第4話 レジは混雑中

 俺が見つけた雑誌のタイトルは、『週刊 便利なチート』だった。


「なになに、この創刊号は専用バインダーが付いて半額だって!」


 まっ、まさか! お得過ぎるぞ。雑誌なのに半額だぞ、半額! 990円ってことは、ギリギリ予算内じゃないか。どうせチートは大したことないだろうけど、おまけのバインダーは欲しい! 俺は、エロ本をその雑誌に持ち替えて一目散にレジへと向かった。


 ところが、時間のない俺にとっては痛恨事。さっきまではガラガラだったレジに3人も並んでいる。まさかの行列に、俺は驚きを隠さなかった。多田野の奴がレジを通過し、これであと2人。振込みの期限まではあと10分。まぁ、何とかなるだろう。そう思っだが、甘かった。多田野のあとにレジに行った男が『シックスプレミアムおでん』を頼んでやがる!

 たまご、2個目、大根、2個目、昆布巻、もちきん、2個目、がんも、昆布巻の2個目、がんもも2個目……。くっ、まさかこんなに食うのか? 痩せてんのに! まっ、まさかカップルなのか? そうなのか! けしからん!


 そんなとき、俺の前に天使が降臨した。我が校の男子生徒の間で『あいくる椎名』の異名を持つ、笑顔があいくるしいバイトの椎名さんだ! あいくる椎名は、痩せ過ぎかよって思わず突っ込みたくなる細い腕で髪をかき揚げ、咥えていた輪ゴムでその髪を結い上げた。そのときに脇の下がまさかの丸見え! ブラ紐も顔を覗かせているけど、あれは見てもいいやつ。あいくる椎名は、結い終わったときにはちゃんとシンクの前に立っていた。何と無駄のない動きだろう。これほどまでの動き、誰であってもつい見てしまう。だが、俺は知っている。あいくる椎名は巨乳だ。全身痩せタイプのように見えて、あるところにはちゃんとある。友達に付き合ってこのコンビニに来たとき、バックヤードで寛ぐあいくる椎名がいた。休憩中だったんだ。そのときあいくる椎名が巨乳ならではのある行動をしていたのを俺は見てしまった。それは、まさかの『乳休め』だ。机の上にそっと乳を乗せて、肩への負担を和らげる。泣く子も黙る仕草だ! そんなあいくる椎名は既に手洗いを終えて、レジのピッてやるやつに自分の名札をおっぱいごと押し当てている。これでレジの反応もすこぶる良好になることだろう。間接的とはいえあいくる椎名のおっぱいに触れたんだから。そうやって俺は期待を寄せた。

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