1(事件編)

 開け放した窓から吹き込んでくる風は、いつの間にか随分と涼やかなものになっていた。

 いつになったら夏は終わるんだとぼやいていたのが昨日のことのようだけれど、秋は暦の上だけでなく、確実にすぐそこまで来ているらしい。

「秋来ぬと目にはさやかに見えねども……なんてね」

 柄でもない、と自嘲気味にぼやき、ため息をつく。

 そう、柄じゃない。僕が風流なんて言葉から、イスカンダルくらい遥か遠くに位置していることは重々承知している。それでもこんな詩を呟いてしまうのは……

「カノン! あんたいつまでそうやってサボってるつもりなのよ!」

 つまりは簡単な話、ここでもう少しダラーッとしていたかったのだ。

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