第35話 復讐編 『和流石建設本社・潜入5 決着』


 「彼(リーヴァイス班長のこと)から連絡を受けたんだ。お前が危ないってな・・・。」


 ライオンマスクが僕に向かってそう声をかけてきた。リーヴァイス班長の名を呼ばないのは名前がバレるのを恐れてのことだろう。


 「兄さん!!ごめんなさい!あんなに注意されてたのに・・・。」


 「・・・。後で・・・、説教だぞ!」




 「ぐぐ・・・まさか、この私が捕えられるとなは・・・しかもこの腕から放たれているチャクラで私のチャクラを乱されている・・・。何者だ!?」


 背後を振り返ることのできないシシオウはライオンマスクのナオト兄さんの姿を見ることができない・・・。


 急に何者かに、羽交い締めにされているという状況だ。


 しかも、あの青い光を出す能力を、ナオト兄さんはナオト兄さん自身のチャクラをシシオウの身体に流し込むことで乱し、その能力発動をも封じているらしい。




 あの一瞬のタイミングでそこまで見切り、攻撃に転じたナオト兄さん・・・その能力『鬣なびかせてIikeライオン』の凄さを改めて知ることとなった。


 「兄さん!気をつけて!そいつの青く光る能力は触れたものを消滅させる力を持っている! しかも光のレーザーのように打ち出すこともできるんだ!」


 「ぐ・・・ふふ・・・私の能力をよくぞ・・・そこまで分析したものだ・・・ほめてやる・・・小僧・・・が、まだ認識が甘いようだ・・・。」


 僕は僕の方をちらりと見たそのシシオウの表情に、ゾッとした。


 ヤツはまだなにか隠している・・・そう直感が告げる・・・危険だ!




 「兄さん!早く!そいつにトドメを!!」


 「おおおおおおおお!!!」


 奥がナオト兄さんに向かって声をかけた瞬間、シシオウが叫ぶ。


 ナオト兄さんもほぼ同時に、声を荒げた!


 「喰らえ!!クロス・オブ・ライオンア―――ッム!!」


 ライオンマスクの腕が、羽交い締めからさらに交差させ、シシオウを締め上げた。


 「ごばっ・・・。」




 ボキボキゴキゴキュ―――ン!!


 骨がバキバキに砕ける音がして、シシオウがその場に倒れ込む・・・。


 が、シシオウは青く輝いていたのだ・・・どうやら、内部から青の光を一点に集注させ、レーザーのように放ったらしい・・・。




 「兄さーーーん!!」


 ナオト兄さんのその両腕は、無くなっていた・・・。


 そして、その腕の付け根から、血が大量に溢れ出したのだ・・・。


 相打ち・・・。シシオウも動けなくなるほどの重傷を受けたが、その分、ナオト兄さんの両腕が犠牲になったのだ・・・。




 「くぅ・・・。弟よ!いったん撤収だ・・・。逃げるぞ・・・。」


 「はい!わかりました。」


 僕はリーヴァイス班長を抱え、ナオト兄さんと一緒に、料亭『和流匠亭(わるだくみてい)』から急いで離れたのだった。




 幸い、追跡はなかった。


 シシオウはあの場所から動けなくなっていた。他の護衛のもので手練れの者はいなかったようだ。


 ナオト兄さんは、そのチャクラで、両腕からの出血を止血していた。




 ここから近い安全な場所・・・、はっ!


 ロッポンギエリアには、アカリンたちの隠れ宿的なバー『シティ・ハンター・ハンター』があった!


 僕は、ナオト兄さんにそれを話し、リーヴァイス班長を連れて、バー『シティ・ハンター・ハンター』に駆け込んだ。





 僕たちが満身創痍でバーの中に駆け込んだとき、マスター・ボーズはちらりとこちらを見て、


 「いらっしゃい。・・・ふむ、なにかお困りのご様子で・・・。」


 と、一言だけ声をかけてきた。


 「すみません、しばらく、場所をお借りしてもいいですか?」




 マスター・ボーズは、


 「Exactly(イグザクトリィィ)」


 とだけ答えて、こちらをチラリとも見ない。




 ナオト兄さんは、リーヴァイス班長の様子を見ていたが、顔を横に振り、こう言った。


 「おそらく助からんだろう・・・。」


 「そ・・・そんな・・・僕のせいだ・・・僕が黙って勝手に一人で暴走したからだ・・・。」






 「む・・・彼はチャクラ能力があるのか・・・生命チャクラを強く感じる・・・。それがまだ命をつないでいるようだ。」


 「そうみたいです。感知能力はあったみたいです。ビヨンド能力にはまだ目覚めていませんでしたが・・・。」


 「そうか・・・。アレをやるしかないみたいだな・・・。」


 「ナオト兄さん!アレって?」




 「ゴボっ・・・。」


 リーヴァイス班長が血を吐いた。

 

 「迷っている暇はないみたいだ。」


 ナオト兄さんがそういう・・・。


 まさか、アレって・・・ヒョウリが僕につかったあの生命チャクラ伝導のことか!?




 「ナオト兄さん、ダメだ!それを今のその状態でやると兄さんに命の危険が及ぶんだ!」


 「ミギト・・・この男・リーヴァイスはお前のことを本気で心配してくれていたからこそ、オレに連絡をくれたんだ。そして、自分をも犠牲にしてお前を助けようとした・・・。」


 「そ・・・それは・・・。リーヴァイスさんには・・・感謝しかない・・・本当に・・・。」


 「オレもお前のことを本当の弟のように思っている・・・。ゆえにこの男気あるリーヴァイスを助けずに、見殺しにしたら、オレは一生オレを許せなくなるだろう・・・。だから、いいんだ。」


 「兄さん・・・ごめん、僕が早まった行動をしたばっかりに・・・。」




 「ふ・・・それに関しては、後でじっくり説教だな・・・くっ。」


 そして、ナオト兄さんは、その両腕がないため、ライオン・フェイスのまま、口を大きく開いた。


 その牙を、リーヴァイスさんのお腹の穴に噛み付くように突き立てたかと思うと・・・。




 「オレの・・・チャクラをっ!!獅子のチカラを受け取れ!リーヴァイスよ!!」


 そう言って、ナオト兄さんはその生命チャクラを輝かせ始めた!


 ナオト兄さんはその全生命力を、リーヴァイスさんに注ぎ込んだ!


 一瞬、あたりは暗くなっていたのに、光り輝いたように見えた!


 あたかも、花火が最後の輝きを大きく派手に光り輝かせるように、七色のチャクラが・・・リーヴァイスさんに流れ込んだ!




 僕はその瞬間、あの時のヒョウリのことを思い出した・・・。


 ヒョウリはまさに生命が尽きかけていた状況だった・・・。だから、その後、生命チャクラを放出しきって死んでしまった。


 だが、ナオト兄さんは怪我をしている状態、両腕がない状態ではあったが、死ぬような状態ではなかった。


 ここ、今、ナオト兄さんが生命チャクラを放出しきった瞬間、僕にできることがあった!




 僕がナオト兄さんの背中を手で触れ、僕の地面に触れている両の足から、地球のチャクラを集め、ナオト兄さんに注ぎ込んだ!


 ナオト兄さんが、その生命を燃やし尽くしたと同時に、生命チャクラを補充したのだ!


 ナオト兄さんは、その場に倒れ込んだ・・・が、息をしていた・・・。




 ナオト兄さんは、ヒョウリのように死なずに生き残ったのだ。


 そして、リーヴァイスさんは・・・。


 そのお腹の傷はふさがり、意識こそ回復していないが、顔色はよく、呼吸音もしていた。心臓も動いている。


 無事、成功したんだ!




 「よ・・・かった・・・。」


 僕もその場で、気が抜けてへたり込んだ。涙も自然に溢れ出していた。


 何にしても、僕のせいで大切な人が死んでしまうかもしれないところだったのだ。


 僕は猛省に次ぐ猛省の気持ちでいっぱいだった。




 その様子を黙って見ていたマスターが、


 「お二方がお目覚めになりましたら、温かいお飲み物を差し上げましょう。」


 と、一言声をかけてくれた。


 本当に謎の人だが、その心は非常に優しく僕には響いた。





 そして、夜は更けていくのだった・・・。



~続く~



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