第36話 復讐編 『継承』


 リーヴァイス班長は目覚めた。


 「なにか声が聞こえた。能力名『朝までふざけようワンマンショー』と・・・。オレはどうやら、なにか特殊なチカラに目覚めたようだ。」


 「そうですか!それは、ビヨンド能力という能力です。ナオト兄さんのチャクラを引き継ぎ、目覚めたんですね。」




 リーヴァイスさんは、ナオト兄さんを見つけて、抱きかかえた。


 「オレの命を助けてくれたんですね・・・。わかります。オレの中にあなたの生命チャクラが息づいているのを感じる。」


 ナオト兄さんはまだ目覚めない。


 ナオト兄さんの両腕は、回復しなかった。やはり、僕の能力は僕にしか効果がないようだ。僕の傷跡は何事もなかったようにふさがっていた。


 




 ナオト兄さん・・・ライオンマスク。正義のプロレスラー。まさに、中身も正義の人そのまま、昔から僕が憧れた正義のヒーローそのままだった。


 「お前をつけたんだ・・・。なにか胸騒ぎがしてな・・・心配していた。お前はなにか思いつめたような顔をしていた。」


 「そうだったんですね。僕もまだまだ演技力不足ですね。でも、リーヴァイスさん、本当にありがとうございました。そして申し訳ありませんでした。」


 そう言って、僕は90度の最敬礼のお辞儀をした。最大限の謝意を示したかった。




 「ナオトさんには、前から相談していた。お前のことで。そして、お前があの料亭に入ったときに、すぐ連絡を取ったんだ。」


 「そうか。それで、ナオト兄さんはあの場に駆けつけてくれたんですね。」


 「そうだな。しかし、お前も無茶をするなと言ったのに・・・。今回のことは本当に危なかったぞ。あの男、異常すぎる・・・。」


 「そうですね。すみません。あの男・シシオウ・マコール・カルキング、十魔剣という闇の組織のリーダーだそうです。」




 「なるほど。あの男は危険すぎるな。なんだ、あの能力は?」


 僕は、A・B・C、ビヨンド能力について、リーヴァイスさんに説明した。


 「ふむ、あのシシオウの能力はどうやら、なにか消滅空間のようなものを繰り出すことができるようだな。まあ、まだ他にもまだ隠れた能力を持っているようだったが。」


 「僕もそう思います。今でも、ゾッとしますね。」




 そうこうしているうちに、ナオト兄さんが目を覚ました。


 「ミギト・・・オレは、なぜ助かったんだ?」


 「僕が、地球のチャクラを使い、なんとかナオト兄さんの命だけはつなぎました。でも、その・・・両腕は・・・なんともできませんでした。」


 「ふん、お前たちの命が助かったんだ。腕の二本くらい安いもんだよ。」


 「兄さん・・・ごめんなさい。僕は、僕は・・・わあああああ!!」


 僕は思わず、ナオト兄さんに抱きつき、大声を上げて泣いた。恥も外聞もなく、泣いて・・・泣いて・・・泣きじゃくった。






 ナオト兄さんはその間、優しく、微笑んで僕を、そしてリーヴァイスさんを見ていた。


 リーヴァイスさんも涙を浮かべながら・・・ナオト兄さんを見ていた。


 「勝手にオレの命を助けてくれやがって・・・。あなたという男は・・・。言葉もない。恩に着ます。」


 そう言って、じっとナオト兄さんに肩を貸して、支えていた。




 いつの間にか、マスター・ボーズが、僕たちの前に、3つ、温かいミルクを用意してくれていた。


 「どうぞ。冷めないうちに・・・。」


 「マスター、ありがとう。」


 「いえ。」


 マスター・ボーズはたった一言そう言って、また奥に引っ込んだ。






 「まあ、オレはレスラーは引退する。この身体では続けることはできないだろう。だが、まあ、興行自体は今までと変わらない。ま、次の世代も育ってくれている。なんとかなるだろう。」


 「すみません、僕のせいで・・・。」


 「気にするな。おまえ達が無事であったことを喜ぼうではないか。」


 「ありがとうございます。このリーヴァイス・ジーンズ。受けた恩を忘れることは一生ない・・・。」


 「兄さん、ありがとうございます。今後は、常に冷静に考慮し、動いていきたいと思います。」


 「おう。ミギト。お前は本当に焦った動きはしてはいけないぞ?もう、オレはお前を守ってやることはできない。慎重にな。」


 「わかりました。肝に銘じます。」




 その後、僕たちはマスターの料理を食べ、大いに語り合った。


 僕は、感情に任せて早まった行動をしてしまうことは今後二度と繰り返さないと誓うのだった。


 そして、夜は更けていった。





 一方、ところ変わって、料亭『和流匠亭(わるだくみてい)』では・・・。


 十魔剣の頭、シシオウ・マコール・カルキングは動けずにいた。両腕をへし折られ、肋骨も折れ、折れた肋骨が何本か肺に刺さっている状態だった。


 が、その生命チャクラでなんとか耐え、和流石社長とアクノ大臣のいる部屋まで引き返した。


 「おお!シシオウよ、賊は仕留めたか?」


 「いえ、2名に深手は負わせましたが、仲間が助けに入り逃げられました。こちらも手傷を負わされましたので、深追いはできない。それに他の仲間がまだいるかもしれません。」


 「なるほど、敵は複数、組織で動いてる者か?」


 「そう推察できます。しかも、あのベリアルの能力を使った少年・・・ヤツはおそらく我が十魔剣のサワや豺狼、不死鬼をやったやつだ。」




 「むぅ・・・。それは敵もかなりのバックがついているやもしれんな。サラマンダー系やシルフ系かもしれんな。」


 「そうですね、あれだけの能力を持ったものですから・・・、おそらく背後に組織がついていると思われます。今後は気をつけて動かれたほうがよろしいかと・・・。」


 「和流石のぉ。我々もこう直接のやりとりは控えたほうがよいやもしれんな。」


 「ええ。お大臣様。おっしゃるとおりですな。今後は、側近にも気をつけなければいけませんね。人に化ける能力者か・・・。恐ろしいの。」


 「まさに、それですな。身近なものも信用できんということだな。生体認証を強化するか・・・いや、それすら信用出来んかもしれん。敵ながら恐ろしい能力じゃて。」




 そうこう話しているうちに、シシオウの元にすぐ参名の十魔剣・メンバーが駆けつけてきた。


 忠犬の異名を持つサード・フォージ、アクセラレイターの異名を持つキャサリン・セタ・ジョーンズ、可愛すぎる暗殺者のホンジョウ・カマナミの3名であった。


 「お頭ぁ!ど、どうなさったんでぃ? お頭がこんな不覚を負わされるだなんて!?」


 サードがそう叫ぶ。




 「うむ、敵ながらあっぱれだ!この私の一瞬の隙きを突いてきやがった・・・。よほどの実力者であったぞ。」


 「へえ!?シシオウ様がそこまでおっしゃるだなんて!このアクセラレイターと呼ばれるワタシの能力『hard to say i'm sorry(ハーダセアイムソーリー)』に敵うほどのスピードかしら?」


 キャサリンが嬉しそうにシシオウに聞いてくる。


 「そうだな・・・。やってみないとわからないが、単純なスピードというわけではなさそうだったな。」




 「だぁめだよ?シシオウ様? もう無茶しちゃ・・・。アタシ・・・泣いちゃうよ?」


 そう、瞳をうるうるさせて言ってくるのはホンジョウだった。


 「おお。心配かけて悪かったな?」




 そして、アクノ大臣と和流石社長をそれぞれ自宅まで送っていき、十魔剣メンバーもそのアジトへ引き返したのだった。


 それぞれのこの長い夜が終わったのだった・・・。




~続く~



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