第37話
《ニャンニャン》
朝起きてみれば、彼女が俺の目の前で、猫耳カチューシャを付けて、何かをしていた。相変わらず無表情で、何を考えているかは分からないが……。
…………。
……あぁ。夢か。
寝よ。
《モエタ?》
やめろ。夢の住人が話しかけてくるな。
《カワイイのジョウイケイ。モエルと、キオクにアル》
やめろ。俺の記憶を
……待てよ?今冷静になって考えてみれば、記憶を完全コピーしているという事は、俺の
《バレテル。…ニャン》
無表情で、招き猫のように腕を動かす彼女。
(最悪だぁぁぁぁ!!!あと、その取って付けたような、ニャン。やめろ!
俺の叫びを無視し、
《メ、サメタ?》
彼女は、しゃがむ事で合わせた視線に、俺を映す。
感情の見えない瞳には、朝から、げっそりとした俺が映っていた。
(……あぁ、バッチリ覚めたよ。正直、今でも、夢であって欲しいけどな)
どうやら、彼女の病気は進行してしまったらしい。
《マッキ、かも、シれない》
胸に手を当て、考え始める彼女。
冗談とはいえ、それを自分で言い出したら、終わりだ。
《ジョウダン。チガウ》
少し、真剣な表情をし、
真面目に取り合った方が負けだ。
俺は(ハイハイ)と、適当に流し、伸びをする。
と、その瞬間に違和感。
…また、大きくなってるな。お腹……。
俺は、お腹を擦ると、ベッドから起き上がった。
小腹が減っていた俺は、天井から吊るして、干してあった、蜘蛛の脚を一本、頂く。
彼女の糸は、運搬にも、保管にも使えて、本当に便利だ。
それに比べて、俺は……。正直、いなくても、良いんじゃないかと思うほどの、無能加減。こう言うのを、何と言うんだっけか……。
《ヒモ》
(そうそう!それそれ!俺は、お前の
元気に言っては見たが、雰囲気だけでは、自分を騙し切れず、ダメージを食らう。
これでは、どちらが寄生虫か分からない……。
《ヤメテ》
いつも、
俺は、彼女の発する緊張感に呑まれ、思わず、硬直する。
《キセイチュウのハナシ……。シないで……》
弱々しく、小さな声で、そう続ける彼女。
(あ、あぁ……。悪い……)
正直何が悪かったのかは、分からなかったが、反射的に謝ってしまう。
そんな罪悪感があった。
(そ、そうだ!今日は、昨日仕掛けた試作品の罠。見に行くんだよな!)
俺は空気を換えようと、話題を持ち出す。
(俺!昨日のあれで、久しぶりに穴掘ったからな!今回は穴の下に餌を置いて、獲物を落とすだけの罠だから、これが上手くいけば、お前の道具に頼らなくても、簡単に狩りができるようになるぞ!!)
無駄に、元気に喋る俺。
反応がない、彼女の方をチラリと見る。
《……ソウネ》
しかし、彼女の声は沈んだまま。
俺の中の良く分からない、罪悪感が育っていく。
彼女は俺の心がわかるのに、俺は彼女の心が分からないなんて……。良くも、悪くも、不公平だ。
(………はぁ……)
俺は思わず溜息を吐く。
少なくとも、寄生虫と言うワードだけには気を付けよう。
その教訓を、罪悪感と共に、俺は、頭に焼き付けた。
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