第48話 復讐編 『復讐心と敵』
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アールとデスキングは、隠し通路を進んでいた。すると前の方に倒れている人影が見えた。
「デスキング! あれに見えるのは何?」
「は!お嬢様。 おそらくは十魔剣の兵士かと思われます。」
「では、なぜすでに倒されてるの?」
そう、兵士はすでに倒されていた。
「2名・・・あら? あっちの先にも2名・・・倒されているわね。」
「向こうの二人は何やら獣にでも襲われたかのような傷がありますね。こっちの二人は見たところ外傷はないようですが・・・なぜか全身濡れていますね。」
「そうね。これはおそらく、マモンのチームの仕事ね。」
「そのようでしょうな。」
そして、奥の通路の扉をちらりと見て、ため息をつく。
「つまり、ワタクシたちの進んできた道はどうやら回り道・・・だったようね。」
「そうですね~。かなり後塵を拝している・・・と見えますね。」
「ああーーー!! あの時、道を間違えたんだわ!!」
「まあまあ。これから追いつくしかないですね。」
二人は、特にアールは文句を言いながら、先へ続く扉を開け、進み出す。
「急ぐわよ! デスキング!」
「は!お嬢様!」
そして、二人は今まで以上のスピードで通路を先に進むのだった―。
◇◇◇◇
ミギト・・・今はミギトの姿に戻っていた―は、ジャックたちが進んでいった道を後を追って走っていた。
暗闇の道がしばらく続いたが、また部屋があった。
そこには一人の女性が倒れていた。
その髪は長い金髪、そのしなやかな体つきはセクシーな肢体だったが、今はボロボロに傷ついていた。
その装束は動きやすい薄手の布を身体に巻き付けているだけでその装束さえもボロ布と化していたため、ちょっと目のやり場に困るくらいの状態だ。
「ジャックたちが殺ったのか・・・。ん? まだ生きてる・・・のか!?」
その女性は意識は失っていたが、死んではいなかった。
どうやら、相当な死闘だったようで、倒すには倒したが、ジャックたちもその生死は確認しなかったようだ。
僕はトドメを指すべきか、迷った。
だけど、僕は孤児院のみんなのカタキ討ちはもちろん果たしたいが、無差別に殺戮をしたいわけではない。
この十魔剣のやつらはもちろん、悪人・・・だとは思う。
だけど、孤児院の事件に直接関わっていたわけではない。
「くっ・・・。どうしたんだ? ミギト・・・・。こいつらは憎き和流石建設のヤツラに雇われている悪いヤツラだぞ・・・。」
僕は無理矢理にそう思い、この女性の息の根を止めようと思ったが・・・。
そして、女性の胸を・・・先程、宮本武蔵に成り切ったときに作った木刀で狙いを定め・・・、定め・・・、って!!
む・・・胸! 胸が! ・・・あらわになってますやん!!
「うわぁ・・・。ダメだ! こんな・・・女性にこんなこと! できないっ!! つか服を着てくれ!!」
僕は本当に自分でも何やってるのかわからなかったけど、女性を抱きかかえ、自分の服を脱いで上から着せた。
ふぅ・・・。これで、やっと落ち着くな。
僕は地球のチャクラを利用して、この傷を負った女性に生命エネルギーを注ぎ込んだ。
傷口がふさがり、血が止まった。
「ふぅ・・・。これで命の危機は脱したようだな。」
「う・・・うぅ・・・う~ん・・・。」
な・・・なんだか色っぽい。
あ! 目を開いた!
「んんっ・・・? あ、あなたは?」
「あ! 気がついた? 僕はアクター。ジン・アクターだよ。」
「そう・・・ジン。あなたが・・・助けてくれたのね?」
「はい。そうです。えっと・・・。あなたの名前は?」
「私はキャサリン・・・。キャサリン・セタ・ソージーズ。助けてくれてありがと。」
そう言って、キャサリンは自分が着ている服を見て、ちらりと自分の大きな胸を見てこう言った。
「見た?」
「いえいえいえ!! 見・・・見てませんよ。」
「あら? 見られても良かったのに・・・。」
「え!? 本当に!?」
「なんて冗談。 坊やも興味がある年頃なのね。」
なんだ・・・。冗談かよ。
「この服、あなたの?」
「うん。そうだよ。あなたの・・・服がその・・・破れちゃってたからね。」
「そっか・・・。それは感謝しなきゃね。ありがと。」
「いや。こっちもそのままの格好だったら困っちゃうから・・・。」
「あはは。あなたはまだ女に慣れてないのかな?」
「え!? いや・・・まあ。と・・・ところで! あなたは・・・その・・・十魔剣の人・・・ですか?」
「ん・・・? ああ・・・。あなたもあのさっきのシルバーウルフのお仲間さんってことかしら?」
「シルバーウルフ!? ああ! じゃあ、あなたは彼と戦ったんだね。」
「そう・・・。そして・・・負けたわ。」
キャサリンがそう言って目を伏せた。
「あなた・・・。とんだお人好しね。私はあなた達の敵なのよ? その敵である私を助けるだなんて・・・。このまま・・・こうっ!!」
急にキャサリンが僕の腕を取り、僕の首に手をさらに絡め、ギュッと締め付けてきた!
「うわっ!」
僕は思わず声を漏らした。
「こんなふうにされると・・・思わなかったの?」
「うう・・・。でも・・・見過ごせなかったんだ・・・。傷ついて倒れている女性をそのままにして・・・ましてや無抵抗のところをトドメを指したりするだなんて!」
すると、締めていたキャサリンの腕のチカラが緩まり、そっと僕の首を離して、キャサリンが僕の腕を握り、もう一方の手はまだ僕の首に絡みつけながら・・・こう言った。
「バカね・・・。」
そして、キャサリンが僕に顔を近づけ・・・。
うわぁ・・・。
チュッ!
なんと! キスをされた!
「え・・・。」
そして、キャサリンはニコリと微笑み、僕にこう告げた。
「可愛い坊や。願わくは・・・その心を大切にして生きていってほしいわ・・・。」
そして、すっと僕から離れ、横の壁の方を指差した。
「ここからシシオウ様の下へ直通の隠し通路があるわ。ここを通っていくがいいわ。」
「え? 敵の僕にそんなこと教えちゃっていいんですか?」
「ふふふ。ならば、なぜあなたは敵である私の命を助けたのかしら?」
「それはあなたが傷つき弱っていたからだ。人として・・・そんなあなたを見捨てるわけにはいかないからだ。」
キャサリンは妖艶にほほえみ、答えた。
「そう・・・。私もあなたに命を助けられた。たとえシシオウ様の不利になるとしても・・・。あなたの好意に報いなければ・・・人として生きていけないからよ。」
「キャサリンさん・・・。」
「キャサリン・・・いや、キャシーでいいわ。」
キャサリン・・・キャシー・・・。キャシー先生と同じ名前・・・。
この女性も決して根っからの悪い人ではない。根は優しい女性のようだ。
そう・・・あの優しかったキャシー先生と同じように・・・。
「キャシー! ありがとう! そして、できれば、この場から去ってほしいんだ・・・。これから、僕たちはシシオウを倒しに行く。
できれば、あなたを巻き込みたくはない・・・。」
「ジン・・・。わかったわ。私は別の出口からここを離れるとするわ。決してシシオウ様の恩を忘れたわけではないけども・・・。あなたへの恩も同じくらいある。
もう、私はどちらにも味方できない・・・。」
「うん。それでいいよ。 じゃ! 道を教えてくれて・・・ありがと!」
僕はキャサリンに手を振り、壁を押すと隠し通路に入る。
途中で、振り返ると、キャサリンが微笑みながら、僕に手を振っている姿が見えた。
そして、シシオウの居所へ急ぐのであった―。
~続く~
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