第29話 復讐編 『十魔剣・招集』
僕が『獅子の穴』に着いたころには、あたりはすっかり暗くなっており、門下生もみな、休んでいた。
ナオト兄さんが僕をまた秘密の特訓室に連れて行く。
「とにかく、警察の容疑は晴れた。警察はこれから十魔剣の捜査にかかりきりになるだろう。」
「それはよかったです。」
「うむ。どうやら、警察上層部にはシルフ系の人間が関わっていることは間違いないな。これ以上関わってこられて、セイラの件が表沙汰になるのを恐れているな。」
「セイラはどうしてるんですか?」
「うむ。今、あの最高の頭脳と言われるアイン・シュタインゲート博士が衛星通信で彼女の家庭教師を申し出てきた。」
「って、あのアイン・シュタインゲート博士ですか!?世界知能指数ランキング1位ですよね??」
「そうだ。あの博士は宇宙工学にも秀でている。つまりシルフ系の援助があるんだ。」
「なるほど・・・それはオトナの事情というやつですね。」
「ま、そういうことだが、セイラの身の安全はシルフ系で完全に保証されたとも言える。」
「そうなんですか?」
「ああ。今度、オレの親友の格闘家がボディガードに来るらしい。」
「ナオト兄さんの親友の方ですか?」
「ああ。ムツク・モジ-ザという男なんだが・・・。」
「あまり、聞いたことないですけど・・・。」
「ん?ああ・・・別名のほうがよく名が通っているからな。本名はほとんど誰も知らないんじゃないかな?
ほら?無敵の武闘家『クラウド』って聞いたことないか?」
「え!? 『クラウド』って、それ、世界武力ランキング3位の人じゃないですか? 1位は現法王・ホウオウ・ケンドゥールでほとんど公式の場に姿を現さないし、2位は最強の軍人ジョー・ギリアン・ユウジェロでしょ? ・・・だから、実質1位とも言われているあの『クラウド』ですか!?」
「ああ。やつとは腐れ縁でな。」
「ナオト兄さんの交友関係、ホントやばいっすね。」
「まあ、そういうわけで、しばらくはおとなしくしておいてくれ。おそらく、十魔剣の連中も目立った行動はしてこないと思う。まあ、気をつけるだけは気をつけておいてくれ。」
「わっかりました。」
僕もその後、約2ヶ月、『ライオン王子、ライオン王にオレはなる!』の公演が開始され、実際、ヤツラへの復讐のことを考えている時間さえなかったほど忙しくなった。
また、サーシャも同じだったようで、忙しそうだった。そして、特に何もこの間、起きなかったのであった。
アカリンとはちょくちょく連絡していたが、何も掴めていないとのことだった。
どうやら、アカシックレコーズの中でも違うチームも動いているらしい。
何事も起きず、平穏に時は過ぎていったのだった・・・。
十魔剣の側でも、3人が警察に捕らえられたこともあり、緊急で招集がかけられた。
その場には、ガルウ・ザビアからの指令を携えた、ベリアルも同席していた。
場所は、とある高層ビルの地下のさらに隠された地下であった。
ウンディーネ系以外は立入禁止の厳重に守られた極秘の地下会議室であった。
十魔剣のメンバーは頭とその手足となる十人の凄腕の殺し屋、それとその手下の組織のメンバーが数十人だった。
頭の名は、シシオウ・マコール・カルキング。『青の獅子王』とも呼ばれる殺し屋界でも随一の凄腕である。
また、恐ろしい能力『歴史が問いつめるまぶしいほど青い空の真下』を持っているが、誰もその能力の真髄を知るものはいない。
なぜならば、見たものは全員すでに死んでいるからだ・・・。
十魔剣のメンバーのナンバー1の座は、キャサリン・セタ・ソージーズ。能力名は『hard to say i'm sorry(ハーダセイアムソーリー)』。
彼女のその加速の能力はわかっていてさえ、その動きを捕らえるとこはできないとまで言われている。
シシオウに惚れていて、シシオウの言う事なら何でも聞くというシシオウの信奉者だ。
ナンバー2の座は、ウォーママ・ウースイ(我媽媽・烏水)。能力名は『見つめるだけがたったひとつの愛』。
彼の能力は未知数。仲間にさえその能力は明かさない。彼を暗殺できるものはいないとさえ言われている。
彼はシシオウに心酔しているわけではないが、彼と利害関係が一致するからという理由で仲間になった男だ。利害が合わなければシシオウさえ殺すと明言している。
ナンバー3の座は、サード・フォージ。能力名は『高速の旅・一瞬のスパーク・君のいびつなロケット』。
その名の通り、ロケットミサイルを操る。その大きさはその時の精神力による。
彼は、シシオウに初期から心酔している古株だ。
ナンバー4は、U・Q・アンジェリーナ。能力名は『Mana du vortis Aeria gloris 畏敬(イケイ)をもって見ろ! 天国のような栄光』。
彼女は両の腕からプラズマを放つその能力は、単純かつ恐ろしい能力である。
彼女は信仰心が厚かったが、ある出来事があり信仰心を捨てたという。
ナンバー5は、ホンジョウ・カマナミ。能力名は『暗いさだめに泣いているめんどり』。
彼女は、音の振動で相手の精神、肉体を攻撃することができる。
彼女もシシオウに心酔しているメンバーの一人だ。
ナンバー6はカリャ・ヘンニャ。能力名は『完全な白の脆さと完全な黒の深さ』。
彼は影と光の間に自らの肉体を忍ばせることができる。また影の部分を集め、白の部分を破壊できる。
彼はシシオウには恐怖でしたがっている。彼では絶対に抗えない存在と思い知ったからだという。
ナンバー7は豺狼、ナンバー8は不死鬼、ナンバー9はイワン坊や、そしてナンバー10がサワだった。
イワン坊やは、ちゃっかりあの現場から逃れて、この場にもいた。だが、相変わらず無口だった。
「・・・」
ベリアルが重い口を開く。
「十魔剣のメンバーの皆様に集まってもらったのは他でもない。ガルウ様からの御言葉を伝えるためです。」
シシオウが、うなずく。
「して、ガルウ様はなんと?」
「はい。いったん、あのライオンマスク達からは手を引くとのことです。」
「な・・・なんだと!?ガルウ様は我ら十魔剣の力をお疑いなのか!?」
そういきりたったのは、フォージであった。彼は十魔剣のメンバーの中でも古残のメンバーである。それだけプライドも高い。
一度受けた仕事を途中で放棄することなど今までなかったことなのだ。
「うむ。何か事情があるのか?」
そう問うてきたのは、アンジェリーナだった。
「はい。実は警察が動き出しました。シルフ系です。」
「ほう。それは面白いわね。シルフ系のヤツラが参入するとはねぇ。何かありますね・・・ふふ。」
そう笑いながら答えたのは、ウースイだった。彼はサイコなところを持っている。基本的に面白ければ何でもいいという性格だった。
「まったく、面白くはないですが、例のショッピングセンター計画が頓挫してはいけないので、様子見という感じですね。」
ベリアルはそう答える。
「ま、仕方ありませんね。こちらも、豺狼の爺さんと、不死鬼さん、サワさんも警察に捕えられてしまいましたからね。」
そう冷静な声で答えたのは、キャサリンだった。いつもにこにこして飄々とした女性である。
「あたしは、シシオウ様に従うだけだっしー。」
と、カマナミが声を発する。彼女はシシオウにべた惚れな様子だ。
「また、出番のときに呼んでくれ。」
そう低い声で答えたのは、カリャだった。彼は仕事にしか興味はない様子だ。上の事情にはまったく興味を示さなかった。
「まあ、捕まったヤツラはいずれ、救い出す・・・。が、今しばらくはおとなしくしてやろうではないか。」
シシオウがそう告げた。
ベリアルはそれを受けて、ほっとした様子で、
「これはお聞き入れくださり、ありがたく存じます。ガルウ様にはよしなにお伝えしておきます。」
「ヤツラ・・・ライオンマスクの正体は掴めたのか?」
フォージがベリアルに問う。
「はい。おそらく、シルフ系の手練れですね。警察ともつながっています。ですから、慎重を期せよとのガルウ様のお達しなのです。」
「なるほどねぇ・・・。ま、今度やり合う時はあたしが仕留めてあげるわ。」
そうウースイが言い、ベリアルは少し考え、こう付け加えた。
「ウースイさん・・・。ヤツを侮らないほうが良いですよ? 私もちょっと痛い目を見ましたからね。」
「ふふふ・・・悪魔の貴公子ベリアルさんともあろう人がそこまで言うとは・・・。私もお相手したいですね。ウースイさん、早いもの勝ちですよ?」
そうキャサリンが言い、にこにことしながら、ウースイを見た。
「ふん。まあいいわ。その時は抜け駆けなしですわよ?」
「では、これにてお開きですな。」
フォージがそう締めた途端、全員の姿が消えた・・・。まるで、今まで誰もいなかったかのようにシーンとした空間が、ただ広がっていた。
暗殺者たちは隠形の技は天才的な者たちばかりということらしい。
どちらの側もそれぞれの事情で、そこから2ヶ月の時間は平穏に過ぎていったのだった・・・。
~続く~
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます