第31話 あいくる椎名の能力!

 あいくる椎名の能力は相当に高い。けど、単独で戦闘するのはムリみたい。理由は2つ。1つ目は奴隷は単独で戦闘ができないこと。そして2つ目は、あいくる椎名の能力の項目は、俺とは違い戦闘に役立たないものばかりだということ。


「炊事・掃除・洗濯・品格。それから、交渉に言語に遂行に活用」

「戦闘に役立つものは、皆無ね……。」

「主人を陰ながらお助けする者の能力って感じ……。」


 ルチアやカホウの言うように、その項目はメイドとしての能力の高さを示している。


 そういえば、HPと体力がどう違うんだっけ。聞きそびれてしまったけど、今更聞くのもなぁ……。そのはなしになると3人ともおかしくなるから諦めよう。

 あいくる椎名が俺に耳打ちしてきた。


「きっと、QRコードを全部黒にしたから能力値が跳ね上がっているんだよっ」


 俺も同感。だったら俺も、右半分も真黒にしておいて貰えばよかったよ。あいくる椎名は、くるりと向きを変え、カホウとルチアに興奮気味に聞いた。


「ねぇねぇ! 炊事が高いってことは、お寿司握れるかなぁ⁉︎」

「それは、ユニークスキル『にぎにぎ』があるから、できますね!」

「ほらね! この国にも回転寿司はあるのよ! きっと……。」


 ルチアは冷静みたい。カホウも良い意味でキャピキャピしている。

 他にも、あいくる椎名にはいくつかのユニークスキルがある。『2人乗り自転車』は瞬間移動ができるし、『一緒にちゃぷちゃぷ』はある条件下で俺の気力をアップさせる。その条件が昼の戦闘時に満たされることはまずないらしい。どんな条件なんだろう。ルチアもカホウも教えてくれないから、余計に気になる。

 けど、生活する上でかなり便利なユニークスキルが揃っている。あいくる椎名が俺の奴隷で、本当に良かった! それに、戦闘向きのユニークスキルだってちゃんとあった。


「この『オムライスを作ったあとで!』っていうのはー?」

「それは、昼の戦闘時に混乱した主人を目覚めさせます!」

「ただし、木べらとフライパンを装備しておく必要があるわ!」


 ほらね。もし俺が混乱したとしても、あいくる椎名が目覚めさせてくれるなら安心。でも、そのためには木べらとフライパンをどこかで手に入れないといけない。俺の所持金は、今のところ0。ま、そのうちってところだな。あいくる椎名の質問は続いた。


「あれ? この『すりすり』っていうのは?」

「そっ、それは……夜の戦闘に役立つ、ユニークスキル……です……。」

「しゅ、主人の……HPを、大きく上昇させることが……できる……のよ!」


「あわわわわっ、じゃあこの『ほっぺ2中』は……。」

「それも……夜の……戦闘用……です……。」

「JCコスを装備すると、主人のHPを上げられるのよ……。」

「それ凄い! 俺も夜の戦闘で……。」


(パチンッ! パチンッ! パチンッ!)


 また3人とも顔を真っ赤に染めていた。それに気付いたときには俺の右頬もすっかり赤く色付いていた。夜の戦闘って、一体何なんだろう。

 カホウとルチアは、あいくる椎名のユニークスキルは戦闘には向かないと言うけど、夜の戦闘だったらかなり有利に進められると思う。けど3人とも、HPと夜の戦闘、夜の勇者のはなしをすると、何故か顔を真っ赤にしたうえで凶暴化するんだよな。何をそんなに恥ずかしがっているんだろう。とりあえず、ここは触らぬ神に祟りなし!

 あいくる椎名のユニークスキルは、もう1つあった。それには、俺の顔も真っ赤になってしまった。俺は思わずそれを口走った。


「おっ、『おはようキッス』って……。」

「そっ、それも……もも、もしかして……。」


 あいくる椎名は、狼狽えながら右手を大きく振りかぶった。けど、ルチアとカホウは冷静。


「いいえ……でもそれは、あまりにも危険なユニークスキルです……。」

「非戦闘時、生者を死に至らしめ、死者を生き返らせるといわれているわ……。」


 そんなユニークスキルがあるなんて! でも、それだけ強力なユニークスキルなら、何か副作用があるのかもしれない。だからこそ危険といわれるんだろうな。

 この国は、俺が思っているよりも死というものが身近なのかもしれない。あんまり浮かれてると、直ぐにやられてしまいそうだ。そうならないよう、気を引き締めて暮らそう。あいくる椎名の生活ユニークスキルだけでもありがたく思わないとね!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る