第49話 復讐編 『U・Q・アンジェリーナ』
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兵士が駐屯所の扉を開け、銃を構えながら部屋の中へ侵入した。
「む!? これは・・・!? ぜ・・・全滅か?」
「そのようですね・・・。シシオウ様はなんと?」
「うむ。我らでは到底、勝ち目はないゆえ、その場で待機・・・負傷した兵の治療に当たれ・・・だそうだ。」
「マジかー! よかったぁ。この状況で、行けって言われてもな、死ににいくようなもんだぜ。」
「ああ。まったくだ。」
下級の兵士どもに忠誠心などあるはずもなかった。
そして、兵士たちは、倒れている兵の治療に当たるのだった―。
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一方、一人で見張りに残された兵士は、急に目の前が暗くなり、なんだか奇妙な幻覚に襲われていた。
すると、何やら水の中に入ったかのような息苦しさを感じたかと思ったら、身体が水中にいるかのように動けなくなり・・・。
バチバチバチィッ!!
いきなり全身に強いショックを受け、気絶してしまった。
もちろん、アカリンの能力とサーシャの能力だ。
一言も声を出せずに、相手の意識を奪ってしまう連携は見事というほかはないだろう。
「アカリン! イエーイなのらー!」
「ええ! サーシャも! イエーイ!」
二人はハイタッチをして、倒れた兵士から鍵を奪う。
鍵を取り出し、扉に鍵を差し込むと、扉が音もなく開いた。
先の道は地下へと続いている。
外からこの地下迷宮『シンジュク・アンダーグラウンド』へ降りた時点で地下1階。
その後、三叉路を別れて進み、兵士たちが守っていたところで、さらに地下へ降りて地下2階。
そして、この地下へ降りる通路で地下3階。
アカリンたちは自分たちがどれくらい奥にやってきたかを考え、測定しながら進んでいる。
「さて、ここから先は・・・。おそらく敵の本拠地に近いわね。」
「なのらね。慎重に進んでいこう。」
「だね。ここからは能力『波の音に染まる幻』を常に発動させていくとするわ。」
「大丈夫なのら? チャクラが持つのかなのら。」
「ええ。やるしかないわ。」
「らじゃーなのら!」
そうして、二人は地下3階へと降りていく通路を進んでいくのだった―。
◇◇◇◇
アールとデスキングは、通路を進んでいた。すると前の方に倒れている人影が見えた。
「デスキング! あれに見えるのは何?」
「は!お嬢様。 おそらくは十魔剣の一人かと思われます。」
「そうね。誰かが倒したんだろうけど・・・。ふむ。動く気配はないわね。」
倒れているのは大柄な女性(?)で、着物姿だった。
「お嬢様。この者・・・肉体を砕かれているようです。意識が・・・戻ったとしても、動くことはできますまい。」
「そうか。なら・・・、今のうちにトドメを指しておきなさい!」
「え? お嬢様。ヒトの話を聞いてましたか? 意識が戻っても動けないんですよ? それでも、殺るんですか?」
「ふん! どうしたの?デスキング。危険な分子は滅しておくに越したことがないわ。それに・・・。こいつらが過去にやってきた所業を忘れたの?」
「たしかに。これは私が悪ぅございましたな。では!」
そう言うと、デスキングはその黒い闇のチャクラを発動した。
シュワシュワシュワシュワ・・・。
なんと、倒れていたウォーママ・ウースイの身体が一気に年老いて、しなしなになっていく・・・。
そして、水分が全くなくなっていくかのようにカラカラになり、まるでミイラのようになってしまった。
「チャクラ吸引・・・完了致しました!」
「じゃあ。急ぐわよ!」
「御意!お嬢様!」
そして、二人はさらにスピードを上げて通路を先に進むのだった―。
◇◇◇◇
ジャック・ジャンモードは体力を回復しつつあった。
さきほど口にした簡易食料の錠剤により、回復しているのだ。
これはジャックの能力によるもので、その驚くべき回復力のおかげであった。
だんだんと地下へ下がっていくこの通路の先に、やがて、扉が見えた。
どうやら、この扉の向こうに部屋がある様子だった。
「ふむ・・・。生命チャクラは・・・。感じないか。だが、油断は禁物だな。」
ジャックは慎重に扉を開ける。
そこはまるで『アフォファ教』の神殿のようだった。
仏像が両側に並べられ、入ってきた扉の正面(南側)と左手(東側)にさらに扉がある。
仏像が全部で十二・・・いや十三体か・・・。
ジャックはまわりを見渡しながら、仏像を数えてみた・・・が、何かおかしなことに気づく。
「おいおい! この仏像・・・やけに、リアルじゃねぇか?」
1体だけ、東側の扉の前に座してある仏像が、なんとも言えないリアルな造形なのだ。
「いやいや! こいつはっ!!」
仏像が目を開き、動き出した。
そして、立ち上がり、眼光鋭く、ジャックを睨みつけた。
「て・・・てめぇ!! 十魔剣の一人かっ!?」
「いかにも! 私は十魔剣の一人、U・Q・アンジェリーナ!」
仏像・・・と思われていたのは十魔剣の一人、U・Q・アンジェリーナだったのだ。
彼女は信仰心が厚い人間だったが、ある出来事があり信仰心を捨てたという。
「祈りは・・・決して人を救わない・・・。己を高めてくれるのみ!」
彼女は両の腕からプラズマを放つその能力は、単純かつ恐ろしい能力である。
アンジェリーナが構えをとった。まるで、鬼神のようなチャクラがほとばしっている。
どうやら、今までずっと瞑想でチャクラを高めていたのだ。
「うーん。どうも、オレ・・・。君みたいな女性はタイプじゃなさそうだよ。」
ジャックも我狼戦闘技術の構えをとる。
互いが互いを瞬間でも見逃さないように、睨み合っていた。
「オレの名は『シルバーウルフ』、冥府に行っても忘れんじゃあねぇぞ!?」
「・・・。冥府など存在しないよ。この世にこそ、地獄はあるのだから!」
「あ、そうかい。 ならばそのおまえにとっての地獄は・・・ここだっ!!」
「来なさい!」
瞬速からの抜き手!!
ジャックはその超スピードで一瞬にしてU・Qの背後に回り込んだ。
さっきまでいたジャックの位置には、まだその残像が残っていてゆらりと揺れた。
その上で背後からの抜き手だ。ジャックは初見殺しとも言えるこの技を最初から遠慮なく繰り出した。
人を食らう狼・・・まさに人狼そのもの。ジャックの能力『月と狼の誓い』がその能力を遺憾なく発揮する。
「残影・牙烈掌!!」
だが、アンジェリーナは動かない―。
バチバチバチィッ!!!
「ぐわっ!!」
なんと! 吹き飛んだのはジャックのほうだった!
後ろの扉に叩きつけられてしまったのだ。
ドッゴォオオン!
扉が振動し、何やら鐘の音のように周囲に響き渡った。
ジャックは倒れて微動だにしない・・・。意識を失ったのか?
「ライオンマスクの男はいないのか?」
アンジェリーナが何事もなかったかのようにジャックに話しかけた。
もちろん、この程度でジャックがやられるはずがないこともお見通しの上でのことだった。
ジャックは素早く立ち上がり、ニヤリと笑って言う。
「へへ。バレてたか。不用意に近づいてきたらぶん殴ってやろうと思っていたんだがな。」
「ふん。貴様の考えそうなことなど、すべてお見通しなんだよ。」
アンジェリーナがそう言い、さらにまた尋ねてきた。
「で、ライオンマスクの男はいないのか?」
「ライオンはこっちにはいないぜぇ。ここにはウルフがいるからな。」
「まあいい。倒してから聞き出すことにしよう。」
アンジェリーナがまた構えをとった。
「しかし、今の攻撃は何だったんだ? こっちは完璧にやつの背後を捉えたはずだったんだがな。」
ジャックは不思議に思いつつ、再度、構えをとって対峙したのだった―。
~続く~
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