第2話 ATMは使用中

 俺は40分ほどで『ブラザー・シックス・テン』にたどり着いた。余裕、余裕! 期限まではあと20分もある。だが、ATMは使用中。誰がかっていうと、よぼよぼのおじいちゃん。慣れない手つきでかなり慌てて操作している。そのせいか、何度もエラーを起こしているみたい。まさか、フィッシング詐欺にでもあってるんじゃないかな。俺はいてもたってもいられずはなしかけた。これも期限を守るための試練か!


「おじいちゃん、どうしたの?」

「おぉ、若いの。この番号にこの1000 円札振込みたいんじゃよ」


 そう言っているおじいちゃんが握りしめていたのはまさかの2000円札。お久し振り!


「おじいちゃん、それ……。」


 あまり説明している時間がない。俺は、急いでおじいちゃんの手から2000円札を奪い、財布の中にあった1000 円札2枚を渡した。


「なんじゃ。儂は間違えとったんかぁ」


 おじいちゃんは呑気にそう言った。ボケがはじまっているみたいだけど俺が両替してあげたことには気付いてくれた。はなしが早くて助かるよ。


「じゃあ、これでもう1度操作してくださいね!」


 そう言って俺は笑顔を見せた。


「うんうん。やってみるとしよう」


おじいさんは元気にそう言った。上手くいくと良いな。

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