第27話 復讐編 『続・襲撃・二番手合い』
「なかなか、粘りおるのぉ。サワのヤツも油断していただけというだけではなかったようじゃの。」
「がるる・・・。」
「・・・」
「サワの姿になるだけではなく、その能力も使うとはの・・・。末恐ろしいの。そのビヨンド能力・・・。」
「がぁ・・・。」
「不死鬼もそう思うか?まずはあの小僧から始末するかの。」
「・・・」
イワン坊やも一言も発しないが、背後を塞いできた。
僕たちはなんとか立ち上がった。
「あの豺狼という老人の能力はよくわからないが、空気を操るのか、急に呼吸ができなくなったんだ。気をつけて。」
「なるほど、それで、ミギトのチャクラが急に乱れたのね。」
そう言ってくる間にも、豺狼が僕に向かって遠吠えをした。
「ぐっぅ・・・。また・・・空気が・・・。」
僕は象の姿をしたインドの神様・ガネーシャをイメージした。
すると、その象の神様の姿になり切ることができた。
そのおかげで、長い鼻の先から息を大きく吸い込み、窒息することから逃れられた。
そして、その巨体で、その真空地帯に流れ込む暴風を耐え、豺狼に僕が襲いかかる。
「むーーん、必殺・・・・・・象パーーーンチ!!」
豺狼にそのまま、振り下ろしからのパンチを叩き込もうとしたが、その前に不死鬼が立ちふさがり、ガードされる!
「くっ・・・」
アカリンがそのスキに不死鬼にやはり、もう一度チャクラショックの拳を叩き込むが、不死鬼はやはり平然と、僕に向かって掴みかかってくる・・・。
「やはり、こいつにショックは効かない!」
アカリンがそう叫ぶ。
「こっちも、ぜんぜん、水流が効かないのら!」
サーシャもイワン坊やに水流を浴びせ続けるが、イワン坊やがサーシャに向かってまた突進してくる。
今度は、水流をうまく使い、サーシャもそれを間一髪かわす・・・。
このままでは、ジリ貧だな・・・。僕はそう考えて、ひとつの作戦を思いつく。
「ちょっと、いったんみんな集まって!」
「どうしたのら?」
「うん、このままでは勝てない。相対する相手を変えよう!」
「ん!?なるほど、ミギト。」
「うん、ごにょごにょ・・・」
「おっけーなのら!」
「了解!」
今度は、サーシャが、豺狼に向かって叫ぶ。
「こっちの番なのら!」
サーシャの水の激流が豺狼に向かって流れ込む。
「ぬぅ・・・。この水の中では、空気を消すことができん!」
豺狼は水の流れで動けなくなってしまっている。
その時、アカリンが後方のイワン坊やに向かって幻覚を見せている。
方向感覚が狂ったイワン坊やが僕にぶつかろうと突進した・・・が、それはアカリンが見せた幻覚で、豺狼の方へ誘導していたのだ。
「これ!イワン坊や!わしがじゃ!うっぷ。ゴボゴボ・・・。」
豺狼はイワン坊やに向かって声をあげようとするが、サーシャの水流で口を塞がれる。
イワン坊やは豺狼に思い切り突進した!
どぉ―――――――ん!
「ぐわーーっ!!」
「・・・」
僕はその間に、その豺狼をじっくり観察していた・・・。
そして、豺狼を心の奥からイメージする・・・。
そう、僕は敵である豺狼自身に成り切ったのだ。
そして、不死鬼の顔めがけて、思い切り遠吠えをした。
「くらえ!『窒息しそうなスリルな瞬間・SOUL』の能力!空気を消してやる!」
豺狼になりきってわかった。この能力は、月明かりの当たっている部分の空気を意図的に消し飛ばすことができる・・・恐ろしい能力だ。
不死鬼は、不死身の肉体を持っていると言っていた・・・が、空気がなければ息を吸えない。
つまり、生命チャクラを錬ることができないということだ。
「ぐぐ・・・がぁ・・・」
不死鬼が苦しそうにしながら、豺狼の姿の僕に向かって拳を振り下ろし、なんとか反撃をしてくる。
そこに、サーシャが水流で操り、本物の豺狼・・・イワン坊やの突進をくらってダメージを負っているため、抵抗する力がなかったようだが、その豺狼を不死鬼に向かって水流でふっとばした。
アカリンはイワン坊やにさらなる幻覚を見せながら、不死鬼にも幻覚を見せ、僕のなりきった豺狼と、本物の豺狼を巧みに入れ替えた。
僕はその瞬間に、アカリンの元へ下がった。
不死鬼は、本物の豺狼に向かって・・・
「よ・・ぐも・・・おれを・・・苦しめたな!!」
そう言って、拳を思い切り振り下ろした。
豺狼が、それに気づき・・・
「やめ・・るのじゃ!!不死・・・」
そう言いかけたときには、不死鬼のものすごい勢いの拳が豺狼にクリーンヒットし、豺狼は横の工事現場のフェンスにぶっ飛ばされ、フェンスを突き破って向こう側で倒れた。
「よし!まずは成功!」
「うん、やったね。」
「やったのら!」
僕たちは豺狼を同士討ちさせ、倒したのだ。そこまでは順調だった。
が、結局、イワン坊や、不死鬼を倒せる方法が見つからない・・・。
今は、アカリンの幻覚でなんとか煙に巻いているが、決定打がないのだ。
僕は今一度、豺狼の能力・遠吠えを不死鬼に浴びせかけた。
「ぐぅ・・・そっちに・・・いたかぁ!!」
が、やはり、不死鬼は息ができなくて苦しむ素振りは見せるが、こちらに向きを変えて向かってこようとする。これでは倒れない。
イワン坊やのほうも、不死鬼の後方でさまよっているが、こちらに向きを変えた。どうやら、幻覚よりチャクラを感じ取ったようだ。
「うう・・・これでは、トドメを刺すまでにはならない!」
「私も、もう幻覚を見せる時間も限界になりそう・・・。」
「私の水流もアイツらには効かないのら・・・。」
くっ・・・。何か・・・いい手はないものか。
僕がそんなこと考えてる間に、不死鬼が目の前に迫っていた。
「ミギト!あぶない!」
アカリンの叫び声が聞こえたその瞬間、両手を握りしめ、その長身からの高い位置から、振り下ろす不死鬼の拳が見えた。
その瞬間、僕は思いついた!
なぜか、ウナギの姿を!
僕は、一瞬で、巨大なウナギの姿になった!しかも・・・強力な電気ショックを与えるデンキウナギだ!
振り下ろされる拳を、ぬるりと交わしながら、逆にその腕を伝って、不死鬼の首に巻き付いた。
「ぐが!」
「これならどうだ!超強力電気ショックだ!」
ズッキャアア―――――アァァ――――――ン!!
「ぐがががががが・・・ぎゃぎゃぎゃ!!」
不死鬼はなんとか耐えようとするが、これは耐えても衝撃はくらうはず。
やはり、効いてるようだ!おそらく、さっきのアカリンのチャクラショックももっと大きなショックを連続で浴びせ続ければ効いたのかも知れない・・・。
残念ながら、あのグローブにそこまでの性能はないようだったから、不死鬼はすぐに回復したのだ。決して効かなかったわけではないのだ。
「もう一撃! くらえ!電気エネルギーショックだっ!!」
「ぐがぁーーーほわ・・・」
不死鬼が、口から、鼻から、そして、眼から、煙を出しながら、その肉体がぐらついた。
ずずずずーーーーーん!!
不死鬼がついに倒れた。
僕は不死鬼の首に巻き付きながら、サーシャとアカリンのほうを向いて・・・第一声にこう言った。
「ぼ・・・僕のパンツを持ってきてくれるかい?」
「また!!パンツ脱いじゃってる!!ミギトってば!」
「だって、仕方ないじゃないか!」
「しょうがないな・・・。」
アカリンは僕の方を見ないようにしながら、僕のパンツとジーパンを僕に差し出してくれた。
「あ、ありがと。」
「い・・・いや、どういたしまして・・・って、なんだかなぁ」
「それにしても、ミギト、すごいのら!」
「いや、急に思いついたんだよ。ショックが効かないんじゃなくて、すごい速さで回復したんじゃないかって。なら、連続でショックを与えれば効くんじゃないかって。」
「ん?あれ?あの太ったやつがいない!」
「あ!ほんとなのら!いつの間に!」
いつの間にか、イワン坊やは姿を消していた。どうやら、逃げたらしい。
すると、そこへ、ナオト兄さんが駆けつけてきた。
「ミギト!いったい何があった!?」
「あ!ナオト兄さん、どうしてここへ!?」
「いや、おまえのチャクラの高ぶりを感じたんだ。それで、急いで駆けつけたってわけだ。」
「そっか、ありがと。いや、実は・・・」
僕はナオト兄さんに、今までの出来事をすべて話した。
「また、警察に根堀り葉掘り聞かれることになるのかな・・・。うーん、どうも困ったな。」
「ミギト!それはオレに任せておけ。」
「え!?兄さん、どうするの?」
「ふっ。すべてオレがやったことにしよう。」
「そんな、いいの?兄さん!」
「いいんですか?えっと・・・ナオトさん。」
「いいのら? ナオト兄ちゃん!」
いや、サーシャ・・・初対面でその態度!? 馴れ馴れしっ!!
「あ、ども、私はミギトくんの友達のアカリン・サンと言います。ライオンマスクのナオト・デイトさんですよね? 私、ファンなんです!!握手してください!」
「おお!いいぞ!(にこり)」
ナオト兄さんは屈託なく笑って、アカリンに握手する。
「あー私もお願いしたいのらー。私はサーシャ、サーシャ・チャ・五條なの~。」
「もちろん、いいぞ!」
サーシャとも快く握手するナオト兄さん・・・。さすが、人間ができてるなぁ、兄さんは・・・。
「ふむ、どうやら、警察に連絡する手間が省けたようだな・・・。」
ナオト兄さんがそう言うと、向こうから、警察官と思しき連中が、二人駆けつけてくるのが見えた。
さっき来た警察官のあの二人とは違うようだった。
「さて、オレが説明するから、お前たちは何も言わなくていいぞ。」
「はい!!!」
僕たち三人は声を合わせて返事をしたのだった。
~続く~
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます