第33話 ただの忍者は大ピンチ
多田野が取り出した白いチケット。それは、くしゃくしゃで泥だらけだった。
「そっ、それは!」
「こんなに汚して。さては偽装したわね!」
「そんなことはしてないでござる。エロじいちゃんを助けるとき汚れたでござる」
多田野はカホウとルチアの急変した理由が分からないからか、大慌てした。イイキミだ! それにしても、2人の豹変振りは見事だった。鬼気迫る表情に、俺だって恐怖を覚えたよ。ルチアが落ち着きを取り戻して言った。
「いいわ。全てはこのピッと君2.1が決めることよ!」
ピッと君2.1の両眼が、不気味な光を宿した。多田野は要領良くピッと君2.1の使い方を理解したのか、直ぐにQRコードを翳した。
ピッ!
まだおこ顔のカホウは画面に注目している。画面が切り替わった瞬間に、大声を出した。
「エラーよ! 直ちに追い出しなさい!」
すると、今までどこにいたのか分からないが、10人を超す屈強そうな兵士たちが現れた。兵士たちは多田野を追い出そうと、盾で多田野を押し込んでいった。そのときに多田野の手からチケットがひらりと舞い、あいくる椎名の足元に落ちた。あいくる椎名はすかさずそれを拾い上げた。もしあいくる椎名がチケットを拾っていなかったら、チケットは兵士たちに踏ん付けられていたことだろう。
「なっ、何だよ! 一体どうしたっていうの?」
多田野は必死に抵抗しながらも、ござる言葉を忘れるほどには混乱していた。そして、多勢に無勢では勝ち目がなく、ジリジリと後退していった。もう少しで、左脚が部屋の外へ出てしまう。
「たっ、助けてくれーっ。俺は忍者になりたいだけなんだーっ!」
多田野が悲鳴を上げた。俺が助けようにも、俺の戦闘力ではどうにもなりそうにない。どうしよう。俺は考え、あることを思いついた。
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