第7話

「中務大輔、大膳大夫、修理大夫、整三郎、鎮三郎。

 お前達の決意に変わりはないのだな。

 生涯大納言を支えていくと、この場で誓紙血判できるのだな!」


「「「「「お約束いたします」」」」」


「全ての手柄を大納言のものとし、蝦夷地貿易の利益の半分を幕府に上納するというのだな」


「「「「「お約束いたします」」」」」


 将軍徳川家慶との謁見がかなった高須松平家の兄弟は、一切の迷いなく答えた。

 源之助は兄弟仲良く国難にあたろうと考え、弟達の教育にも力を入れ、水戸徳川家の血ではなく、尾張徳川家の分家として、将軍家に忠誠を誓っていた。

 自分達の功績を、全て徳川家祥の手柄にすると宣言していた。

 蝦夷地貿易で得られる利益も、半分を幕府に上納し、半分を国防に当てると建白書に書いて宣言していた。


 赤蝦夷風説考と海国兵談を参考にした建白書は、徳川家慶にも危機感を持たせ、蝦夷地を再び松前藩から召し上げる事を考えさせた。

 既に松前藩は一度蝦夷地を召し上げられ、陸奥国伊達郡梁川に九千石に転封されているのだ。

 今度は北方警備の懈怠を理由に蝦夷地を召し上げればいい。

 

 それに、水野忠邦が天保の改革の総仕上げと考えている、大名旗本に江戸・大坂十里四方を召し上げて代地を与える上知令よりは、はるかに実現の可能性が高く、幕府財政の改善にも役立つと、徳川家慶も考えた。


 健康の優れない徳川家祥が将軍を継ぐのなら、家祥が信頼している者は欠かせないが、尾張徳川家を継いだ弟・徳川斉荘は全く当てにできない。

 斉荘は苦労知らずの遊興好きで、尾張徳川家の財政を悪化させていた。

 徳川家慶も弟の恥を表にださないように、度々内密に叱責しているが、全く改めようとしない。

 裏千家に入門して、十一代千宗室から奥儀を授けられるほど、藩政よりも茶道にかまけている。

 徳川家慶は斉荘の強制隠居も考えた。


「高須松平家の密貿易額」

品目 :取引銀高 :輸出斤数:斤高樽高

昆布 :53,126・4匁:159060 :3分3厘4毛から2分1厘5毛

煎海鼠:90,586・4匁:280201・3 :3匁2分3厘2毛

醤油 :40匁   :4樽   :10匁

酒  :275匁   :5樽  :25匁

干貝 :72    :108斤  :6分5厘

干鮑 :5,688匁  :21040  :2匁7分8厘8毛から3匁5分7厘9毛

鱶鰭 :1,680匁  :840   :2匁から2匁3分4厘1毛

鯣  :2,184匁  :1680  :1匁3分

いりこ:207897匁 :6146斤 :3匁3分8厘1毛

鶏冠草:6,300匁  :6000  :1匁5分

小間物:690匁  :5樽

狐皮 :5353匁  :460枚  :1匁6分3厘9毛

計:金換算で約5752両

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