第52話

 「チチチチチチッ!!!」

 今日は、帰り際に良い獲物が手に入った。

 小鳥さんだ。

 

 私達を食べようと、木の上から奇襲を仕掛けてきたので、私の投網で撃墜させてもらったのである。

 

 いつもは、このままだと、投網が破れてしまう為、逃げられない内に、大ムカデに止めを刺してもらう。

 しかし、今回は、耐久性の上がった糸で、組みなおした投網の為、なんとか、生きたままでも、持ち帰れそうだった。

 

 地面に落ちた小鳥さんの前に、大ムカデの頭の上から、飛び降りる私。


 「チチチチチチッ!!」

 怒って暴れる小鳥さん。

 でも、食べようとしたのはお互い様なのだから、怒らないで欲しい。

 

 「うるさい」

 私は糸を鳥の鼻から通し、神経を攻撃する。

 小鳥は、ショックから、一瞬、体を大きく揺らすが、その後はピクピクと痙攣するだけになった。

 

 「いいこ、いいこ」

 ピクつく小鳥を撫でる私を見て、大ムカデが嫌そうに、身を逸らす。

 ……良いじゃないか、別に。どうせ、食う食われるの関係なのだから。

 私たちが勝った以上、死ぬのが早いか遅いかの問題でしかない。

 

 私は小鳥を絡めとる様にして、投網を回収すると、大ムカデの体に巻き付けた。

 これだけ大きければ、良い実験材料になりそうだった。

 

 「前進」

 私は、大ムカデの頭に乗りなおすと、号令をかける。

 あれから一回り以上大きくなった、大ムカデは、これぐらいの荷物など、へっちゃらなのだ。


 勿論、強さも、一回り以上強化されており、その装甲は、同族の大ムカデの牙を通さず、逆に、こちらの牙は相手を装甲ごと、噛み砕く。

 それだけでも致命傷であるのに、極めつけは、その神経毒。この小鳥ぐらいならば、5秒程、噛みつきながら、毒を流すだけで、絶命させれられる。

 

 体が大きくなった分、維持費と、敵に見つかる確率も上がったが、これだけの強さを手に入れられれば、文句はなかった。

 

 大ムカデは足を進めながらも、可哀想な目で、痙攣する小鳥を見る。

 

 「貴方は、気付く前に、私に倒されて、正解だった」

 頭を撫でてあげると、大ムカデから複雑な感情が流れて来た。

 ……まぁ、少なくても、喜んでいない事は分かる。 

 

 それでも、夜、私が寝ている内なら、いつでも、逃げ出す事ができるのだ。

 満更でもない事は分かっているし、私だって、全く感謝していない訳でもない。

 

 「いいこ、いいこ」

 移動する大ムカデの上で、私はその頭を撫でる。

 大ムカデは、表面上、それを無視し続けるが、揺れるその心までは、私に隠し通す事が出来なかった。

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