第2話

 (ッ~~~!ハァ~~~~!蜜うめぇ!)

 自分に言い訳をさせて欲しい。あれから、丸一日は耐えた。

 決して、即落ち1コマなどではないのだ。


 え?一日も、一コマも変わらないって?

 ……聞いてくれ、これには深い、深い訳があるんだ……。

 心して聞いてくれ……。


 …………この体、めっちゃ、お腹が減るんです……。


 めっちゃ減るんですよ!お腹!それはもう、お腹と背中がくっつかんばかりに減るんです!

 そんな真横で、美味しそうな匂いが、四六時中……。耐えられる訳がない!


 それが、その食べ物に含まれる、副作用だとしたら、どうするって?


 そんな事言ったって、しょうがないじゃないか!

 もう、食べるか、死ぬかしかないんだよ?!どうせ死ぬなら、お腹いっぱい食べて、死にたいじゃないか!


 俺は、駄々をこねるように、体をうねらせ、辺りを転がる。


 (……はぁ。無意味だ……)

 急に我に返った俺は、体を、だらんと、伸ばす。


 ここ数週間。誰とも話していない。

 まぁ、数週間と言っても、常に真っ暗、食事も時間に関係なく運ばれてくるので、時間感覚など、あった物ではないのだが……。


 (あぁぁぁ!気が狂いそうだ!)

 真っ暗な世界で、くっちゃね生活。湿度も気温も適度で、体も綺麗にしてくれる。最初は、天国だと思っていたのだが……。

 最近に至っては、先程のような一人芝居も増えて来た。

 ……もう既に、気が狂い始めているのかもしれない。


 

 (はぁ……。何かないかな……)

 体をモニョモニョと動かしてはみる物の、何も起きない。する事がない。

 周りの振動から感じるに、辺りにも、俺と同じ存在が、転がされているようだが、意思疎通は出来なかった。


 (……それにしても、振動に敏感になったな……)

 ちょっとした振動でも感じ取る事が出来、餌の時の振動と、掃除のときの振動、移動させられるときの振動など、事細かに変化を感じる事ができるようになっていた。


 得られる情報が限られると、その情報を得る為、感覚が鋭敏になる。と、何処かで聞いた事がある。これは、そう言ったたぐいの物なのだろうか。


 俺は、そんな無駄な事を延々と考えながら、自らの発する音で、辺りを感覚的に、見る事ができるようにならないかと、練習したりもした。

 

 …まぁ、結果から言えば、多少、初めよりも、振動の感覚を敏感にとらえる事は出来るようになった。

 しかし、精々、相手が振動を発している時、どこで、どの程度の振動が発されているか、分かる程度。

 動いていない相手や、障害物は感じる事ができない上に、範囲もそれほど広くない。自身が音を出して、ソナーのように……。とは、行かなかった。


 ……それにしても、太って来た。

 食べ過ぎのせいか、最近、お腹がむかむかする。

 

 喉に何かが突っかかったような気がした俺は、無理やり、それを吐き出そうと、喉と首を動かす。

 

 ……何だろう?何か、口からベトベトしたものが……。

 それに触れると、何故か安心する。


 俺は、必死に、そのベトベトした物を、体中に巻き付けた。

 

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