第2話

「国王!グレンだ!入るぞ〜」


 国王相手にその口調で大丈夫かよ団長!

 と、最初は思ったが国王と団長は昔からの友人らしく堅苦しいのがお互いむず痒いらしい。

 何故そんな事情を知っているかって?ははは、俺が何度こうして国王室に呼ばれたと思っている?

 全く、自慢にもならん。


「王宮騎士、ユーゼン。入ります」


 っておい。護衛の騎士くらい付けろよ。側近のヴァル爺しか居ないじゃん。


「2人ともよく来た。昼間はすまなかったな、グレン」


「良いって。もう気にしてない。訓練で十分発散させてもらったし」


「おかげさまでボロボロです」


「わ、悪かったって」


「ははは、相変わらず仲が良いな。さて、今日来てもらったのは例の経歴書について意見を聞きたいと思ってな」


「では、私から。実は、隣国の王子とは顔見知りなのです。冒険者として過ごしていた頃何度か共に依頼を受けまして」


「ユーゼン。いい加減その口調止めろ!お前がそんなだとむず痒くてしょうがねぇ」


「そうだな。お主にその口調は似合わん。いや、お主を知っている私とグレンからすると違和感しか感じない」


「・・・一応、仕事だと割り切っての口調だったんですけど?」


 全く、トップがそれじゃダメだろ。線引きはしっかりしないと。


「気にするな。どうせ俺と国王はこんな感じだしな!ははは!」


「では、お言葉に甘えて・・・。隣国の王子のユリシスは冒険者として実戦経験を積んでいた時期があって、その時に半ば指導役として彼の側近の方と3人でパーティを組んでいたんです。だからその経歴書には違和感があって・・・」


 そこからユリシスの性格について話した。

 ユリシスが隣国の王子だと知ったのはユリシスが故郷に帰ると言っていた2日前のことなのでその負い目からか、生涯対等な友人だと宣言されている。

 それと、女性相手に節操がない。20個ほど俺に借りがあることなども話した。


「・・・というわけで、本当の目的はアリシア王女との婚約かと」


「させぬ!私のアリシアをそんな輩になんぞくれてやらんわ!」


「落ち着け国王。まだユーゼンの予想だ。そうと決まった訳じゃない。そう、そうだ。違う可能性の方が高いだろ?そう信じようぜ。な?嬢ちゃんは渡さなくて済むぜ?」


「そ、そうだな。あぁ、そうとも。信じようじゃないか、隣国の王子を」


「現実逃避しないでください。そんなんじゃ、守れるものも守れませんよ?それに、予想じゃなくてほとんど確信持って言ってます」


 ・・・あれ?2人とも固まったまま動かなくなったんですが?

 今度は国王が唸り始めた。

 だ、団長!?地面に膝をついた!?泣いてない?


「よし、決めた。視察という名目でアリシアをカラルの町に行かせよう」


「「よりによってあの町か・・・」」


 物の見事に団長と被った。

 カラルの町には思い入れがある分気まずくて立ち寄りたくない。それに、あの町はちょっと、いやかなり危ないからあの人を行かせたくない。

 俺の場合はそんな理由でさっきのセリフを言った。

 団長は、怖いのだろう。あの町の冒険者ギルドのギルドマスター兼町長が。

 冒険者をしていた頃、厳しくしごかれたらしい。

 仲は良いみたいだが。


「あの町の歓迎は、ちょっと過激ですよ?」


「知っておる。だからこそカラルの町なのだ」


「言いたいことは分かった。で、護衛は誰が行くんだ?」


「お主を行かせたい所だが・・・」


「俺は隣国の騎士さまと立会いの予定があるぞ」


「・・・申し訳ないが、引き続き騎士団と魔導師団の副団長部隊に行って貰うしか無さそうだの」


「まあ、そうなるな」


 今話に出た副団長部隊は、話の中心にいるアリシア王女の視察に同行している。

 要するに視察に出ているアリシア王女とその護衛は、帰還後わずかな休息を取りまた視察に向かってもらう。という話をしているわけだ。


「王女の帰還はいつですか?」


「明日だ」


「では明日帰還して2日の休息でまた視察に出すと?騎士や魔導士は再編成すれば良いですが、王女が辛いのでは?」


 ここで再び唸り始めてしまった。

 おいおい、過保護が過ぎるだろ。もう少し寛容になってあげなよ。

 しょうがないか。


「宜しければ、俺が何とかしますよ?隣国の王子は節操はありませんが義理堅い奴なので、俺に対する大量の借りを使えば何とかなるかと」


「・・・・・よし、ではそれで行こう。隣国の王子が来国した際はお主をアリシアの護衛として側に置く。良いな?」


「了解です」


 詳細は明日また書面にしてこちらに届くようにしてくれるらしい。

 今回呼び出された理由がある程度話し終えたので少しだけ久しぶりの雑談をしばらくしてから団長とともに退室した。

 ここからは再び騎士モードだ。堅苦しい口調にしないといけない。


「お疲れさん。いつも悪いな」


「いえ、これが私の仕事ですので」


「明日は嬢ちゃんが帰ってくるから、頑張れよ」


「は。いつも通り覚悟しておきます」


「それでいい。ゆっくり休め。じゃあな」


「お疲れ様でした!団長も良くお休みください」


 はぁ、堅苦しいのは疲れるな。さあ、帰ろう。

 明日も訓練があったな。おまけにアリシア王女が帰ってくるのか。団長の忠告通りゆっくり休もう。明日は大変だ。

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