第22話 復讐編 『共闘』
「ほぉ・・・戻ってくるか・・・まぁ、ええ判断やな・・・。」
そう言って、サワは子どもを盾にしたまま、余った左足を宙にかざし、そのまま何かを蹴るような素振りを見せた。
「なにか来るっ!!」
僕とアカリンが同時に叫んだ。
なにか急に重い鉄球でもぶつけられたかのような衝撃が僕の身体に走った。
「ぐぼっ・・・。」
思わず、血を吐いてしまった。
「大丈夫か!?ヒョウリ!!」
「う・・・まぁ、なんとか生きているようだよ・・・。だけど、なにか見えない塊のようなものにぶつかったみたいだった。」
「ふむ、なにか見えないもの・・・か・・・。私も見えなかったよ。つまり、あのサワって女は何か得体のしれない能力を持っているということみたいだね。」
「そのとおりだと思う・・・。」
「ビヨンド能力・・・と呼ばれている特殊能力だ・・・。君も使えるんだろ? ヒョウリ・・・。」
「え?」
唐突にアカリンが言ってきたので思わずびっくりしたが、今はそんなこと気にしている余裕はなかった。
「ああ・・・。ということは、やっぱり、アカリン、君もビヨンド能力者なのか?」
「まあね。最初にあったときにそれとなく伝えたでしょ?」
「うん、たしかに、そうかなとは思っていたよ。」
「じゃ、遠慮なく能力を使わせてもらうよ? ヒョウリもヨロシクだ!」
「わかった!」
「なーにを、こそこそ話ししてんねん?何をたくらんだって、ウチの能力『僕はつい見えもしないものに』の前では、近づくこともできへんよ!」
「へぇ、、、能力名『僕はつい見えもしないものに』って言うんだね・・・。」
と、僕がすかさずツッコミを入れた。
「あ・・・!また、言うてしもうた・・・。むー、やっぱり、おまえら殺さなあかんわ・・・絶対に・・・。」
「あれ?」
何やら、サワが話している間に、あたりが霧の中に包まれたように見えなくなっていた。
そして、はっと気づいたら、アカリンが、人質に取られていた子どもを抱えて、僕の肩をとんとんと叩いていた。
「これは、幻覚の霧だよ。私の能力『波の音に染まる幻』がこのあたり一帯を幻覚に包んだんだよ。」
「それが、君の能力・・・子どもは無事みたいだね・・・。よかっ・・・ぐぁっ!!」
話をしていたら、また何かの衝撃がぶつかってきた・・・。
「なんやねん、この霧・・・いつのまにか人質のガキもおらんやんか。こうなったら、『僕はつい見えないものに』の乱れ打ちや!!」
そう言って、何やら、サッカーボールでも蹴るような素振りを繰り返すサワ。
「そうか・・・あれは見えない何かボールのようなものを蹴り出しているんだ! 見えないから避けようがない・・・。くっ・・・こうなったら・・・」
僕は、格闘ホッケーのゴールキーパーを強くイメージした・・・。
なぜって、ボールを捕ることに関して、プロ中のプロだったからだ。伝説の守護神と呼ばれた名選手をイメージした。
すると、僕の足元からチャクラが流れ込んできた・・・そして、僕は七色に光り、ものすごく頑丈そうなホッケーキーパーに変身した。
するとそこへ、高速で飛んできた何か見えないけど、ボールのような塊が無数に感じられた。
それを、僕は両手で全て、やはり、高速に千手観音のようにキャッチしたり、弾いたりできた。
手が、目が、足が、頭で考えるより早く反応したようだった。
(そう・・・僕は伝説の格闘ホッケーの守護神なんだ!!)
横で見ていたアカリンが、驚きの眼差しを見せつつ・・・
「そ、そんな能力、初めて見た・・・まさか、ゼロ能力者? しかもプラスセブン!?」
「あ、ああ、そんなふうに言われたよ。色見式をやった結果ね。」
「す、すごいね。私はセブンス能力者でプラス2だから・・・そんなにもいろいろなチャクラを練り込めるなんて、とんでもない才能ね・・・。」
「そうなのかい?僕はまだ自分の能力がよくわかってないけど。」
「おい!何をごちゃごちゃと言ってるんだ! お前らの敵はこっちやで!?」
そう言って、また、サワがボールを蹴るしぐさをした・・・が、なんと、その背後に、アカリンが立っていたのだった。
「じゃ、そろそろおねんねしておく?」
アカリンが、サワの後頭部を殴りつけた・・・どうやら、何かショックを与える何かを持っていたようだ。
「これは組織が開発した、チャクラを直接脳に与え、一瞬で麻痺させるグローブ『チャクラ感応グローブ』なのよ。」
そう言って、アカリンは僕の方に、黒い手袋をはめた手を上げてみせた。
「くっ・・・ウチとしたことが・・・お前らふたりとも・・・ビヨンド使い・・・か・・・」
そう言って、崩れ落ちたサワ・・・。
僕とアカリンは顔を見合わせて、どうやら男の子みたいだったが、その男の子をアカリンに任せて、僕はサワを近くにあったロープで縛り付けてから、園内のセキュリティポリスに報告に行った。
すぐに、警察が駆けつけてくれて、サワは逮捕された。特殊電気錠なので、いかに能力者といえど、抜け出ることは難しいと思われた。
また、男の子も無事、母親が迎えに来て一段落だった。男の子のお母さんは僕たちに何度も頭を下げて、帰って行った。
警察の聴取を受け、僕たちが開放されたのはもう夕方過ぎだった。
警察もまた、出頭してもらうかもしれないと述べて、今日のところはいったん開放という感じだった。
ま、十魔剣という名前を出しておいたから、何らかの捜査が進めばいいのだけど・・・。
孤児院の事件のときと違い、犯人が捕まっているのだから。
「で、ヒョウリ・・・。もちろん、ホントウのことを話してくれるんだよね?」
「う・・・うん、アカリンこそ、僕に教えてくれるんだよね?」
「んーー、ま、しょうがないか、もう君も無関係じゃないからね。」
「わかった。じゃあ、どこで、話そうか?」
「うん、とっておきの場所があるので、そこで。」
「わかった。」
~続く~
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