第47話 復讐編 『強欲のマモン』


 アカシックレコーズのそれぞれの正義の基づいた執行権を有する七人、それを人は『七つの大罪人』と呼ぶ。


 それぞれはコードネームでしか知られていない。


 その一人、『強欲のマモン』と呼ばれている男、それがゴーダッタ・ケッシーだ。






 この男ほど強欲な者はいないだろう。


 欲しいものはすべて奪ってきた。だが、彼の行動にはいつも一貫した正義があるのもまた事実ー。


 そんなマモンと正義の人ライオンマスクから能力を引き継いだばかりのリーヴァイス・ジーンズがペアを組んで暗い迷宮の道をひたすら進んでいた。







 やがて、左へ曲道となって地下へ降りる階段が続いていた。


 「うむ。ここからさらに地下へと下るようだが、気をつけろ。この先に人の気配がする。」


 「ああ。それはオレも感じている。」




 「ほお。生命チャクラ感知は鋭いようだな。」


 「オレはもともとそういうことには敏感なほうだ。」


 「なるほど。そいつは頼もしい。」


 「先を急ごう。マモンさん。」





 「うむ。おまえのことは、ブレード・・・とでも呼ぶとしよう。その切れるような性格と能力からそう名付けよう。」


 「ブレードか・・・。なかなか気に入った。」


 「では、急ぐとするか。」


 「ああ。」




 暗い地下の迷宮のような道をさらに進むと、その奥の方から明かりが見えてきた。


 大きな扉があり、その向こうから明かりが漏れているのだ。


 中からは何やら大勢の人の声がざわざわとざわついている様子だった。




 「ここは・・・。どうやら、兵士の詰所のようだな。十魔剣の配下の者が大勢控えているのだろう。」


 「そのようだな。マモンさん。どうする? オレたちは二人しかいないが・・・。」


 「オレ様なら、一人でも十分だぜ?」


 「なるほど。そいつは心強いな。」




 奥にある大部屋は十魔剣の配下の兵のたまり場であり、駐屯所だった。


 マモンがその扉を勢いよく開いた!


 「ちょ・・・マモンさん・・・。」


 思わずリーヴァイスが叫んだ・・・が、時すでに遅し。






 部屋の中にいた兵士たちが一斉に二人を見る。


 「て・・・敵襲だ―っ!!」


 「うおおおお!!」


 「ぶっ殺せーーーっ!!」


 大騒ぎになり、兵士たちは二人に向かって銃を構えた。




 「ほらほら! 考えなしに扉を開けちゃうから・・・。」


 「ま、見てな?」


 マモンは一向に平気そうである。


 リーヴァイスもやれやれって感じで戦闘態勢に入る。





 「撃てぇっ!!!」


 兵士の上官ぽいヤツが叫ぶと、兵士たちは一斉に銃を撃つ。



 ドドドドドドドドドドドドドッドドドッッドドドドドッーーーーーッ!!



 銃声が思い切り続く。続く。続く・・・。





 もうもうと硝煙が立ち込め、一瞬、見えなくなった。


 その煙がだんだんと晴れてくる―。



 「んんんっ? 殺ったか?」


 「た・・・大佐!! 人影が!」


 「んんーーー? な!? 立っている・・・だと!?」





 硝煙の煙が消え、周囲の壁や扉が銃の弾痕で穴が空きまくっている中、二人は立っていた。


 マモンが右手を前に差し出して、構えているその掌には無数の銃弾が塊のようになっていた。


 マモンがその手をぱっと開くと、その銃弾の塊が地面に落ち、無数に飛び散った。




 パキパキッキンキンキンカキッキンカキキンッ!!





 「ふふふ。効かぬ効かぬ効かぬぅ!!」


 「ば・・・化け物か!!」


 十魔剣の兵士たちが口々に叫ぶ。


 「オレ様の能力『グリード・グリード・グリード』は強欲だ。すべてを欲し、すべてを奪う者だ! おまえらの物はオレ様の物。銃の弾くらい・・・このとおりだ。」


 「いやぁ・・・。それ、反則じゃないのか? マモンさん・・・。」


 「ははは。では片付けるか? ブレードよ。」


 「了解だぜ。」




 そこからはもう単なる蹂躙で戦闘と呼べるほどのものではなかった・・・。


 逃げ惑う兵士たちを、二匹の獣がものすごい速度で狩りまくっていく。


 まさに地獄絵図だった。




 「ぎゃあ!」


 「この悪魔め!」


 「ぐはっ!」


 「た・・・助けて!」


 「おかあちゃん!!」





 その後、半刻もしたら、動くものはいなくなっていた―。




 「ふむ。もういないか!?」


 「あらかた片付けたかな・・・。」


 「だな。」


 「じゃ、こっちの扉と、あっち・・・。どっちから行く?」




 この大部屋には全部で3つ扉があり、入ってきた南方に位置する扉との他に、東と北の壁に扉があった。


 今の銃撃騒ぎでどちらの扉を進むにしても、彼らの侵入は気づかれているだろう。


 「そうだな。別れて進むのもいいが、ここはこっちだ。」


 そう言ってマモンは東の壁に位置する扉へ進んでいく。




 「そっちは・・・敵の気配がするぜ?」


 「ああ。だからこっちなのだ。オレ様たちはその敵を倒しに来たのだからな。」


 「なるほどね。それもそうか。じゃ、オレもそっちにお供するぜ。」


 「ふふ。では行くぞ!」


 「ああ。」




 マモンとリーヴァイスが東の扉に消えたその数分後―。


 北の扉が開く。


 ガチャッ!




 入ってきたのは数名の兵士だった。


 「な!? どういうことだ? これは!」


 「全滅している!?」


 「敵だ! すぐシシオウ様に知らせろ!」





 ◇◇◇◇



 さて、マモンとリーヴァイスが大部屋で戦闘に突入する少し前、アカリンとサーシャは、通路をを進んでいた。


 そして、暗闇の先にまた明かりが見えてきた。


 そしてそこに数名の兵士が銃を持って警備していた。




 兵士たちが守っている壁に扉があり、通路は扉とは別にまだまっすぐ続いており、その先は暗くなっていてよく見えなかった。


 「アカリン、どうするのら?」


 「うん。あの扉、鍵が閉まっているようね。」


 「あいつらの誰かが鍵を持っているのかな?」


 「そうね・・・。だけど、やるしかないかな・・・。」




 そうして、いざ、アカリンがその能力『波の音に染まる幻』を発動させようとした、まさにその瞬間―。




 ドドドドドドドドドドドドドッドドドッッドドドドドッーーーーーッ!!





 銃声が暗闇の通路の先のほうから聞こえてきた。


 かなり続く・・・。誰かが戦っているようだ。




 「なんだ? 何事だ!?」


 「敵襲か!?」


 「よし。鍵を持っているおまえはここで待機しておけ。我らが様子を見てくる。」


 「は!了解であります!」




 そう言って兵士たちは一人を残して、暗闇の通路の方へ銃を構えながら走っていった。



 「どうやら、あの残ったヤツが鍵を持っているようね。」


 「そうなのらね。ラッキーだね。」


 「おそらく、マモン様たちか、アール様たちかどちらかが戦闘に入ったみたいね。」


 「だねだね! でも、こっちもそのスキに・・・あの扉の先へ進めるのら。」


 「ええ。急ぎましょうか!」



 そして、アカリンは静かに能力を発動させたのだった―。




~続く~

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