自立

第43話

 ……とても、心地の良い夢を見ていた。

 ルリが、私に生きろって、お前の名前は、リミアだって、言って、抱きしめてくれる夢だった。


 ……ずっと見ていたかった。

 何故、目覚めてしまったのだろうか?

 また眠れば、見られるだろうか?

 

 私は今日こそ死んでしまおうと、木の枝を本体に向かって構える。

 ……そんな事をしたって、振り下ろせやしないのに。


 あの夢だって、臆病な私が見せた、ただの幻想だ。

 口では死んでしまいたいなんて言いながら、結局、死ぬ気なんて、更々さらさらないのだ。


 「怖い……。一人は、怖いよ……」

 私は、布団の上で抱きかかえていた、ルリだったものを、ギュッと抱きしめる。

 何とか継ぎいだ死体は、苦しそうに、仰け反った。

 

 ……………。

 こうやって、ぼーっとしていれば、私も、記憶の中にある、前世のルリの死に様のように、ゆっくりと、生きたまま、腐り落ちるように、死んで行けるのだろうか?

 

 「…………あ」

 その瞬間。私は思いついた。

 私にはルリの記憶がある。

 生きていた時の、ルリの感覚もある。


 私の記憶の中に、生きる、ルリ。

 この記憶を再現する事で、ルリを復活させられるのではないかと。

 

 そうだ!最初からそうすれば良かったんだ!

 あの夢も、きっと、死んで、自分だけ楽になろうとするなと言う、天のおぼしだったのかもしれない。

 

 幸い、私は糸を使って、体ぐらいなら、簡単に作り出せる。

 なんせ、今の私の体を模倣もほうすれば、良いだけなのだから。


 後は、脳。コアに当たる部分をどうするかだけど……。


 ……いや、考えるより、まずはできる事からしていこう。

 考えるだけで、行動しなかった前世のルリは、それで死んで行ったのだから。

 

 罪を背負った私には、何もせずに死ぬなんて、許されない。このまま楽に死ぬなんて、許されないのだ。


 「まっててね。ルリ………」

 私は、継ぎ接ぎのルリをゆっくりとベッドに寝かせると、早速、新しい体の作成を開始する。

 

 ……もし、ルリが生き返ったら……。

 謝りたい。

 感謝したい。

 恩返ししたい。

 ……名前で呼んで欲しい……。


 言いたい事が沢山ある。

 やって欲しい事が、やってあげたい事が山ほどある。

 

 それは、結局、全て、私の自己満足でしか無いのかも知れないけど……。


 ルリのそばに居られる。

 そう思うだけで、私の腕が止まる事はなかった。

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