第17話 復讐編 『悪の陰謀』



 僕は巨乳の謎(?)の彼女に、もう一度聞いた。


 「アナタは何者なんですか?」




 「んん、その前に、君はヒョウリ・イズウミ君?それとも、ミギト・イズウミ君?」


 「ノーコメント!そっちが先!」


 「んーーわかったよ。私は、アカリン・サン。フリーのジャーナリストだよ。」


 そう言って、アカリンと名乗った女性・・・ボディラインがはっきりして巨乳の女性が電子名刺を差し出してきた。


 一瞬に、プロフィール情報が僕の頭に浮かぶ、電子名刺は脳にダイレクトに情報をインプットしてくれるツールだった。


 


 氏名:アカリン・サン

 

 性別:フィメイル(女性)


 どこにも属さないフリーのジャーナリスト。住所は、トウキョウエリアのうーん、そこから情報がぼかされているな。

 

 年齢は、あ、これもシークレットか、でもまあ、僕とそんなに離れていないだろう・・・。


 スリーサイズは90・57・88・・・えぇ・・・そこは隠してないんかい!!



 「今、私は孤児院『とらっこハウス』消失事件について調べているんだよ。」


 ドキン!!


 僕の心臓が早く、激しく鼓動を打つようになった。


 


 「そ、そうなんですね・・・それで、僕のところに来たんですね。」


 「そうなんだよ。で、その生き残りの君に当時の状況を聞きたくてね。」


 な、なぁんだ。僕がヒョウリに成り切っているのがバレたわけじゃなくて、ヒョウリかミギトかわからなかったから、そう声をかけてきたのか・・・。


 ま、紛らわしんだよな・・・。


 


 「どんなことを?警察に話したこと以外には特段、何もないんですけどね。」


 「いや、警察の情報は私も聞いたよ。それ以上に気になる点があったからね、直接、話が聞きたいんだ。」


 「ふぅーん、まぁ、わかりました。」




 僕はそう言いつつも、警戒レベルを少し引き上げた。

ヤツラ、和流石建設の手先かもしれないと思ったからだ。


 そう、あの悪魔、赤い貴公子ベリアルが、僕が生きていることは当然知っていて、接近してくることは予想済みだったからだ。


 


 「えーと、僕は、ヒョウリ・イズウミ、俳優です。あの孤児院出身です。そう、あの日はミギトと一緒に・・・あ、ミギトも同じく孤児院出身なんですけど・・・。


 そう、里帰りみたいな感じで、帰ってたんですけど・・・。」


そう言って、あの日の顛末を、赤い貴公子ベリアルについては姿を見ていないということにした警察への報告と同じように話した。


 なぜ、ベリアルについて伏せたかと言うと、それについて話して、相手方に警戒され、余計に刺激するのを避けたというのが一つ。




 もう一つは、ベリアルのことを知っているものが現れたら、そいつは少なくとも、何かしら関わっていると判断がつく、そう考えてのことだった。


 さて、このアカリンという女性はどっちだろう・・・敵か味方か・・・。


 


 「そう・・・だったんだね。大変だったんだね・・・。辛いことを話してくれてありがとう。そしてまずはお悔やみを申し上げておきたい。」


 ん?なんだか、悪い人ではなさそうだな・・・僕の印象はかなりよくなったと思う。



 


 「犯人については見てない・・・のか。そうか・・・。やはり、異常な事件だけど、その和流石建設は何かしら関わっていると考えるのが普通だね。」


 「はい、それは僕もそう思っています。でも、証拠はない・・・んです。」


 「あ、私のことはアカリンと呼び捨てにしてもらって構わないよ。私も、君のこと、ヒョウリって呼んでもいいかな?」


 「それはもちろん、かまいませんよ。」


 「敬語も禁止!そんなかしこまらなくてもいいよ。」


 「そうですか。わかった。アカリン!よろしく。」


 「うん、こちらこそ!」


 


 「その和流石建設、調べたんだけど。事件後、あの孤児院のあった土地の権利書のキーをなぜか手に入れてたんだよね。」


 「そうなんだよ。あの火事で、権利書キーなんて紛失したと思ってたので、ヤツラが手に入れることはできないと思ってたんだけど。」


 「うん、そうだね。権利書キーがなければ権利譲渡はできないし、電子ロックがかかるからね。院長先生には血縁関係の人はいなかったの?」


 「そう・・・キャシー先生は天涯孤独だと言っていた。僕とミギトも姓をもらったけど、養子ってわけでもなかったんだ。実は、シスターテレサは養子に入っていたと思うんですけど。」


 「そっか・・・。一緒に亡くなったんだったね。シスターも。だけど、そうなると、スムーズに権利譲渡がされた経緯が、謎になるな・・・。」


 


 「そう・・・なんだ・・・。僕は法律に詳しくはないから、わからないんだけど。」


 「そうだね。血縁関係の人がいない場合、相続はできないから、その人の遺産は・・・エリア財産になる・・・ね。


 ネオトウキョウエリアの行政内部に誰か黒幕がいる・・・か!?」


 「なるほど。アカリン・・・。もし、なにかわかったら僕にもぜひ教えてほしい!」


 僕はアカリンを信用することにした。なぜなら、もし、ヤツラと関係があるなら、そこを疑問に思うはずもないし、僕に話すことも不必要だからだ。


 




 「うん!もちろんだよ。ヒョウリ、君もなにか思い出したり、誰かひょっとしたら接近してくるかもしれないから、何かあれば私に連絡してほしい。」


 「じゃあ、電子アドに連絡ということでいいかな?」


 「うん、そうだね。私は、和流石建設と権利証キーの移譲の件、あとネオトウキョウエリア役人の動向について調べてみるよ。」


 「アカリンこそ、気をつけてね。ヤツラは手段を選ばない・・・。」


 「大丈夫。私はこう見えて用心深いんだよ?」


 


 そう言ったアカリンの気配が、だんだん消えていく・・・


 どういうことか一瞬わからなかったが、チャクラを消したんだとわかった。


 「え!? アカリン??」


 僕は、わからないふりをした。そう、信用はできると思ったけど、まだ能力に付いては明かすべきじゃないと思ったからだ。


 


 「ふふ・・・、また会おうね・・・」


 そう声だけ残してアカリンの姿は完全に部屋=ボックスの中から消えた・・・。


 最初から、一人で入ったかのように、後には僕一人の姿しかなかった。ドアも完全に閉じていたのに・・・。


 (こ・・・これは、どういう能力だ!?隠形のチャクラか?)


 


 アカリン・サン。謎が多いな・・・だけど、敵ではないな。そこは間違いないと確信できた。


 そして、彼女は何かしら、この事件について情報を掴んでくる・・・そう、それを待ちたい。そう思った。


 ナオト兄さんにも相談してみようか。


 


 

 僕は、さっそく、ナオト兄さんのもとを訪ねた。


 ナオト兄さんは、また、秘密の部屋に連れていき、さらに結界を張った。


 そして、チャクラ念話による会話という最上級の警戒をしながら、話し合った。


 



 「うむ、オレも和流石建設の動向を探っていて、そこは気になっていた。


 さらに、オレが独自でヤツラの本社に忍び込んで調べてきたことがある。」


 「ナオト兄さん、そんな危険なことしたんですか!?」


 「ま、そこは大丈夫だろ。オレは強い!」


 「そ、それはそうですけど・・・。僕にもそれは言っておいてほしい・・・かな。」


 「すまんすまん、今度からはミギトにも伝えてから行動するよ。それは約束しよう。」


 



 その後、ナオト兄さんが話してくれたのは、和流石建設の社長、和流石八千王についてだった。


 ヤツの背後には、政治家がどうやらついているらしい。だが、その名前まではどうも掴めなかった。


 ヤツは多数の政治家に絡んでいるから、特定はできないということだった。


 



 「だが、何人か絞られているとオレは思っている。建設関係の政治家は、


 阿久野・大漢(アクノ・ダイカン)か、イツキ・ブルームか、ローム・スカ・パロウか、そして、マガセ・フォーシーズンか・・・。


 怪しい候補はこの四人だな、この四人全員が、バックにいてもオレはおどろかない・・・。」



 ナオト兄さんが調べてくれた政治家たちは全員、和流石建設のこの孤児院跡地のショッピングセンタービル計画に一枚噛んでいて、利益を享受しているのだった。


 そして、その背後に、巨大資本のゾーン財閥が絡んでいることらしいのも、おそらく間違いなさそうだと思われた。


 和流石建設に資本提供しているのは、ゾーン財閥だったからだ。


 



 「僕たちの敵は、巨大・・・ということですね。しかも、巨悪・・・。」


 「そうだな・・・。しかし、オレは許せない・・・正義の鉄槌を食らわせてやる。」


 「ナオト兄さん、それは僕も同じ気持ちです・・・。全貌が見えないことには、うかつに手は出せないですね。


 今日来たジャーナリストのアカリンがなにか掴んでくれるといいんだけど・・・。彼女にも危険が及ぶかもしれない・・・。なんだか複雑ですね。」


 「ふむ・・・。おそらく、そのアカリンという女も、ビヨンド使いだろうな。」


 「やはり、そう思いますよね、兄さんも。」


 「うむ。」


 



 僕たちは、まだ身動きができない状況だった。



 しかし、確実に、ヤツラは僕たちに手を出してくると思われた。






 ヤツラが先に来るか、僕たちが先にヤツラに迫れるか・・・。



 先を考えると、身震いしてくる僕だった・・・。



 

~続く~



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