第53話
「~~~~♪」
私は現在、家の中に入りきらない小鳥さんを、幹の下で
因みに、大ムカデは、しばらく、私と小鳥を観察していたが、付き合ってられんと、巣の中に戻って行ってしまった。
こっちの神経を動かすと、こうなって、こっちを動かすと、こっちが……。
「……おもしろい」
初めての鳥類型生物による実験。
体の構造。特に、翼の構造が知れたのは大きかった。
「これぐらいなら………」
私は背中に意識を集中させ、蜘蛛の足をまとめ上げると、2枚の翼にしていく。
「………できた」
一応、形だけを真似た私は、鳥をワザと飛ばして、翼の動かし方を学ぶ。
生きている個体の、部位使用時の脳を計測しないと、動かし方を学ぶ事は出来ないのだ。
小鳥の脚には縄をしてあるので、一定距離まで飛ぶと、縄に引かれ、落ちる。
丁度、私の神経糸が届く範囲までの自由だ。
落ちた鳥は驚かせて、また飛ばせる。
時々、自分でも翼を動かしてみて、小鳥で再び動きを確認。
自分用の大きさや形に調節して、再び確認。
これを繰り返していく。
そして、日が暮れる頃には
「と、とべ!ぶへっ!!!」
助走をつけて、ちょっと飛んで、綺麗に滑り込むように、顔から枯葉の中にダイブするぐらいの事は、出来るようになった。
私の滑り込んだ先で、毛繕いを行っていた小鳥さん。
先程まで、私が近づく
流石に、一日も一緒に居れば、慣れ始めたらしかった。
私は落ち葉の上にうつ伏せ転がった状態から、首だけを上げて、小鳥の顔を見上げる。
襲ってこれないと分かると、私達にはない、そのモフモフな羽毛や、クリクリの瞳が可愛らしく見えてきてしまう。
そして、小刻みに動かす頭の動かし方が、これまた可愛くて……。
ダメだ、食う食われるの関係だと分かっていても、支配下に置いて、抵抗できなくさせてしまうと、緊張感が緩んでしまう。
……正直、もう既に、この小鳥を殺す気はなくなっていた。
私は、両手足を曲げて、四つん這いの状態になると、小鳥の羽毛に触れないかと近づいてみる。
「チィー!」
警戒する小鳥から、私はすぐに身を引き、諦める。
糸で屈服させる程、触りたかった訳でも、無かったしね。
それに、時間ならいくらでもあるのだ。
……その内、大ムカデの様に、上に乗せてくれたりして……。
「続きは、また明日」
私は小鳥を置いて、家へと戻る。
その間、小鳥はずっと私を見つめていた。
警戒しているのだろうが、ちょっと可愛く見えてしまう。
結局、家に帰ると、背中の翼は、動きにくかったので、すぐに蜘蛛の脚に戻してしまった。
これもこれで、邪魔なはずなのだが、やはり、この方が落ち着く。
慣れとは恐ろしい物だ。
邪魔な物も、敵だった者も、大切な人がいなくなった状況にだって、段々と、慣れて、自然だと思い込むようになって行く。
大ムカデや小鳥も、敵だと思っていた者が状況次第では、仲間になる。
そう思うと、その内、何も狩れ無くなってしまいそうだった。
それに何より、ルリのいない日常が普通になって、ルリの存在が頭から抜ける瞬間があるのだ。
私の中のルリが消えて行く。ルリの知っている私が消えて行く、
「私、慣れたくないよ……。変わりたくない」
私はルリちゃん人形を抱えると、そのまま、ベッドに飛び込んだ。
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