第41話 復讐編 『戦闘開始』
その地下通路の先で二人の人間の影が立っていた。
厳重に警備をしている様子で、銃を持っている。常に警戒体制で構えられており、そこを忍んで通り抜けるのは不可能に思えた。
その先の地下へ行く通路があり、さらに、屈強な銃を持った兵士がもう二人、等間隔に間を空けて警備をしていたのだ。
「なあ、おい、なにか音がしなかったか?」
「いや・・・なんいも聞こえないぞ。」
「いや、なんとなく、聞こえたような・・・。ん? 霧か? こんな地下で?」
「おまえ・・・疲れてるんじゃないのか? とくに何もおかしいことはないぞ・・・。」
二人の兵士がそんな会話をしていたところ・・・通路の奥の方から・・・白い影が・・・近づいてくる・・・。
その白い影は明らかにいわゆる古典的な幽霊の姿をしており、冷気すら感じさせられるのだった。
「おい!あれは何だ? 見えるか?」
「あ・・・あぁ・・・だがなんだ?幽霊!?」
「とにかく、緊急警戒通報を・・・。十魔剣様に知らせるのだ!」
そういって兵士が、後方を振り向いた瞬間、恐ろしい獣の腕が、目の前に迫っていて顔を掴まれた!
「な・・・! 何者だ!?」
兵士がそう言った瞬間、その獣、人狼があっという間に、二人の兵士をその爪で切り裂いた。
さらに奥の2名の兵士が異変に気づき、銃を構えた途端、天井付近を水流が走っており、その中から太いデンキウナギのような色とツヤツヤしたものが、その二人の首に巻き付いてきたかと思うと・・・
次の瞬間、強力な電気ショックが兵士を襲った! 2名の兵士は一瞬にして意識を失い、崩れ落ちた・・・
「やったな! ウルフ! えーっと・・・演技者さん!」
白い女の幽霊がそう言って腕をウナギのように絡ませている僕に話しかけた。つか、演技者さんって・・・。
その直後、白い幽霊は消え去り、黒い全身スーツのアカリンが・・・スーツのせいでボディラインがはっきりしている・・・が、現れた。
「沙悟浄の水流に乗って、デンキウナギになりきって上から回り込むとは・・・見事ね・・・その能力・・・。」
男も同じくボディラインがはっきりして巨乳のスーツのアカリンに言い返す。
「いやいや、君だって、さっきの幻影、助かったよ。」
「シルバーウルフもさすがね。この兵士の人、近接戦闘のプロよ? あなたまったく気づかれずに後ろに回り込んだよね・・・さすがね!」
「おう・・・まぁ、魔女が気をそらしてくれてたしな。助かったよ、サンキュな。」
そして兵士の持っていた銃を壊し、奥の通路の扉を空け、そのまま中に入り込み、さらなる地下へ降りて行った。
奥の方に明かりが見えた。
どうやら、ここから敵の本拠地のようだ。
入り口があり部屋に続いている。この最初の部屋を通らなければ、その後ろの通路に行けないようだ。
誰かがいる気配がする。おそらく敵であろう。
「待っていましたよ! あなた達のチャクラは感じていたわよん。ここに自ら乗り込んでくるとは命知らずもはなはだしいわね。」
身長の高い、着物姿の女性(?)いや、男か? 剣を携え、ゆらりと佇んでいる。
「貴様は? 一人か・・・? なめてんじゃねぇの?」
ジャックが相手に返答する。
「アタシはウォーママ・ウースイ。十魔剣が一人。アタシを暗殺できるものはいないとさえ言われているわ。命がいらない人だけかかってきなさい。アタシはシシオウには協力する義理はあっても義務はない。」
「なんだと? 殺ってや・・・。」
ジャックがそう言いかけたものを、アカリンが羽交い締めにして止めた。
「おっと? なんだよ。ウィッチ・・・。止めんのかよ。」
「ウースイさん・・・。じゃぁ、わたし達を何もせず通してくださるのかしら?」
「んー・・・。どうしようかしらねぇ。そう来られると・・・。 だ・け・ど☆ ここは通すわけにはいかないの。持ち場なのでねぇ。」
「この奥にシシオウがいるのね?」
「んん♡ それは言えないわね。」
「やっぱ、戦って倒すしかないのらね・・・。」
サーシャがそう言う。
「たしかに・・・ここを引き返して、他の道に行くなら、かなりの時間のロスになるかも。」
僕はそう言って、ウォーママの相手をする予定の僕がここでこいつを足止めすることが使命だと思った。
「ウースイさん・・・。あなたに直接の恨みはない。だけど、僕たちの行く手を阻むと言うなら・・・、僕が相手だ!」
僕はそう宣言した。
「あなた・・・可愛いわね。良いでしょう。アタシのお相手はあなたに、、、決・め・た☆ 」
「みんな、先に行ってくれ。後から僕も行く。」
「君・・・えーと、演技者・・・演技・・・『アクター』さん。それはだめなのら。相手は十魔剣のナンバー2だよ? 一人じゃ危険すぎるのら!」
僕のことは『アクター』と呼ぶことにしたらしい・・・。
「いや、僕は策がある。大丈夫だ。それより、先に急ぐことが先決だ。マモン様がシシオウの相手をするにしても、他の十魔剣のヤツラを足止めしないと・・・それほどヤツは危険だ。」
「・・・わかった。アクター。無茶だけはしないでね。」
アカリンはそう言い、前へ進む決意をしたようだ。
「おい。アクター。オレはこれからも君の演技を見て行きたい。決して失望させてくれるなよ?」
「ああ。ウルフ。僕も君の試合をまだ見てないからな。必ず行くと約束しよう。」
「待ってるゾ。アクター。」
「ぷーぅ!! それじゃあたしだけ、聞き分けのない子みたいじゃないのら? むーぅ。わかったのら。アクター。きをつけるのらぞ?」
「うん、ありがとう! サー・・・ゴ條・・・って、えっと。沙和尚さん。」
「サゴジョウでもいいのらけどね。沙和尚・・・のほうがいいかな。じゃ、行くのら!」
サゴジョウもサオショウも同じ意味なんだけど、サゴジョウじゃ、なんだかサーシャ・五條ってもろなんじゃないかと思う・・・。
「ふふ・・・。まあ、アタシは一人残ってくれればいいのだけどね。責任は果たせるからねぇ。」
「じゃ!死ぬんじゃあねぇぞ?」
「じゃ!行っちゃうのら!」
「じゃ!また後でね!」
ジャック、サーシャ、アカリンの三人はウースイを通り越して、奥へ向かった。
辺りが静かになり、ウースイと僕は二人だけとなった。
僕に作戦などあろうわけがなかった。
ただ、みんなを安心させるために嘘をついたんだ。
アカリンだけは本当のことを見破っていたような気がするが・・・。あの子、妙に鋭いからなぁ。
だが、決して自暴自棄になったわけでもなかった。
このウースイというオカマがものすごく強いということは、ビンビンに伝わってくる。
だけど、僕も負けるわけにはいかない。
『ヒョウリ』の名にかけて・・・。
「アタシの能力『見つめるだけが たったひとつの愛』はすでにあなたを見ている・・・。あなたの行動はすべて手に取るようにわかる。勝ち目はないわよ?」
「へぇ。親切に能力を明かしてくれるのか? それって十魔剣の様式美なの?」
「あはは。面白い子・・・。アタシ達十魔剣はみんな自信家ばかりだからねぇ。・・・いつでもどうぞ?」
なるほど・・・。ウースイの能力は、言動から察するに予知、つまり先読みの能力ということか。
じゃぁ、これって、攻撃しなきゃどうなるんだろう・・・?
僕はしばらく様子見を決め込んだ。
それに、まだ、どんなものに成り切ればこいつに勝てるか・・・まったくわからない状況だからな。
「あらあら? アタシに攻撃手段がないとでも思ったのかしら? 心外だわ・・・。」
そう言って、スラリと剣を抜き放った。
「未来剣・・・免許皆伝、ウォーママ・ウースイ。いざ参る!」
さ・・・さっきまでの、オカマ口調と一転して渋い声で・・・構えを取った。
やばい! オレの感覚がびんびんに危険を告げている。
オレも、ウースイに対して、チャクラを全開にして身構えたのだった・・・。
~続く~
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