第50話 復讐編 『最深部へ』


 *****


 ジャックがU・Q・アンジェリーナと出会ったころとほぼ同時刻、マモンとリーヴァイスたちの目には、通路の前に立っている女性が見えていた。


 しかも、可愛い。芸能人でもなかなかいないくらいの可愛さのその持ち主は、動きやすいカジュアルな服で、スカートの丈が短かった・・・。





 「おい。女! こんな地下で何をしている? 迷い込んだのか?」


 リーヴァイスが声をかける。



 「ええー? 誰よ? あなた達・・・。アタシは別に迷子じゃないよ?」


 女が答えた。



 「ははは。じゃあ、そこをおとなしくどいてくれるかな? お嬢さん。」


 マモンがそう尋ねる。




 「わかったよー。じゃあ、気をつけてね? お二人さん・・・。」


 「お! 素直でよろしい。」


 「ああ。じゃあ、行こうか・・・。」


 スタスタと二人が歩いていく。


 そして、二人が女性とすれ違う寸前―。




 ボワワワアアアーーーーーアアア!!!


 異常な音波とともに衝撃が二人を襲う。


 マモンとリーヴァイスの身体が弾け飛ぶように壁に叩きつけられそうになった。


 だが、二人もそれを予期していたかのように、一瞬で身体を空中でひねり、壁を蹴って、立つ。





 「十魔剣の一人・・・であるか?」


 マモンがそう言って、身体についた埃を払った。


 「まあ・・・、バレてるわね。そう・・・アタシはホンジョウ・カマナミ。十魔剣の一人。あなた達・・・あのライオンマスクの仲間ね?」


 「オレはリー・・・いや、ブレードだ。」


 「オレ様はマモン。ライオンマスク? 知らんな。」




 「ふぅーん。ライオンマスクのヤツとは仲間じゃないのかな? まあいいわ。どっちにしても・・・敵には違いないわ!!」


 「まったくそのとおりだな。」


 そして、リーヴァイスが構えた。




 リーヴァイス・ジーンズがライオンマスクのナオト・デイトからその生命チャクラを託された時、その能力は生まれた。


 『朝までふざけようワンマンショー』 生命力そのものを操るそのチカラは生きている限り、強力に発揮できる上、その生命力自体が増幅され不死身の肉体に近くなる。


 さらに生命力そのものを刃と化し、生命力の刃は防御不可の絶対切断を行う。


 反則級のチカラと言えよう。


 一度能力を発動させると、リーヴァイスの独壇場になるだろう。まさにワンマンショーを見るかのように・・・。




 すると、マモンとリーヴァイスの後方の扉が開いて、兵士が数十名駆けつけてきた!


 ドドドドドドドドドッドドドドッドドドド!!


 ザザッ!


 足並みを揃え、訓練された兵たちが部屋になだれ込み、烈をなし、一斉にマモンとリーヴァイスに向かって銃口を向けた。




 さきほどの下級兵士ではない、精鋭部隊であった。


 一ミリの乱れもなく、スキのない動きで、あっという間に取り囲んだのだ。


 マモンはだが、それを悠然と見回し、鼻をならした。


 「ふんっ! オレ様に銃など通用せん!」




 「ううーーん。そうだとしても、やっぱ不用意だったんじゃね?」


 リーヴァイスがそう言って、意識を集中させる。


 「ま、オレはいいけどね。」


 そして、生命チャクラを解き放った。





 ◇◇◇◇



 カリャ・ヘンニャは仕事にはこだわりがあり、何をおいても遂行するというストイックさがある。




 カリャはお金には異常なまでに執着している変人である。


 この世の価値のすべてはお金である、とそう断言してはばからないのである。


 ゆえに、お金で簡単に裏切ることもあるのだ。


 十魔剣のお頭、シシオウはそんなカリャの性格を理解しており、報酬は惜しまないし、裏切りを仕掛けてきた相手の情報をも買うことをカリャに約束していた。




 よって、相当のマネーが動かない限り、カリャがシシオウを裏切ることはないのであった。


 カリャはシシオウの依頼を受け、このシンジュクアンダーグラウンドで守備についていた。



 ****





 数刻前、シシオウの間で、シシオウはカリャに指示を出していた。



 「カリャ・・・。ここは誰も通すなよ? 報酬ははずむぜ?」


 「了解した。仕事は完遂する・・・で、敵の生死は問わない・・・デッド・オア・アライブでいいんだな?」


 カリャはそう言って、舌なめずりをした。



 「ああ。もちろんだ。」


 「ふふふ。楽しめそうだな。」




 カリャは影と光の間に自らの肉体を忍ばせ、その場から消え失せてしまった―。



 ****



 アカリンが幻覚領域を広げながら、サーシャと前に進んでいく。


 前には明るい部屋があり、そこには誰もいなかった。



 「誰もいない・・・?」


 「うぅ~ん・・・。なんだか異様な気配がするのは気のせいなのら?」


 「サゴジョウ・・・。君もそう感じる?」


 「なのらねー。ウィッチ。」




 だが、気配はすれども姿は見えず―。


 「なにかの罠かも・・・。」


 「じゃあ、あたしの『蒼く眠る水の星』の水流ですべてを押し流しちゃう?」


 「そうね・・・。もう、わたしたちの侵入はバレてるでしょうし、やっちゃえ!」


 「了解なのらー!」


 サーシャがそう言って、チャクラを集中させた。




 ゴォオオオオッドップァアアァアアアーーーーン!!


 ザザザアザザザザザアザザザザザザッーーーッ!


 ものすごい水流が通路を埋め尽くし、一気に前方の部屋へ押し寄せていく。


 巨大な津波がいきなりこの地下通路に出現したのだ。


 置いてあった調度品や家具、戸棚、イスなどが一切合切、流されていく―。





 「どうなのら!」


 サーシャが誇らしげに立ち、アカリンに向かって微笑んだ。


 「さっすがねぇ。この中でさすがに耐えられる者はいないでしょうね。」


 「じゃ、行くのら!」




 サーシャがそう言って前に進んだ瞬間!


 ズババッ!


 サーシャの身体が斬り裂かれ・・・。


 血が吹き出した。




 「な・・・!? どこ・・・に・・・?」


 サーシャはその疑問を思い浮かべながら、意識が消えていく。


 サーシャがスローモーションのように倒れていくその隣に、黒装束の男が無表情で立っていた。



 「サゴジョーーーーッ!!」



 アカリンは思わず叫んだのだった。




~続く~

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