第40話 復讐編 『シンジュク・アンダーグラウンド潜入』


 シンジュクエリアの『シンジュクギョエン』の地下にある秘密の地下施設のある『シンジュク・アンダーグラウンド』では―。


 十魔剣の頭・シシオウが暗い部屋で深々とソファに腰をかけていた。


 その隣ではホンジョウが侍り、シシオウの身体にせっせと包帯を巻いている。





 「シシオウ様。お体の具合はいかがっスか?」


 「ホンジョウ・・・。大丈夫だ。すでに傷はほぼ癒えている。この傷が完全に治ったら・・・。」


 「治ったら・・・どうなさいます?シシオウ様。」


 キャサリンがそうシシオウに問いかける。




 「もちろん・・・ヤツラを皆殺しだ・・・。」


 「くくく・・・。そやつら、アタシが殺ってやるわ。シシオウがここまで殺られた相手・・・アタシが殺ればあなたに俺が勝ったも同然よね・・・。」


 ウースイがそう言う・・・。ウースイはシシオウに対して決して服従したわけではない。敵愾心を持ったまま組織に属しているのだ。




 「ウースイ! 貴様!シシオウ様に不敬であるゾ!」


 「ふふ。アタシはシシオウに対して利害が合わないなら見切りをつけてよいという条件の下で、この十魔剣に属しているのよ。それをお忘れかしら? フォージさん。」


 「くっ・・・。シシオウ様! 言わせておいてよいのですか!?」


 「よい・・・。ウースイは『利害一致』を条件にこの十魔剣に加わってもらっている。ゆえに、その発言は自由だ。」


 「は!承知致しました。」




 フォージがそう返答をした。


 U・Qがそこで口を挟んできた。


 「しかし、そのライオンマスク・・・やはり、なかなか手ごわい相手ですね。」


 「ああ。ヤツは恐ろしく戦闘センスが高い。こちらも精鋭でやらねばならんだろう。」


 シシオウがそう答える。




 「ま、命令とあらばオレは誰であろうと仕留めてみせるがな。」


 カリャがそう言う・・・。この男は仕事にはこだわる性格らしい。


 そんな中、一言も喋らないイワン坊やがただ薄ら笑いを浮かべていつもどおり、ニヤニヤしているのだった・・・。




 さて、この十魔剣が潜んでいるアジトはシンジュクギョエンの地下にある『シンジュク・アンダーグラウンド』と呼ばれる地下街にある。


 この地下街は複雑でカオスを極めた構造になっていて、無秩序に広がっていて、地下街で犯罪者やならず者、無宿者らが住み着いている地下迷宮と化している。


 この地下迷宮の奥の一級犯罪者達でさえ踏み込まない、そんな場所に十魔剣のアジトがあった。




 シンジュクギョエン・・・昼間は平和な公園で、観光客で賑わっている観光名所だが、少し離れた場所にはスラムになっている地域がある。


 そこの地下道の入り口から『シンジュクギョエン』の地下深くまで迷宮のように入り組んで『シンジュク・アンダーグラウンド』・・・もちろん、十魔剣だけではなく危険な犯罪者達が身を潜めている。


 その秘密の入口が、センダガヤゲートの近くにあり、今、その入口の洞窟のような場所から僕たちは侵入するところだ。




 「うん・・・あたしの能力『蒼く眠る水の星』で、この入口あたりの敵性犯罪者達・・・ぜぇんぶ水に流してしまっちゃうのら?」


 サーシャがそう提案する。


 「いや、『沙悟浄』。それは敵に今から侵入しますよ―って教えるようなもんだよ。わたしの『波の音に染まる幻』で幻影を見せてこっそり潜入するほうがよいよ。」


 アカリンがそう言ってさっさと能力発動をする。サーシャのことはコードネームで呼んでいた。


 あたりに霧が立ち込めてきた。だが、僕たちのまわりは霧が避けるように流れていく・・・。




 「うむ。いつもながら手際が良いな。『夢見の魔女』よ。では、進むぞ。」


 マモン様がそう囁き、みんな隠形の技で進んでいく。


 僕もここは、気配を消して進むことを優先しよう・・・。


 なにか、見つからないもの・・・影か? 闇に潜む影・・・うん、それだ!




 「忍者だ! 忍者に・・・なり切る!」


 僕はそう思いつき、忍者装束になり、影と同化するようにチャクラをイメージした。


 伝説の忍者・・・黒影だ。黒影の潜影術・・・それを強くイメージした。


 あぁ、ちなみに黒影は昔テレビでやっていた忍者モノのヒーローだ。相変わらずの中2感があるけどね。




 「デス・マジック!」


 デス・キングさんはその隠形の技は『色欲の守護神』の中でも随一とのこと。さらに、その影の中に味方の気配を包み込むことができるようだ。


 とてつもない能力だが・・・その影はアールさん専用・・・らしい。 ま、いいけどね。




 リーヴァイスさんは、僕のように能力で化けるわけではないが、もともとの身体能力が高い。隠形の技もなんなく使っている。


 まあ、能力発現こそなかったが、チャクラ感知能力がもともと備わっていたのだから、普段からそのチャクラ制御感覚も並外れているのだろう。


 ジャックも同じか・・・。野生の獣のように見事に気配を消している。




 マモン様は・・・というと、すでにいなくなったんじゃないかってほど感知できない。


 なんというか・・・目を凝らして見ないとそこにいるかどうかさえ怪しく感じてしまう・・・それくらいの隠形スキルである。


 そんなこんなで、僕たちは奥へと足を進めて行く。




 前でアカリンが、はたと足を止めた。


 「道が3方向に分かれている・・・。チャクラはまったく感知できないけど、おそらくどれか・・・あるいはいずれもヤツラのアジトにつながっていると思われるけど・・・。」


 「そうねぇ・・・では、ワタクシ達はこっちの道へ行くわ。当初の予定と違う敵がいたら・・・倒しちゃうけどいいですわね?」


 アールさんとデス・キングさんは左手方向の道を指した。




 「ふむ。ではオレ様と・・・そうだな。班長よ! 一緒に右の道へ来い。おまえはまだ能力に目覚めたばかり。オレ様と一緒のほうが良いだろう。」


 「ああ。それでかまわん。少ないほうが気を使わなくていい。だが・・・貴様は・・・死ぬんじゃァねえぞ?」


 リーヴァイスさんが僕に向かってそう言った。


 「わかってますって。班長。命が最優先・・・ですよね?」


 僕もリーヴァイスさんの名前は呼ばない。


 「そうだ。今度無茶をしたら、俺が殺すゾ?」


 「うわぁ・・・それ、心配してくれてるのかなんなのかわかんないんですけどぉ!!」




 「じゃあ、残りのみんなで真ん中の道へピクニックと洒落込みましょうかね。」


 ジャックが少しおどけた調子で言った。


 残りのメンバーは、僕、アカリン、サーシャ、ジャックだ。四人もいるので安心だな・・・僕は少しそう思った。情けないな。ここまで来て。




 「おっし!てめえら!死ぬんじゃぁねえぞ? それとシシオウのヤツがいたら引き返せ!そいつはオレ様が殺る。決して無理をするな。」


 マモン様がそう言って、拳を振り上げて僕たちみんなに激を飛ばした。


 「はい! ご武運を!」


 僕たちもそれに応えた。




 ここから四人で進んでいくが、やはりさきほどと同じく、アカリンが幻影を繰り広げ、みんなが隠形の技を駆使し進んでいく。


 どんどん暗く、明かりが見えなくなってきた。


 地下迷宮の暗闇がなおいっそう、不気味に感じさせる。


 みんなこの暗闇でよく目が見えるものだと思わせられるが、実は目ではまったく見えていない。




 生命チャクラをソナーのように感じながら、周囲を探知して進んでいるのだ。


 コウモリが暗闇で岩にぶつからず進めるように、僕たちビヨンド使いも生命チャクラで同じことができるのだ。


 僕もナオト兄さんとの特訓で山奥で修行をしていた際、洞窟で訓練させられたから、これくらいはできるようになっていたんだ。




 そして、そのチャクラ感知に進む先の方向になにか感じられるものがあった。


 生命反応だ・・・。おそらく十魔剣の手先だろうな。数名がなにか談笑している。


 十魔剣のやつらがその反応をこんなに簡単に悟らせるとは思えない。




 だが、こんな地下迷宮の奥底で、一般人がいるとは到底思えない。


 十魔剣の潜伏先・アジトは近い・・・。


 それは間違いがなさそうではあった・・・。





~続く~



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