第24話 A案とB案
異世界へ行きたいと言って俺についてきたあいくる椎名。きっと異世界でこういう生活を送りたいという願望があったはず。それがどんなものかは分からないが、少なくとも俺なんかの奴隷ではないだろう。気の毒過ぎるよ。
俺と同じように思ったのか、カホウが言った。ちょっと高慢なのがたまにキズだけど、カホウは基本、優しい。
「逆にもし、契約がなされていないなら、貴女はこの部屋からは1歩も出れないわ」
「そっ、そんなぁ……。」
あいくる椎名は、泣くこともなく、下を向いたままだった。
「イイキミって言いたいところだけど、さすがにかわいそうね」
「何か、方法はないの?」
俺はカホウに縋りついた。カホウは顔を火照らせながら、AB2つの案を提示した。
「A案は、この場で2人が愛を誓いあい対等なパートナーになること!」
そのためには、ルチアが用意してくれたマットレスを使って、俺とあいくる椎名でいけないことをしないといけないんだって。それは、ハードルが高いよ。あいくる椎名は満更でもなさそうだけど。
「B案は、正式に奴隷となる手続きを進めること!」
そうすれば、同時に発券されるから、そのあとで俺がルチアといかがわしい儀式をする必要もないらしい。それも、どうだろう。あいくる椎名が泣いても困るしなぁ! 俺には選べない。
「じゃあ、B案で!」
あいくる椎名は、俺よりも決断力がある。でも、B案で本当に良いんだろうか!
「では決まりね。早速儀式に移るわよ! 見届け人は……。」
カホウはそこから先を言い淀み、部屋の中を見まわした。そして、ちゃぶ台を取り出してからはっきりと言った。
「見届け人は、この見届け君にしてもらうわ!」
見届け人って、何だろう⁉︎ 分からないけど、見届け人がいないと契約が成立しないらしい。見届け人を務められるのは、高貴な身分の者か、高価な魔法道具だけらしい。
俺たちは、カホウの言う通りに動いた。先ずは俺があいくる椎名を抱き寄せ、あいくるしいなが俺を抱き返す。そのあと、俺があいくる椎名に3つの戒律を言い渡し、あいくる椎名がはいと返事をすればそれで終わりみたい。
戒律だなんて、他人を束縛するようで、俺の性に合わないよ。でも、俺が1時間以内に3つの戒律を言い渡さなければ、どちらも死んでしまうんだって。ここまできてそんなことを言うなんて、カホウも人が悪い。
でも、こればっかりは俺が決断しなきゃならない。あいくる椎名に少しでも自由気ままに異世界生活をおくってもらうには、どんな戒律が良いんだろう。俺は、逡巡の挙句、ある戒律を思いついて言った。
「自分のために、生きなさい!」
「はいっ!」
「なっ……。」
「しかと見届けたぞ!」
俺たちが異世界に来て1つ目の戒律の言い渡しが終わった。ちゃぶ台、いや、見届け君が喋った。そういう仕組みらしい。呆気ないものだ。
「勇者くん、優しいのね!」
「そうですね。この流れ、どう考えてもエロいこと言うでしょうに!」
「えっ?」
あいくる椎名は、俺の要求を絶対に断れない状況にある。だったら、あんなことや、こんなことを要求したって構わないってことみたい。なっ、なるほどーっ! 俺、そんなこと思いもよらなかったよ。けど、それを知ってしまった俺は、あと2つは飛び切りエロいことを戒律にしてやろうと、邪なことを考えた。これからはじまる俺の異世界性活のために! 不思議なことに、俺はぐんぐん元気になった!
「じゃあ、2つ目、行きましょうか!」
「うっ、うん。でも、なんか勇者くん、雰囲気変わったわね……。」
「それが、殿方の本性です。従者よ、受け入れなさい!」
カホウが俺を茶化して言った。何とでも言えばいい。
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