ヒラン
チュートリアル
第1話 休日から仕事へ
ある
その中で逃げ回っている一人の司祭は息を上げながら走っていた。後ろからは返り血を浴びた白髪の青年が追跡してきている。
周りには分厚い鎧を纏った騎士が白髪の青年へと剣を抜き、攻撃を仕掛ける。
白髪の青年はハンマーを抜き、騎士の攻撃を往なし、隙を見せたとたんに頭部を殴りつける。
殴られたものは、破裂したかのように砕け散り、血だまりだけが残った。
「は…早くあの男を殺せ!」
指示を出し、歩兵という聖堂騎士を進軍させる。
だが、進んでった聖堂騎士の断末魔が聖堂内に響き渡った。
手駒を失った司祭が出口の扉に手をかけようとする時、白髪の青年はハンマーをしまい、長刀を鞘から抜く。そして出口の扉が開かれる直前、一閃が走る。
「し……白き邪神め…」
外に出る前に司祭の胴体は左斜めに切断され、聖なる場所に血飛沫が飛んだ。
「任務完了だ」
この青年に対し様々な権力者たちは、二つ名を付けていた。
あるものは「化け物」。
あるものは「殺戮者」。
あるものは「地獄からの使い」。
あるものは「魔王」、「邪神」。
あまりにも酷い二つ名を言われ続け、最終的に「白き邪神」呼ばれるようになった。
あれから3年。それとは別の世界。
ここはどこかの星ではない、次元時空の最果てにある世界。
偉大なる神に捨てられた、破れてしまった多くの大小ある異世界の欠片が合併して出来上がった秘密の世界。そして唯一、あらゆる世界に繋がるターミナルの役目を持つ世界でもある。
ある条件を満たした者のみ、入ることができる禁断の聖域。
追放世界――――
そこにある巨大国家、レクス公国。
その中心に位置する錬金術師の街「アルヴァニス」に一人の青年がいた。
*
アルヴァニスの木造民家。
埃も被っていないベッドに俺は横になっていた。
「あー……3年前の任務は少しハードだったな。司祭を抹殺するにも聖堂にいる騎士団を半壊させたのは誤算だった。次はもう少し考えて行動しないとな」
俺の名は
罪状は「国家反逆罪」。自分の故郷にいるクソのような政治家に怒りを覚えた俺は国家会議の場所に火炎瓶を十個くらいぶん投げた極悪人でもある。
無論、死罪は確定(元より弁護士を求めてないし、弁護人はいない)。
最期の日になるまで、面会や人前には出ない事を決め、ずっと独房にいる時にこの世界に来た。
まぁ過去はここらでやめにしておいて、だ。
今の俺は待機命令を下され、次の任務まで実質休暇のような感じになった。
休暇の俺のルーチンワークは武器屋に行ってハンマーと刀の整備、訓練所に行って教官の代役をするのが休暇の日常だ。後は飲食店に行っては帰って寝るくらいしかない。
「……やってる事が普通じゃないな。とんだサイコパスだよ、俺……」
この世界に住んでもう何億年は経ってる。え?それならもう
それは違うな。この世界に来た人間は歳を取らず、死事態がなくなるんだ。要は不老不死だな。原因はこの世界を治めている神様の力の影響らしいがね。
この能力に関しては全くもって不安がない。まぁ確かに永く行き過ぎると精神的に異常が生じる訳だが、長年の訓練の成果で屈強に保ってるわけ。
「さて、今日は新人達の入隊歓迎会があるからな。そろそろ行くか」
ベッドから起き上がり、身支度を始める。適度な栄養を取り、服装を整えて廊下を歩く。
その途中だった。
『陸也君、今自宅かい?』
突然、頭の中に少年のような声が響く。この能力は
『はい。御用件は?』
『急用が入った。直ちに僕の城に来てくれ』
『了解』
急用か。何か不味い事が起きたか?
何がともあれ、行かねば。
「……今日、入隊歓迎会だったのに…空気を読まない上司だ」
少し愚痴を吐きながら扉を開け、仕事場に向かう。
途中で街道に出て、街の人に声をかける。
「おはよう」
「おはようございます。旦那」
「旦那と言うのをやめろとあれだけ忠告したんだが?」
俺を旦那と呼ぶ男は俺の同僚、マギルだ。現在は引退して街の飲食店で支配人をやっている。昔、俺と共に仕事をやって負傷した事故が遭ってな。それが原因で引退したんだ。今でも信頼を得ているが、果たしてこれがいつまで続くんやら……。
「それで、今日はどういたんですかい?」
「急用で仕事が入った。今日は入隊歓迎会があるというのに…全く」
マギルは軽く笑い、「そりゃあ散々な事で」と言って煽る。
ムカついたりはしない。事実だしな。
「これは給料アップを訴えなくてはな」
「さすが旦那、怖ぇです」
だから旦那と言うな。
そう言う雑談を喋った後、仕事場へと足を進ませるが、途中で道が土砂崩れの影響で無くなってることに気づく。
「仕方ないな。【
この世界では魔法と超能力が存在する。俺は無魔法だから魔力がない。
その代わりに超能力が使用でき、転移まで出来るという何とも便利なものだ。
転移を続けて数分、大きな城の目の前に到着する。
ここはレクス城。俺の上司がいる場所で、いわば此処が会社みたいなもんだ。
「さて、俺を呼ぶほどの急用を聞こうじゃないか」
木製の大きな城門扉を開け、城内に入る。
相変わらずメイドや執事がわんさかと掃除やら食事の用意をしている姿を見る。
やれやれ、あんな職に就かなくてよかったよ。
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