第19話
「尾張藩徒士組である。
幕府に成り代わりお前達を捕縛する。
手向かう者は容赦なく斬り捨てる。
神妙にいたせ」
上野のある博徒一家に、元浪人で編制された徒士組が取り締まりに入った。
「尾張藩馬廻りである。
幕府に成り代わりお前達を捕縛する。
手向かう者は容赦なく斬り捨てる。
神妙にいたせ」
甲府にある博徒一家に、尾張藩譜代で編制された馬廻り組が取り締まりに入った。
「浜田藩馬廻りである。
幕府に成り代わりお前達を捕縛する。
手向かう者は容赦なく斬り捨てる。
神妙にいたせ」
武蔵にある博徒一家に、浜田藩譜代で編制された馬廻り組が取り締まりに入った。
関八州にある全ての博徒一家に、徳川慶恕の息のかかった藩兵が派遣され、幕府の官吏に成り代わって捕縛しようとした。
捕縛した博徒は、気性と能力に合わせて、時に尾張家の武家奉公人に採用され、中間や小者、下男として召し抱えられた。
大抵の博徒は蝦夷流しの刑に処され、蝦夷地開拓の労働力にされた。
人殺し経験の多い博徒を武家奉公人として召し抱え、時に郷士に昇格させ、時に士分の若党に昇格させ、実戦闘力の高い部隊編成ができた。
なによりも大きかったのが、二百有余年太平に慣れた武士に、実際の戦い、人殺しを経験させられた事だった。
尾張徳川家の家臣団。
浜田藩越智松平家の家臣団。
松江藩越前松平家の家臣団。
津山藩越前松平家分家の家臣団。
母里藩越前松平家分家の家臣団。
高須藩尾張松平家分家の家臣団。
広瀬藩直政系越前松平家の家臣団。
三上藩遠藤家の家臣団。
彦根藩井伊家の家臣団。
与板藩井伊家の家臣団。
福山藩阿部家の家臣団。
幕府番方、小普請、小普請組の実戦訓練投入。
軽輩から家老の家格の者まで、全員を最前線で博徒相手に戦わせた。
そして胆力・戦闘力・指揮能力を証明させられた。
普段どれほど大言壮語していようとも、実際に命賭けた実戦での能力を、厳格に証明させられた。
無能卑怯が露見した者は、祖先がどれほど功臣であろうと、厳しい処分が下され、最悪改易や召し放ちが言い渡された。
だが実際には、実戦で能力を示した者を養嗣子や婿養子に迎えることで、半知召し上げ処分に止められた。
ついには将軍・徳川家慶の命令で、幕府番方、小普請、小普請組の旗本御家人が実戦訓練に投入された。
徳川慶恕以下の高須兄弟が、先に実戦で能力を確かめた藩兵が目付にされ、幕臣(旗本御家人)の能力が厳格に査定され、高須兄弟が藩主を務める藩の家臣団同様、無能卑怯が露見した者は、祖先がどれほど功臣であろうと、厳しい処分が下され、最悪改易や召し放ちが言い渡された。
だが実際には、これも高須兄弟が藩主を務める藩の家臣団同様、実戦で能力を示した者を養嗣子や婿養子に迎えることで、半知召し上げ処分に止められた。
関八州の博徒が、全て召し捕えられるか故郷を売って逃げるかして、実戦経験の場がなくなると、徳川慶恕は日本全土で博徒狩りを断行し、幕府と尾張徳川家の威信を示し、諸藩を畏怖させた。
そして蝦夷地開拓の労働力を確保した。
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