第37話 復讐編 『顔合わせ』


 僕は公演に忙しい中だったけど、アカリンとサーシャを呼び出した。


 その目的は、リーヴァイス班長を紹介することだ。


 今後、ナオト兄さんを頼ることはできない、自分たちでなんとかしないといけない。


 そう考えた時、僕とリーヴァイス班長は、アカシックレコーズと少なくとも情報共有しておきたいと思ったのだ。




 アカリンはバー『シティ・ハンター・ハンター』を指定してきた。まあ、あそこが間違いないとは僕も思う。


 いろいろ話が混み合うことが予想されるからな。サーシャはリーヴァイス班長と面識があるからびっくりするかもしれないな。


 僕はリーヴァイスさんにこう伝えた。


 「実は、世界でランキング鑑定を行っている『アカシックレコーズ』という組織が在るんです。その組織の構成員はビヨンド使いで、その一員と僕は接点があります。」




 「ほぉ・・・あのランキング鑑定組織か・・・。ビヨンド能力者の組織だったか・・・なるほどな。そりゃそうか、正体がバレずにあんなことできるのは能力者しかない・・・か。」


 「そうです。それで、そのメンバーに協力を仰ごうと思うんです。」


 「信用できるヤツらなのか? 特にお前はその能力、知られたらヤバいんじゃないか?」


 「まあ、そこは信用できると僕は思ってます。リーヴァイスさんもたぶん、そう思ってくれるかと・・・。」




 「ふん! まあ、いい。で、どこで会う? へたなところじゃ話もできないだろう?」


 「ええ、あのバー『シティ・ハンター・ハンター』にしようと思います。」


 「なるほど、あそこなら大丈夫だな。まあ、この前の件もあるからな。大丈夫じゃないと困るけどな・・・ふっ。」




 ネオトウキョウエリアのロッポンギエリアの隠れ家的なバー『シティ・ハンター・ハンター』に着いた。


 バーの扉を開けて入ると、マスター・ボーズがいつものように無愛想に言う。


 「いらっしゃいませ。」




 「ああ、マスター。奥の席、いいかな?」


 「Exactly(イグザクトリィィ)」


 奥の方の席に行く・・・まだバーは開店したばかりの時間だからか、お客さんは・・・あれ? 一人いるな・・・。


 奥の片隅に一人、なんだか不気味な雰囲気の男が一人で酒を飲んでいた・・・。・・・って骸骨のように見える仮面をつけている。なんだか怪しい人だな。


 そう思いながら席に着いた。




 「マスター! おまかせで。」


 「Of course(オフコー―ス)」


 マスターのおすすめは本当に的確だからな。その場、その気分に合わせて絶妙な選択で最高のタイミングでドリンクを出してくれる。おまかせ・・・が一番いい注文の仕方なんだ。


 「さて、一番に来るのは誰だ?」


 リーヴァイスさんは愉快そうに微笑んだ。





 それから10分もしないうちに、バーの扉が開く音がした。


 カランコロンカラン・・・ン・・・ン。


 ひょっこり顔を出したのはサーシャだった。


 「んん・・・マスター!おはようなのらー!」


 「いらっしゃいませ。」


 相変わらず無表情でマスターが答える。




 店の中をぐるりと見渡すと、僕たちを見つけてサーシャが嬉しそうにやってきた。


 「ヒョウリ! 見ぃつけたっ!! おお! リーヴァイス班長!? すごい人と飲んでるのら?」


 「サーシャ・チャ・五條か・・・。ほう・・・貴様もなのか? 以前から気にはなっていたが、やはりな・・・。」


 「・・・って、あれ? ヒョウリ!? リーヴァイス班長ってもしかして・・・?」





 「うん、そのとおりだよ。推察のとおりさ。リーヴァイスさんは、ビヨンド使いになったんだ。」


 「うわぁ・・・マジかぁ・・・!? 以前からってABC・ビヨンド能力を身につける前から、気づいてたってこと? すごいなぁ・・・やっぱ、うちの劇団の看板背負ってるだけのことはあるねぇ。ね? ヒョウリ?」


 「う・・・うん。そうだね。ま、サーシャって変わらないんだね。そのタメグチ・・・つか。物怖じしない態度っていうか・・・。ある意味、サーシャも大物になるよ。」


 「ええ? なぜなのら? リーヴァイス班長はうちの班長なんだから、家族も同然でしょう?」


 「ま、そういえばそうか・・・。」




 「おい! サーシャ! 貴様も突っ立ってないで早く座れ! マスター!! こいつにもおまかせだ! ミルクでもいいぞ!?」


 「ああー!! あたしのことお子様だと思ってない? リーヴァイス班長!!」


 「ふん、貴様はおこちゃまで十分だろう?」


 「ぷぅーーーーっ!! あたしはもうレディなのらよ?」


 「レディはほっぺたを膨らませたりはしない。」





 するとそこへ、また一人やってきた。


 カランコロンカラン・・・ン・・・ン。


 入ってきたのは、アカリンだった。今日もボディラインがわかるアクティブなファッションだ。いや・・・それ、完全に『胸』を強調してるよね!? そうだよね!?


 「おっす! ヒョウリくん! あれ? そちらの方ってまさか!? リーヴァイス・ジーンズじゃないの!! マジで? マジで? ファンサービス? もしかして!?」





 「ヒョウリ・・・。なんだこの騒がしい女は・・・。」


 「いや、アカリンってリーヴァイスさんのファンだったの?」


 「え!? いやいや。そりゃ若い女子の間でリーヴァイス・ジーンズ知らないってそりゃいないでしょ?」


 「やっぱ、リーヴァイスさん・・・有名人ですもんねぇ・・・。」


 「ふん・・・。どうでもいい・・・。」




 アカリンが僕に早く紹介しろって言う無言のテレパシーを送ってきたので・・・僕は急いで紹介した。


 「こちらは、アカリン・サンさん・・・ってなんだかサンサンって変だけど。フリージャーナリストでアカシックレコーズのメンバーなんです。あ、言い忘れてたけどサーシャもなんです、実は・・・。」


 「なるほどな・・・。まあ、よろしくだな、アカリンよ。」


 「こ・・・こちらこそ!!」


 そう言ってアカリンは差し出されたリーヴァイスさんの手を何度も何度も握り返していた。




 「白ワインとカシスリキュールを合わせたカクテル『キール』でございます。」


 そう言って、そのタイミングで、マスターからカクテルドリンクが提供された。


 「ほぉ・・・。キールか。マスター、さすがだな。一流・・・だな、本当に。」


 リーヴァイスさんもこのドリンクの選択は納得行くものだったらしい。僕にはさっぱりだったのだけど、マスターが補足してくれた。






 「『キール』のカクテル言葉は『最高のめぐりあい』。白ワインとカシスリキュールを合わせた、フランスではよく食前酒として飲まれているカクテルです。

『あなたに出逢えてよかった!』という意味を込めて、こちらのカクテルで乾杯されてはいかがでしょうか?」


 「マスターってホント空気読めるよねぇ。」


 「すごい才能なのら!」


 「尊敬します!」





 「ま、とりあえず、乾杯! だな。」


 「はい! 宜しくおねがいします!」


 「よろしくね。」


 「よろしくなのら!」




 そして、アカリン達に、直近であった出来事、料亭『和流匠亭(わるだくみてい)』での出来事と、リーヴァイスさんの覚醒の件、十魔剣のリーダー的存在・シシオウ・マコーレーキングのことを話した。


 アカリンは黙って聞いていたが、少し怒っているようだった・・・。ま、僕が言いつけを守らずに単独行動したことに怒っているんだろうなぁ・・・。


 「ヒョウリ・・・さんざん自分で後悔しただろうから、私からはもう何も言わない・・・。でも、今後は二度と勝手な行動をしないと誓いなさい!」


 「そうなのら! ヒョウリ! あたしも許さないのら!」


 「うん・・・わかってる。もう二度と軽率な行動はしないと誓うよ。」




 「わかった・・・。まあ、ナオトさんのことは残念だったけど、命があるってことだし、そのチカラがリーヴァイスさんに受け継がれたのは不幸中の幸いだったと思う・・・。」


 「オレもそう思っている・・・。ナオトさんの意思はオレが継いだ。この世の悪はオレが全部ぶっ壊す。」


 やはり、リーヴァイスさんは頼もしい・・・。思えば劇団での演技もその鬼気迫るものは、リーヴァイスさんの性格を反映していたんだな。


 観るものすべての人に強烈なインパクトを与え、人に勇気を与えてくれる・・・リーヴァイス・ジーンズその人の魅力なんだろうな・・・。


 味方であるから嬉しいけど・・・、俳優王への道にはリーヴァイスさんは強敵であることは間違いないな・・・。





 カランコロンカラン・・・ン・・・ン。



 そこへまた一人の男がバーに入ってきた。その男は僕の知っている人だった・・・。




~続く~



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