願いの為に剣を振れ!

ムネミツ

 願いの為に剣を振れ!

 ついにここまで来れた、あいつを倒せば僕の願いは叶う!

 円形の闘技場で相対するは、悪魔の如き禍々しさを放つ牛の角

が付いた兜に漆黒の鎧を纏った騎士。


 それに立ち向かう僕の姿も白骨を模した兜と全身鎧、大盾の紋章も髑髏と大概だ。

 けど、この家宝の聖骸の鎧で願いを掴む。

 

 審判が開始の合図を叫び、試合が始まる。

 

 先に動いたのは黒騎士! 自分と同じ身の丈はあるハルバードを上段に構えて

 突進してくる!

 「武器の大きさならこっちも負けてない!」

 僕も腰に差した剣を抜き、大盾に差して大盾を大剣に変形させる。

 黒騎士がハルバードを振り下ろすのに合わせて、僕は大剣で切り上げた!

 

 刃がぶつかり合い、爆発的な衝撃が起こり僕と黒騎士は互いに弾かれ後ずさった。

 「どこの家か存じませんが、そちらも魔法の武具か!」

 騎士は鎧や盾に身の証である紋章が刻まれている物、それがないという事は

家を出た者かあるいはか?

 黒騎士は答えない、どちらにせよ高性能の魔法の武具にあの腕前は只者ではない。


 マルコがそんなことを想う中、黒騎士の心中はというと穏やかではなかった。

 優勝してマルコと結婚するために、冒険者様に依頼をしてこの鎧を手に入れましたのにそのマルコが決勝の相手なんて!

 この黒騎士、その中身は白骨の騎士となって相対するマルコの想い人である姫本人であった。

 強大な魔神の力を持つ鎧ならば、か弱い女の身である自分が武道大会で優勝する事も可能なはずと財力と権力を使って突拍子もない発想を実行した姫。

 姫は自分ではか弱いと言いつつも可憐な容姿とは裏腹に国で五指に並ぶ強大な魔力の持ち主で、魔神の鎧を支配下に置く事に成功し武道大会を勝ち上がってきた。

 彼女の誤算は、魔神の鎧が願いを叶えるか破壊されるまで脱げず声も出せないことと想い人であるマルコが決勝まで勝ち上がって来たことだった。


 想い人の事は信じていた、だが自分が想い人と戦うことになるとは想像できない残念な頭の脳筋な姫こと黒騎士であった。


 互いが相手を想いつつも、片方が正体を知らぬまま刃を交える二人。

 「お前に勝って、僕は姫と結婚するんだ!」

 全身から光のオーラを放出し、この一撃に全てを賭けようと大剣を大上段に構える白骨の騎士マルコ。

 

 己の正体、相手を愛する己の心を黒い鎧に包み黒騎士と化した姫もハルバードから黒い魔力を放出させつつ得物を脇に構えて突進の体勢に入る。


 お互いに必殺の一撃を繰り出すべく突進し、刃を振るう二人!

 再び双方の刃がぶつかり合い、白と黒のエネルギーが爆発して闘技場を包み込んだ。

 膨大なエネルギーの爆発は、対決している二人を残して闘技場を跡形もなく消し去って行った。

 力を出し尽くして倒れた二人、立ち上がったのは黒騎士こと姫であった。

 「マルコ、大丈夫ですの?」

 兜を開き素顔を露わにしてマルコに駆け寄り助け起こす姫。

 「……僕は勝つって、姫っ?」

 マルコの心を衝撃が襲った、自分が戦っていた相手が自分の想い人の姫だと知ったからだ。

 「良かった、これでマルコは私のお婿さんですわ♪」

 瓦礫の山と化した周囲を見回して姫はマルコに微笑む。

 一方のマルコは、周囲の惨状に愕然としていた。

 

 この後、悪魔の黒騎士と白骨の騎士の傭兵騎士夫婦の伝説が幕を開ける事となるのはまた別のお話。

 


 

 

 


 




 

 

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